今回のテーマは日本の自然を美しく描き続けた日本画の大家・川合玉堂の40代での作品。秩父の長瀞渓谷を描いた美しい絵である。
一体この絵はどこを描いているんだろうということで、今回は「絵画警察」の出番になるのだが、現地を回って聞き込みしても誰も分からないという回答。つまり実はこの絵は現実の風景をそのまま描いたのではなく、誰もが長瀞渓谷だと分かるモチーフを配置しながら再構成した絵画だというのである。川合玉堂は自らの美意識に沿ってモチーフを配置することは以前からも行っており、20代の頃に描いた鵜飼いの絵なども長良川にはない絶壁を描いていたりするとのこと。
と、要約したら今回の内容はこれだけになってしまった・・・。まあ川合玉堂の絵は難しいことをつべこべ言うよりも、そこに描かれている美しい世界を楽しみ、それをさりげなく描いている玉堂の技術に感心すれば良いわけである。この番組でも玉堂は技術を見せつけるような描き方をしないという類いのことを言っていたが、確かに彼の絵は常にさりげない。
なお風景を適当に組み上げるというのは何も玉堂が初めてではなく、そもそも山水画などはほとんどが架空の風景であるし、ヨーロッパでもいかにものモチーフを集めた観光ガイド的な風景画なんかもあった。玉堂のも謂わばその流れとも言える。実際、こういう架空の風景画は実際の景色以上にその場所らしかったりするのである。