教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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7/2 TBS系 健康カプセル!ゲンキの時間「夏に発症する人が急増!?女性も注意!"痛風"対策」

夏に増える痛風

 今回のテーマは「痛風」。発症すると風が吹いただけでも痛いと言われる病気である。かつては貴族などに多かったことから贅沢病などとも言われたという。男性の病気のイメージがあるようだが、実際には患者は男性の方が多いが女性も発症しており要注意である。しかも20年前に比すると患者は2倍以上になっているとか。予備軍は1000万人いるという。その上に夏は痛風を発症する人が増えるとか。今回は痛風予防のための注意ポイントなどを紹介する。

突然の激痛に七転八倒するのが痛風

 まずは体験談から。5年前に痛風を発症したという60才の男性。当時は尿酸値が8mgと正常値の7を上回っていた。右足の親指に剣山で刺されているような痛みが出たという。親指が地面に触れないように階段を降りるのも一苦労だったとか。6年前に痛風を発症した82才の男性は当時の尿酸値は8.5。彼はテニスをやっている時にアキレス腱を切ったのかと思ったら、足首がドンドンと痛くなり、翌朝には四つん這いでしか動けなくなったという。

 

 

プリン体から生成した尿酸が原因

 痛風の原因となるのは尿酸であるが、これはプリン体が活動して最終的に生成した老廃物だという。尿酸は生成すると尿などで体外に排出されるが、尿酸の生成が増加しすぎると血液中に尿酸が増加してしまうのだという。正常値は7.0以下となっているが、これを超えると痛風が発症しやすくなる。実際に尿酸の結晶を血液と同じ条件の水溶液に6.0の濃度で溶かすと15分で溶けるが、8.0の濃度で加えると溶け残ってしまうという。この状態だと尿酸の結晶が生成するが、この結晶が針状のいかにも痛そうなものである。

尿酸の結晶 いにかも痛そうだが、これが刺さるわけではない
出典:かい内科クリニックHP

 なお痛風はこの尿酸の結晶が関節などに溜まり、それの一部が剥がれ落ちた時に白血球の免疫反応で炎症が起こって激痛につながるのだという。なお番組ではわざわざ言っていないが、このあまりにもインパクトのある結晶形から、この結晶が体組織に刺さって痛みが発生すると勘違いしている者もいるし、昔の番組などでは実際にそう説明しているものを私も見たことはある。しかし事実は「免疫反応が起こることによる炎症で痛みが発生」である。

 さらに尿酸値が高い高尿酸血症は血管壁が炎症を起こして、高血圧、動脈硬化、糖尿病などにつながる危険もあると言う。なお尿酸値を下げると血圧が下がることもあるという。また尿酸が腎臓に蓄積して腎障害や腎不全などの合併症を起こすこともあるとのこと。

 

 

尿酸値増加の落とし穴

 また夏に尿酸値が上がりやすくなるのはアルコール摂取の増加ビールのプリン体やアルコール自身にも尿酸値を上げる効果があるので要注意だという。また脱水になることも尿酸値が上がる原因になるのでこまめな水分補給が重要である。1時間にコップ1杯が目安だという。

 また意外な落とし穴として、スポーツドリンクを運動をしていない時に飲み続けると、果糖の代謝副産物として尿酸が出来るので要注意だという。さらに身体のための筋トレも尿酸値を上げてしまう効果があるという。筋トレのような無酸素運動はエネルギー源のATPの分解の際に尿酸が生成してしまうのだという。だから尿酸値が高い人はラジオ体操やウォーキングなどの筋肉の負荷が軽い運動を勧めるとのこと。

筋トレのやり過ぎもご用心

 痛風は関節などへの衝撃などが切っ掛けになって突然に発症するという。発症部位としては足の親指の付け根というのが一番多く、足に6割以上起きるという。ただこれ以外にひざや手、肘などに発症することもあるという。なお女性ホルモンが尿酸の排出を促す作用があるので女性に少ないが、女性ホルモンの減少に伴って発症が増えるという。

 

 

痛風の予防法

 予防にはプリン体の多い食品を避けることが一番ということで、番組ではアジの干物、イクラ、鶏レバー、豚バラ、マグロでプリン体の多い順に並べるというクイズ形式の紹介を行っている。

 この中でプリン体含有量が5位なのはイクラ。一般的にプリン体が多いイメージがあるが、プリン体は卵1粒当たりで量が決まっているので、イクラのような粒の大きいものはプリン体は意外と少ないのだという。明太子や数の子のようなものの方が圧倒的に含有量が多いという。4位は豚ばらで豚肉自体はプリン体はやや多いのだが、脂の部分はブリン体が少ないのだという。なお豚肉のお勧めの食べ方は豚しゃぶで、プリン体は水溶性なので1/3になるという。3位がマグロで赤身は筋肉細胞の塊なので意外と多いという(と言うことは大トロなどは比較的少ないのか?)。で、一番多いのは細胞が密集している鶏レバーで、アジの干物が2位だという。これを参考に食材を選ばれたし。

イクラは意外と少なめと言っても食べ過ぎにはご用心

 なお尿酸値コントロールのために飲んだ方が良いのが牛乳だという。カゼインが尿酸の排出を促す効果があるので、朝にコップ一杯の牛乳がお勧めと言うが、これをすると私は確実に腹を壊す。

 なお尿酸の結晶が完全に消えるには5年かかるとされているので、途中で治療をやめるとすぐに再発する危険があるとのこと。

 

 

 以上、痛風について。ちなみに健康状態がボロボロで、成人病のデパート化しつつある私ですが、目下のところ尿酸値は常に正常範囲内ですので、痛風の可能性がなさそうです。時々足の指に痛みが出ることがあるのですが、どうやらそれは痛風でなくて別の神経系の問題のようです。

 ちなみに今回の番組ではとにかくプリン体を避けろという話でしたが、気をつけないといけないのは過剰に意識しすぎると栄養バランスが崩れることがあること。要は常に健康の基本はバランスの取れた食生活と適度な運動習慣を含んで睡眠不足を避けた健康的な生活リズムということになります。もっともこれが簡単でいてなかなか実行が難しいのですが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・夏に患者が増加する病気が痛風。20年前から患者が倍増しており、予備軍は1000万人いるという。また男性の病気のイメージがあるが女性も発症するので注意。
・痛風の原因はプリン体の分解によって生成する尿酸。尿酸が血液中に増加しすぎると結晶として析出、それが剥がれた時などに免疫細胞による炎症が発生して激痛を起こす。
・予防にはプリン体を大量に含む食品を避けること。動物の細胞などに含まれているので細胞の数が多い食品ほど危険という。だから粒の大きいイクラよりも、明太子や数の子の方がプリン体は多い。
・尿酸値コントロールにお勧めなのは牛乳だという。カゼインに尿酸の排出を促す効果があるという。尿酸値が高くなりがちな朝に摂ることを勧めている。
・尿酸の結晶が完全に消えるには5年ぐらいかかると言われており、痛風の治療を途中でやめるとすぐに再発する危険が高い。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回は石丸幹二氏が体調不良でお休み(コロナか?)とのことで、坂下千里子氏が番組進行を行ったのだが、彼女の喋りはいささかキャピキャピしているのでややうるさい番組となっていた。やっぱり石丸氏の落ち着いた声質はこういう番組の進行に適していると再確認した次第。

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