砂漠に横たわる巨大なクジラの化石
エジプトの砂漠地帯に横たわる巨大な生物の骨。これはクジラの化石である。ここはクジラの谷と呼ばれている。4000年前はこの一帯は海であり、その頃に巨大なクジラが生息していたのだという。
この地域は雨は年間5ミリぐらいと言う世界で最も乾燥した地域である。車の乗り入れが禁止されている地域を歩いて行くと風で浸食された丸い砂岩が連なっている。その先にあるのが巨大なクジラ、バシロサウルスの化石である。これは現代のクジラの祖先であるという。背骨の骨一つが30センチもある巨大なもので、この一帯で97体も化石が見つかっている。
クジラの進化の証拠
この一帯がかつて海だった証拠に、貨幣石と呼ばれる海で生息した丸い有孔虫の化石が大量に見つかる。さらに内陸には白砂漠と呼ばれる、隆起した石灰岩が風で浸食されて出来た風景が見られる。マングローブの化石も見つかっており、浅い海で生活するウミガメの化石も見つかっている。浅い海に豊かな生態系が存在したのだという。近くの黒砂漠はマントルが溶岩を押し出して出来た黒い大地である。そこには溶岩の結晶も見られる。
実はバシロサウルスには後ろ足があった。クジラが海洋に対応する過程で足が段々と退化したのだが、今まで足のついたクジラは見つかっていなかった。それが初めて見つかったのがバシロサウルスである。なおバシロサウルスの後ろ足は既に歩く能力を失っている。これで陸上哺乳類が海に進出した証拠が見つかったのである。
さらにはジュゴンの祖先やドルドンなどの化石も見つかっている。またバシロサウルスの歯形の残ったドルドンの子供の化石も見つかっており、バシロサウルスは最強の捕食者であったことがうかがえる。
忙しい方のための今回の要点
・エジプトの砂漠の中のクジラの谷には巨大なクジラの祖先、バシロサウルスの化石が大量に見つかっている。
・4000万年前はこの辺りはマングローブが茂る浅い海で、豊かな生態系を持っていた。ウミガメの化石なども見つかっている。
・なおバシロサウルスには小さな後ろ足がついており、陸上哺乳類が海洋に進出する過程が証明されたことになる。
・さらにバシロサウルスの歯形の残ったドルドンの子供の化石も見つかっており、バシロサウルスは最強の捕食者だったことがうかがえる。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・極端にあめの少ない超乾燥地帯だから、あそこまで良好な化石が残ったんですかね。そう言えばモンゴルのゴビ砂漠でも、信じられないぐらい良好な化石や古代の遺物なんかが発掘されると聞いたことがある。やはり生ものの保管は干物にするのが一番か。
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