教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/2 TBS系 世界遺産「ロマンティック街道最古!水の街」

ロマンティック街道最古の水の街

 ドイツのアウクスブルクはロマンティック街道最古の街である。この町は水路が張り巡らされた水の街であり、これらの水のシステムが世界遺産となっている。


www.youtube.com

 アウクスブルクは約2000年前にローマ軍が築き、中世には商工業が発達して黄金のアウクスブルクと言われた。それを支えたのが水路である。水路の水はドナウ川支流のレヒ川から引いている。670年前にここに取水用に最初にダムが築かれた。運河はかつては木材などを満載した船が行き交っていたが、今はカヌーコースになっている。街に入った水路は水遊び出来る箇所もあり、天然の流れるプールとなっている。

 中世には街に水路網が築かれており、今でも建物や道路の下を潜りながら水路は残っている。また水路に水車を作ってそれを動力にして機械を動かしたりしていた。水路は物流網であり、動力源でもあったのである。

 

 

水路とは別に引かれた水道システム

 メインストリートには豪商フッガー家の邸宅が残っている。またフッガー家は貧しい人のための集合住宅も建設しており、今もそれは使われている。家賃は年間130円ほどとか。施設の中心には噴水があるが、実はこの水は運河の水ではない。アウクスブルクにはもう一つの水のシステムがあるのである。

 町の中の見事な噴水から噴き出しているのは飲料水である。この水は郊外の森の奥の湧き水を水路で引っ張ってきたものである。600年前に飲み水としてこの綺麗な水を運んだのである。水路は小川の底を立体交差(水が混ざらないようにしてある)したりしながら流れ続け、5キロの距離を経て街に到着する。街の手前では世界遺産の水道橋を通り、市街外れの給水塔に水車で動かされるポンプで上げられ、これが街に供給される。この世界最古の給水システムも世界遺産だという。10メートルの高さからの勢いで街の中心部に水を送水した。当時の水道管は木製で、メインストリートの地下を通して各建物に供給されており、富裕層の邸宅には水道管が引き込まれていた。屋敷に水道を引くには一般市民の年収の4倍の契約金が必要だったという。贅沢な水はアウクスブルクの財力の象徴でもあった。

 

 

近代になって変化を続ける街

 アウクスブルクに電力の時代がやって来ると、70もの水力発電所が建設される。1865年に建設された発電所がまだ現役である。これらの建物は瀟洒な別荘のようである。1903年に建設されたヴォルフツァーンアウ水力発電所は、ここを30年前に買い取ったオーナーが家族で操業している。アウクスブルクでは水は白い石炭と呼ばれているという。

ヴォルフツァーンアウ水力発電所

 19世紀末には新たなシステムとして給水所が建設された。運河の水を動力にして地下水を汲み上げて水圧を与えて供給している。これが森の水道に取って代わった。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ドイツのロマンティック街道最古の街、アウクスブルクは水の街でもある。
・中世、この街にはレヒ川から水か引かれ、水路が街に張り巡らされた。この水路の水運と水車の動力で商工業が栄え、黄金のアウクスブルクと言われるぐらい繁栄した。
・街の噴水には飲料水が引かれているが、これは5キロ先の水源から水道で運んできた水である。
・水路で運んだ飲料水は町外れの高さ10メートルの給水塔に水力ポンプで汲み上げられ、そこから町の中に木の水道管で供給されている。
・電気の時代になると水路の各地に70もの水力発電所が建設され、それらは今でも稼働している。
・19世紀末には水力ポンプで地下水を汲み上げて供給するシステムが建設され、かつての水道に取って代わった。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・何か先端技術を投入した街という印象で、その辺りがやはり繁栄した都市だったんだと言うことを感じさせる。城壁の類いがないようだが、防御については水路頼みだろうか?

次回の世界遺産

tv.ksagi.work

前回の世界遺産

tv.ksagi.work