教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/11 TBS系 世界遺産「天国への階段!絶景の棚田」

フィリピン内陸の棚田

 フィリピンルソン島の内陸のコルディレラ山脈に山の上まで続く棚田の風景が広がっている。その棚田は山頂付近では傾斜角がなんと70度にも及ぶという。この地では山岳民族が昔から米を作ってきた。


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 マニラから車で9時間かかる山岳地帯にその棚田はある。山という山が棚田に覆われており、あぜ道の総延長は地球半周分の2万キロに達するという。この地には古くから少数民族イフガオが暮らしているが、彼らは人力で石を積み上げてこの棚田を作ったという。彼らは海岸地帯から移動してこの地に根を下ろしたという。この棚田を支えているのは熱帯雨林の降雨で、用水路で水を運んでこの水が上の田んぼから下の田んぼへと流れていっている。

コルディレラの棚田

 

 

棚田と暮らす山岳民族

 この急峻な山脈はプレート移動によって生成した。彼らがここに棚田を作ったのは400年ほど前と見られているが、これほどの急斜面に棚田を作ったのはスペインの支配から逃れるために山岳地帯に移り住んだためだという。田んぼの中の集落、バンガアン村には27家族125人が暮らしている。家は湿気を防ぐための高床式となっている。彼らは稲の精霊を祀っている。標高が高いので冬には気温が低いので収穫は年に一度。田植えが終わると祖先の精霊に報告するための儀礼が行われる。祭祀の家では精霊に生贄(ニワトリ)が捧げられる。生贄は炊き上げたコメと共に村人に振る舞われる。

 しかしこの棚田に危機が訪れたことがある。温暖化の影響で1990年代から大雨による石垣の崩落が頻発し、2001年には危機遺産に指定された。機械が持ち込めない狭い棚田での修復作業は大変だった。また原因は天災だけでなく、伐採で森がなくなったことにもあった。さらに焼き畑なども影響していた。そこで外部の支援なども受けて植林が進み、2012年には危機遺産が解除された。現地では伝統の木彫りの技術とともに、森を守る精神も伝授されていっている。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・フィリピン内陸のコルディレラ山脈には広大な棚田の風景が広がる。
・この棚田を作ったのは山岳民族のイフガオであり、400年前にスペインの支配を逃れてこの地に移ってきた彼らは、生きていくために人力で石垣を積み上げてこの棚田を築いた。
・しかしこの棚田も温暖化による多雨、木の伐採で森がなくなったことによる山の保水力の低下などから崩落が続いて、2001年には危機遺産に指定された。
・だが外部の支援もうけながら石垣の修復及び植林が進み、2012年に危機遺産が解除された。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・棚田って日本にもありますが、機械が使えないのでとにかく維持に人力が必要なんですよね。だから日本ではそれでなくても農業を冷遇している上に地方で過疎化が進んでいるので、放置された棚田は無数にあります。今でも残っているのは、何らかの形で観光地化されたところだけ。

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