教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/4 NHK あしたが変わるトリセツショー「簡単ワザで揚げ物大革命SP天ぷら☆鶏唐☆ポテト」

冷めてもサクサクの天ぷらを揚げる

 セットがリニューアルしての新シーズンとのことだが、番組の内容自体はほとんど変わっていない。今回のテーマは揚げ物を美味しく揚げる方法である。揚げ物が好きな人は多いが、家で揚げるとどうしてもサクッとならないとか、油はねのせいで片付けが大変だからしたくないなんて声もある。それに対する解決法を紹介するという。

今回は手軽で美味しい天ぷらの作り方

 まず揚げるとはどういうことかから始まる。油の中に天ぷらをつけると大量の泡が発生するが、これこそが実は揚げ物の本質だという。この泡は触媒の水分が水蒸気として出て来たものだという。つまりは揚げ物とは食材の脱水なのである。そこでその脱水の度合いが揚げ物の本質だという。揚げ物のプロはその脱水の度合いを制御するために、衣の厚さを調整したり、火の通り具合を見極めるのだという。

 ただこのようなプロの技は素人に直ちに習得は不可能なので、そこでこの番組のレシピが登場する。まず衣をサクサクにする方法だが、熱々の天ぷらを提供することはなかなか叶わないので、時間が経ってもサクサク感が落ちない方法を開発したという料亭の実験から始まる。それによると揚げてから1時間半たった天ぷらでもサクサクの食感が保たれている。ではその方法だが、低温の油で長い時間揚げることで衣の水分を極限まで下げているのだという。しかしこの方法、家庭で真似するのはなかなか難しい。そこで番組提案の衣の水分を下げる方法が、衣に油を混ぜるというもの。衣に油を加えることで吸水しやすいグルテンの生成を抑えるのだという。なお先に油を加えても、その分吸い込む油の量が減るので、最終的な油の量は変わらないという。

 なおレシピであるが、水180ミリリットルに油大さじ3杯を加え、そこに小麦粉100グラムを投入するとのこと。意外に油を加えているという印象である。

 

 

油のはねない天ぷら

 さて揚げ物で問題になる油の後処理やキッチンの汚れ、さらに油は怖いという感覚。そこでこれを解決する方法として油はねしないという対馬の天ぷらを取材。すると通常は油が跳ね回るいかの天ぷらを揚げているにもかかわらず、全く油はねがしない。その秘密はゴーラウンドだという。このゴーラウンドとはいかをひっかけて回転させる脱水機。一夜干し用の器具らしいが、これを使っていかを一夜干しにして水分を減らすので油はねがしないのだという。とは言っても家庭にゴーラウンドはないので、そこで使用するのが冷蔵庫。調理の前日に食材にラップをかけずに冷蔵庫に入れることで乾燥させるのだという。ただしあくまで置くのは衛生上の観点から一晩までにすること。なおこの方法で旨味も凝縮させる効果もあると言う。

 最後に油の後処理を楽にする方法だが、これは使用する油の量を減らすシャロウフライという方法を紹介している。フライパンに油を1.5センチの深さに入れ、具材を何度もひっくり返しながら揚げるのだという。揚がり具合は色や叩いた感じで判断するとか。

 最後に追加情報として冷凍庫を使った新食感ポテトの紹介もされているが、この詳細は多分公式HPにあるのでそちらを見た方が良いでしょう。要は冷凍で細胞が破壊されてグチャグチャになることを利用するようである。

 

 

 以上。いかにもガッテンテイストな実用性高い情報でした。それにしても同志社大の生活科学部の学生達が油が怖くて揚げ物が出来ないというのには絶句した。「揚げ物が絶滅危惧状態」ってのは煽りすぎにしても、正直なところ「今時の学生はどうなってるんだ?」というのは感じた。

 もろもろが紹介されていたが、食材を事前に乾燥させるは「そりゃそうだろうな」という印象だが、サクサクの衣のために事前に油を入れるは盲点だった。そもそも衣は水で溶くものなので、あえてそこに油を混ぜるという発想にはなかなかたどり着かなかった。もっとも番組構成上、料亭での方法は低温でじっくり揚げるという方法だったので、そこからのつながりはやや強引な感がある。恐らく最初はその線で実験したのだが、温度管理や時間管理などで家庭で誰でも出来るという万能レシピにはたどり着かなかったのではという気がする。その結果として、どこから浮上した方法かは知らないが、油を加えてグルテンの生成を防ぐという方法になったんだろう。まあこの方が簡単なのは間違いない。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・揚げ物とは食材の水分を適度に抜くことで味を濃くしたりする調理法だという。
・時間が経ってもサクサクの天ぷらを作るポイントは衣の水分を減らすこと。プロは低温でじっくり揚げることで実現しているが、番組提案は衣に油を加える方法。
・衣に油が加わることで吸水性の高いグルテンの生成を妨げるのだという。
・また嫌な油はねを防ぐには、食材を事前に乾燥させるのが良い。食材をラップをせずに冷蔵庫で保管することで適度に乾燥されられるし、旨味も凝縮出来るという。
・油の処理を簡単にするには、油の使用量を劇的に減らすシャロウフライ法を提案。少ない油で何度もひっくり返しながら揚げるのだという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ言われてみると納得の方法ばかりです。衣に油を入れるというのは何となく抵抗がありますが、最終的な油の含有量は変わらないと言うから安心です。確かにちょっと時間が経ってベチャベチャになった天ぷらほど悲しいものはない。
・ただ1つだけ気になったのは、グルテンが生成することで衣の形を保つというようなことをサラッと言っていたんですが、グルテンの生成を妨げると衣がバラバラになって剥がれるということはないんでしょうか? そういう点でも元々衣が剥がれやすいいかなどは、やはり事前乾燥を併用した方が良さそう。

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