教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/9 サイエンスZERO「漂着するクジラたち ストランディングがひも解く海の世界」

クジラの解剖から分かること

 クジラやイルカなどが海岸に打ち上げられるストランディング。中には群れで打ち上げられることもあるが、その原因などは明らかではない。このストランディングで犠牲になった鯨類から、謎であるクジラの生態や地球環境の問題までいろいろと分かることがあるという。

1902年、アメリカでのクジラのマスストランディング

 科博の田島木綿子研究主幹は、今まで2000頭以上のクジラを解剖してきたという。彼女の専門は病理で、死因の分析などをするので全国からストランディングの報告が上がってくる。千葉の海岸でマスストランディング(集団漂着)があったとの報で現場に駆けつける彼女だが、目撃したのは打ち上げられたカズハゴンドウ。冷水塊域に捕らわれて低体温で亡くなったのではという。クジラは打ち上げられると自重で肺がつぶれるので、すぐに死んでしまうのだという。自治体に重機を到着してもらって6頭のクジラを回収。3頭を解剖したところ、1頭には生死に関わる重篤な肺炎が発見されたという。

 なおストランディングの原因は不明だが、群れ丸ごとが冷水塊に捕らわれてしまったなどが推測できるという。なおリーダークジラがアルツハイマーになって判断を誤った結果、群れが打ち上げられるという例もあるらしい。リーダーがボケたら群れの命取りである。なお解剖すると体内からプラスチック片が見つかることが多いという。

 

 

ストランディングから新種発見や海洋環境汚染の情報を得る

 ストランディングしたクジラは標本などにされるという。骨を煮込んで脂を抜いて骨格標本にするのだという。このような作業の中でクロツチクジラという新種が発見された例があるという。存在は噂されていたものの謎だったクジラが打ち上げられたのだという。ツチクジラの仲間だが大きさが半分ぐらいしかないのが特徴だという。世界中のツチクジラの標本と比較して新種であることを証明したという。

ストランディングしたクジラから分かることがある

 このようなクジラが海の異変も教えてくれる。愛媛大学の国末達也教授は化学物質が環境に与える影響を研究している彼は、生物環境資料バンク(es-BANK)に冷凍保存されている生物の資料を調査に使用しているが、特に海洋哺乳類に注目している。それは生物濃縮が起こりやすいのだという。特に残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants POPsが濃縮されやすいという。POPsには殺虫剤のDDTや難燃剤のPBDEなどが含まれるという。環境で分解されにくいので体内での濃縮が起こりやすいという。海洋哺乳類は体脂肪が多いことから、皮下脂肪に化学物質が蓄積しやすいとのこと。2004年にPOPsの使用が禁止されても、未だに検出は高止まりのままだという。

 

 

 実際のところ、ストランディングはかなりしょっちゅう起こっており、これ自体は珍しい現象ではないとか。原因は未だに不明だが、聴覚中枢が寄生虫にやられて海の方向が分からなくなるって説を聞いたことがある。後はシャチとかに追い詰められた説。

 にしても、まだ乳児のクジラの死骸からマイクロプラスチックが検出されたという話には衝撃を受けた。海洋汚染はどこまで広がってるんだろうという感じである。なおPOPsの体内濃度のグラフが番組中に出ていたんだが、海洋哺乳類が圧倒的なんだが、ヒトも結構な濃度出ていることがさりげなく示されていたりなど、いろいろとギョッとするポイントのあった内容である

忙しい方のための今回の要点

・クジラなどが海岸に打ち上げられるストランディング。原因は不明だが、打ち上げられたクジラの解剖などから分かることも多々ある。
・打ち上げられたクジラの遺骸は標本などにされるが、中から新種が発見された例もあるという。
・また海洋哺乳類には環境汚染物質が生体濃縮されやすいことから、クジラの標本を調べることでこれらの環境汚染の程度が分かるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・打ち上げられたクジラはすぐに死ぬというようなことを言ってましたね。よく「何とか助けられないか」なんて声があるが、結局はああだこうだ言っている間に大抵は死んじゃうってことだな。

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