教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/24 NHK ガッテン「これぞ!令和に伝える料理ワザ 時短ふわっトロ煮魚の神髄」

 今回のテーマは煮魚。手間がかかるのに美味しく出来ないと敬遠されがちのこの料理を、手軽にかつ美味しく調理できる方法があるのだとか。

 煮魚を作るとなると味が染みこむかが気になるところ。まずは標準的なレシピを紹介しているが、それでは煮汁に冷たい内から魚を入れて、中火で加熱し沸騰したら弱火に切り替えて20分煮るというもの。しかしこうして作るとよくある味は染みていないのにパサパサしたものになってしまう。

煮魚とは魚を煮るのではない

 番組では煮魚の調理法を調査するために、以前この番組に登場した魚の伝道師・前田尚毅氏にフランスでの煮魚の調理法を調査してもらっている。その結果、魚を煮る時には弱火で絶対沸騰させないように20分煮るとのこと。こうすれば魚が固くなることがないという。

 これで目出度し目出度しというところなのだが、それだと番組が15分で終わってしまう。実は今回はここからどんでん返しがある。日本の板前さんに煮魚のことを聞いたところ、「強火しか考えられない」との回答が返ってきたらしい。和食料理人の林亮平氏によると「煮魚というものを勘違いしてる」とのこと。まず魚はいくら煮ても固くなるだけで味は染みないのだという。だから固くならないようにふわっと煮てから煮汁をかけて食べるのが正しい煮魚のあり方だという。

 林氏の煮魚の作り方は、冷たい煮汁に魚を入れて落としぶたをし、ここから強火で沸騰させる。そしてそのまま強火で3分半煮てから煮汁からだし、残りの煮汁を適当に濃縮してからかけるというもの。

 魚のタンパク質は温度が高くなると固くなってしまう。だからフランスでは温度が上がらないようにしていたのだが、日本は落としぶたを使うことによって煮汁が魚の上にまで回る。そして短時間で調理するので魚の温度が上がりすぎないということらしい。なおフランスと日本とでこのような調理の仕方に差が出たことに対して、番組の最後で前田尚毅氏は「日本の魚はそれだけの調理をしても耐えうるポテンシャルを持っているから」と、魚の伝道師らしいコメントを残している。

 

 で、今日の番組のポイントはここまでで、後は料理番組となる。煮魚は短時間で調理と言ったが、逆に長時間コトコト煮ることで美味しくなる魚もあり、その代表がウツボとのこと。ウツボは非常に固い皮をしているのだが、これが実はコラーゲンであり、長時間コトコト煮ることでプリプリになるとのこと。ちなみにウツボは私も高知で食べたことがありますが、これが以外にクセがなくて美味い魚です。顔は怖いですけど。

 この後はスペインの煮魚料理の紹介や、和食の達人野崎さん・・・でなくて、なぜか今回は浜田統之氏が登場して煮魚料理のレシピを紹介(野崎さんは忙しかったのでしょうか?今回は台詞一言だけのスポット出演です)。こちらの詳細は多分番組HPで紹介されていると思うので興味のある方はそちらへどうぞ(笑)。

 以上、例によって前半にガッテン技を紹介して、後半は料理教室という最近のこの番組らしいパターンでした。ヨーロッパ取材なんて贅沢なことをしていますが、何か他の番組のついでだったのでしょうか(例えば前田氏に対する密着レポートとか・・・もしかして「プロフェッショナル」か?)。何せ1回の取材ビデオを最低3回は使用するのがNHKのパターンですから・・・。

 

忙しい方のための今回の要点

・魚をいくら煮ても味は染みないので、正しい方法は落としぶたをして強火で3分半煮る。これに煮汁をかけて食べる。こうするとふわっとした絶品の煮魚になる。
・コラーゲンの多い魚は弱火でグツグツ煮ることでプリプリになる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・フランスのシェフにとっては、強火での煮魚とは未知の領域だったようです。落としぶたの効果には本気で悩んでおりました。
・この番組の御用料理人もそろそろ野崎さんから世代交代なんでしょうか? それにしてもNHKは毎回こういう人をどういうコネで探してくるんでしょうか? 私はいつも疑問に感じております。例えばNHKの朝のニュースのコーナーに出てくる妙に美しい「一般主婦」の方とか・・・。

 

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