今回のテーマは俳諧師の松尾芭蕉。新しい俳諧の形をつくり、俳句の祖と言われている人物である。
芭蕉が旅立つ経緯
松尾芭蕉は伊賀の生まれ(だから芭蕉忍者説とかが出るのだが)、家は名字・帯刀を許された農民の出だという。若くして藤堂良忠に仕える。そこで良忠と意気投合し、共に俳諧などを楽しんでいたという。そのうちに武士に取り立ててもらうことを夢見ていた芭蕉だが、その良忠は25歳の若さで亡くなってしまう。
その後は俳諧で身を立てるべく江戸に移り、35歳で宗匠(俳諧の師匠)となり日本橋で多くの門弟を抱えて富と名声も得るのだが、その頃の俳諧が自らが求めるものとは異なることに疑問を感じ、深川に移って芭蕉を庭に植えた庵に住むようになる。
しかし1682年の天和の大火で江戸の町と共に芭蕉の庵も焼失、これに儚さを感じた芭蕉は旅に身を置くようになるのだという。
芭蕉の体力を支えたカテキンパワー
40代の半ば以上を旅に費やした芭蕉だが、その芭蕉の体を支えたのが彼が好んだ奈良茶飯だというのが番組の解説。緑茶にはカテキンなどの健康成分が含まれているが、茶漬けにして米のタンパク質と作用することで、カテキンの吸収率が上がるのだとか(吸収されやすいタイプのカテキンに変化するらしい)。
なお芭蕉に隠密説が出たのは奥の細道での奇妙な移動にあるとか。それは伊達領の中をやけに駆け足で巡った行動。これは伊達班を調査していたのではないかという考え。やはり彼が伊賀の生まれであることと、幕府と関係の深い藤堂氏とゆかりがあるということが理由のようだが、実際のところは証拠のない全くの憶測で真相は不明。
芭蕉の弟子のいびき
さて表題のいびきだが、実は芭蕉ではなく弟子の杜国の話。彼がかなり激しいいびきをかいていたらしく、芭蕉がそのいびきの様を絵に残している。なお彼のこのいびきは睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、この病気は昼間の眠気による事故などだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などにつながる危険がある。この病気のせいかは不明だが、杜国は34歳の若さで亡くなって、芭蕉を悲しませることになる。
芭蕉を苦しめた持病は潰瘍性大腸炎?
芭蕉自体の病気としては彼は40代末頃から持病の悪化に苦しめられていたという。小腹に痛みが現れ、それが良くなったり悪くなったりするとのことで、現在の診断名は潰瘍性大腸炎ではないかというもの。これは免疫病の一種の難病で、症状が良くなったり悪くなったりすることがあるらしい。
芭蕉はその持病に苦しめられながら、小康状態の時を見計らって強引に旅に出るのだが、旅先の大阪でとうとう病に倒れそのまま亡くなる。潰瘍性大腸炎で直接に死につながることは考えにくいことから、何らかの合併症を発症したと推測されるが、それは腸結核ではないかとのこと。結核菌が腸で繁殖する症状で、潰瘍性大腸炎になると肺胞が開くということが起こるので、そこに結核菌が入り込み、それがさらに腸に移って繁殖したとのこと。この前年に芭蕉の甥の桃印が肺結核で亡くなっており、芭蕉はその看病をしていることからそこで感染したと考えられるという。記録によると芭蕉は最後に激しい下痢に何日も苦しんでから亡くなったとのことなので、症状的に腸結核だろうとのこと。
以上、松尾芭蕉の生涯についてですが、病気の話以外は極めて普通の話ばかりですね(笑)。純粋な歴史番組でもないのでそこには切り込まなかったか。奈良茶飯はゲストも試食していましたが、結構美味いようです。私もお茶漬けは好きなんですが、あれは炭水化物に偏りがちになるのが難です。
なお芭蕉の死因は潰瘍性大腸炎からきた腸結核とのことでしたが、普通に考えると潰瘍性大腸炎からきた大腸ガンの方が可能性が高いような気がするんですが・・・。特に大腸ガンを否定するような所見の説明はなかったように思うし。
ちなみに潰瘍性大腸炎と言えば、安倍総理の持病と言うことでも有名な病気です。何か忖度した?
忙しい方のための今回の要点
・芭蕉は奈良茶飯を非常に好んだが、お茶漬けは茶のカテキンの吸収率を高める効果がある。
・芭蕉の弟子の杜国が激しいいびきをかき、芭蕉はその絵を残している。彼は睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、そのせいかどうかは不明だが34歳の若さで亡くなっている。
・芭蕉は潰瘍性大腸炎を患っていたと考えられ、最終的な死因はそれから合併した腸結核ではないかと推測される。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・芭蕉隠密説については結構言われているのですが、実際のところ真偽は不明。今回のゲストのキャンベル氏は否定してましたが、私も同感です。隠密にするなら芭蕉のような有名人は逆にまずいのではと考えています。それにもし彼が隠密なら、伊達領は駆け抜けるのではなく、逆にそこでゆっくり滞在して諸々を調べると考えます。捕まる危険を考えて急ぎ足で駆け抜けるぐらいなら、むしろ伊達領内には入らずに周辺で門人などを経由して情報を集めたのでは。
次回の偉人たちの健康診断
前回の偉人たちの健康診断