今回はいきなり中国製のインチキドラえもんのようなものが登場するぶっ飛んだ開始だが、内容はさらにぶっ飛んでいる。運動しなくてもある食べ物を食べ続けるだけで筋肉が増えるというのである。
スーパーフード大豆の効果
番組ではそれが何かをかなり焦らすのであるが、結論は大豆。これを毎日食べることで寝たきりの患者の筋肉が増えるという臨床例が出たらしい。なんと平均で40%も筋肉が増えたとのことだが、寝たきりでそもそもの筋肉量が少なかったからであって、普通の人がそんなに増えるわけではない(普通の人がそんなに増えたら、1ヶ月でみんな超人ハルクになってしまう)。ただ番組でも54人に2週間8グラムの大豆を毎日食べてもらうという実験をしたが、37人の筋力がアップしたとのこと(当然ながら40%とかではなくて、もっと少ない増加幅ではあるが)。
大豆の筋肉増強作用
で、大豆タンパクが筋肉を増やす理由だが、それはその形に秘密があるとか。人間の筋繊維は運動などで断裂すると、IRS-1(番組命名はアイちゃん)というタンパク質が作用して、より太い筋繊維に修復される。これが運動で筋力が増す効果。では運動しない場合はどうかだが、この場合もやはり筋繊維の断裂等は起こるらしい(要は劣化)、しかしこの場合にはユビキチンリガーゼ(番組命名ユビくん)という物質が現れて、IRS-1と結合してその活動を抑えるのだという。すると筋肉はドンドンと減っていくことになる(要は使わない筋肉は減らすような作用が体にあるということ)。ここで大豆タンパクが登場するのだが、この大豆タンパクは構造がIRS-1と似ていることから、これがIRS-1の代わりにユビキチンリガーゼと結合することでIRS-1の働きが阻害されず筋肉が強くなるということらしい。
この後に徳島大学の先生が現れてより詳しい解説をしているが、このことは宇宙で行われた実験などによって解明されたとか。IRS-1と大豆タンパクの構造の一部がCGで示されていたが、両者はほぼ重なることになる。
驚異の大豆のタンパク質製造メカニズム
大豆は荒れ地でも育つのにこんなにタンパク質を蓄積できる理由は、その根にある根粒の効果だという。大豆はこの根粒で空気から直接窒素を取り込むことが出来るのだとか。作物の育成において窒素の固定化というのが課題であり、このために化学肥料が多用されるわけだが、大豆は自分で窒素を固定化するわけである。この窒素はタンパク質にも含まれるものであるので、大豆は高効率でタンパク質を合成できるということらしい。
後は大豆食だけでマッチョになった英語教師などのアスリートの例も登場。それにしても煽る煽る。
大豆に含まれるさらなる効果
というわけで大豆を食べるだけで筋肉が増えるという衝撃的な内容だが、番組はこれだけで終わらない。なんとアメリカのFDAの調査の結果、大豆を1日25グラム以上食べていると、心疾患が減少するということが判明したという。大豆のタンパク質が脂肪を吸収を妨げることで心疾患を抑止するのだとか。
さらに世界中の長寿食を研究していた研究者による調査の結果、どこでも入手しやすい一番の健康食は大豆という結論になったとか。
いやー、かなり衝撃的内容の上に、番組も煽る煽る。これは明日は大豆食品を求めてスーパーに行列が出来そうだ。しかし内容的に「ホンマかいな?」という疑問がつく内容なので、番組でも徳島大学の先生とか、アメリカのFDAとかいろいろ権威づけて「番組が勝手に言っていることではない」というのを強調していた。もっとも「あるある大辞典」などではこのインタビューとかが実は捏造だったわけだが、この番組では徳島大学の先生はスタジオに来て話をしていたから、少なくともこの先生に纏わるところは本当なんだろう(この先生自体が最初から嘘つきでない限り)。
まあ大豆が体によいことは間違いなさそうなので、大豆を積極的に取ることは悪くはないでしょう。もっとも同時に大豆はカロリーも高いので、そこのところは大丈夫なんだろうか? 一応番組の方も、大豆ばっかり食べるなんて極端なことをする馬鹿が出てはまずいから、肉や魚などバランスを取ってということは強調していたし、筋力を強化するには大豆に運動というように、運動がいらないとは言っていなかった。この辺りは以前からこの番組に見られるいかにもNHKらしい良心と言うか保険と言うかです。
肉類をほとんど取らなかった日本人が意外に頑健だったのは大豆の効果だったと言うことか。そう言えば「鬼灯の冷徹」でも和食をすべて原料に戻すと全部大豆になってしまうという話があったな。
忙しい方のための今回の要点
・大豆を摂取することによって運動なしでも筋肉を強化する働きがあることが分かった。
・大豆たんぱくは筋肉の再生に関与するIRS-1に構造が類似しているため、運動がない場合にIRS-1の働きを阻止するユビキチンリガーゼにIRS-1の代わりに結合することで、IRS-1の働きをサポートする。
・大豆がタンパク質を大量に合成できるのは、根にある根粒がタンパク質の原料となる窒素を空気中から直接取り込むため。
・アメリカのFDAの調査によると、大豆を1日に25グラム以上摂取すると、心疾患の確率が減少することが判明した。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・今回の番組の作り方は冒頭からかなり悪のりというかぶっ飛ばしてましたが、途中でも「エクセリオンのテーマ」が登場したり、かなりスタッフからオタク臭が感じられました。まあこの手の番組のスタッフには実はそういうタイプが多いのですが。
・途中で大豆タンパクの効果を説明するために登場した「愛の劇場」、かなり窮屈そうでしたね。途中で中の人の声が聞こえるなんてハプニングまでありましたが(こういうところやら志の輔氏が咳き込んだりしたのもそのまま流しているなんてところが、今回の制作の悪ノリ度の高さの反映でもあるのだが)、もうちょっと大きめに作っとけば良かったのに。
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