教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/9 TBS系 世界遺産「活火山と巨大氷河!アイスランド」

氷と火の世界

 北の火山島アイスランドのヴァトナヨークトル国立公園には、巨大な氷河と活火山が織りなす氷と炎の壮大な光景が存在する。


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 アイスランドの首都レイキャビクは、全人口の1/3の12万人が暮らしている。国土の中で人が居住しているのはごく一部。この首都から東へ300キロ移動すると氷河が見えてくる。アイスランドは暖流の影響で緯度の割には意外と温かいのだが、ここにヨーロッパ最大の氷河が広がっている。高いところで標高2000メートル以上、高地では10メートル以上の雪が積もる。これらが圧力で氷になって氷河となる。厚さ最大900メートルで東京・埼玉・神奈川が収まるだけの面積があり、その体積はヨーロッパ最大級である。

 

 

氷河と火山の出会い

 そんな中に地熱で氷が溶けた湖がある。氷河の下には実はいくつもの火山が存在しているのである。中でもグリムスヴォトン火山は活動が活発で頻繁に噴火している。噴火で出来たカルデラが氷から頭を出しており、直径は12キロもある。その縁からは火山ガスが噴き出している。氷河の上には噴火による火山灰が積もっている。そして火山灰の熱が氷を溶かして蒸気が立ち上っている。氷と火が生み出した独得の景観である。

 火山島のアイスランドでは数年に1度は噴火が起こっており、昨年は島の西部で20日間にわたって溶岩が噴き出した。アイスランドにはもう一つの世界遺産シングヴェトリルがあるが、ここは大地が引き裂かれた巨大な亀裂があり、ここがプレートの境目となっている。これこそがアイスランドの噴火の力の源である。ユーラシアプレートと北米プレートが引き離されることでマグマが噴出するのである。火山は大地の裂け目に沿っている。

 氷河とマグマが出会うことで大洪水が発生する。グリムスヴォトンにはカルデラの中に蒸気を上げる湖がある。この湖が時に50キロ離れた場所で大洪水を起こす。噴火で溶けた水が氷の下の隠れ湖に流れ込み、量が増えると氷を押し上げて氷の下を走って、その末端で一気に吹き出すのである。大量の土砂が吐き出されるので、周囲に大きな影響を与える。アイスランドではこのような洪水が頻繁に起こっている。隠れ湖の水が抜けた陥没の跡もある。小規模な洪水は数年に1度発生するという。その結果、サンドゥーと呼ばれる水浸しの平地が生まれる。大量の土砂で海岸線が800メートルも沖合に移動したことがあるという。この黒い海岸ではアザラシがひなたぼっこしている。

 

 

火山島の光景

 レイキャビクのハットルグリムス教会は、火山による柱状節理をモチーフにしたデザインをしている。アイスランドの海岸には多角形の柱状節理が各地で見られる。

ハットルグリムス教会

柱状節理

 氷河は暖かい季節になると一部が溶け出す。氷河の雪解け水は大地を流れ、各地に滝を作る。ヴァトナ氷河から北へ120キロ、水量ヨーロッパ最大級のデティフォスの滝に行き当たる。毎秒700トンの水が流れ落ちている。下流には高さ100メートルを超える絶壁が続き、これは水で浸食されたものである。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・火山島アイスランドには火山と氷河が織りなす特殊な風景がある。
・ヴァトナヨークトル国立公園はヨーロッパ最大の氷河だが、この下には多くの活火山が存在する。
・これらの火山はユーラシアプレートと北米プレートが引き離されることでマグマが吹き上げたもので、火山の熱で溶けた氷が隠れ湖となって氷の下に存在する。
・この隠れ湖の水が限界を超えると、氷を持ち上げて一気に氷の下を流れて氷河の先端で噴き出して洪水を起こす。
・暖かい季節には氷河の雪解け水が大量に流れ出し、水量ヨーロッパ最大級のデティフォスの滝では毎秒700トンの水が流れ落ちる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・凄まじすぎて何とも言えない風景だが、これだけダイナミックにも関わらず特に人的被害が出たって話がないのは、やはり人口密度が極めて低いことが原因か。まあ氷河の上になんか人が暮らせんが。

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