教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/9 サイエンスZERO「ヒトとイヌ 進化の歴史が生んだ奇跡の関係」

 昔から人間のそばで暮らしてきた動物が犬だが、犬と人間には特別な関係があるというお話。

犬と人間の特別な関係

 まず犬は人間の感情を理解する能力があるのだという。飼い主にストレスをかけて犬の反応を見る実験を行ったところ、飼い主がストレスで心拍が変動した時、同様の変化が犬の心拍にも現れたという。またセラピー犬などは明らかに人間の感情を察して行動するとのこと。また人間の方も犬の影響を受け、重度の認知症で意識が混濁していた患者が犬に対して反応したりするなどということも起こるとか。

 実際に犬の脳をMRIで観察したところ、人間の声に反応して人間と同様の感情を感じていることが分かったとか。また人間と犬が見つめ合った時、癒やしホルモンであるオキシトシンが双方に分泌されることも分かったという。このオキシトシンは通常は親子など同種の仲間で分泌されるものなので、これはかなり異例のことであるという。

 

 

狐が犬になる?

 では犬はどうやって生まれたのか。犬の先祖は元々は狼だったと言うが、人間と狼は共生どころか互いに餌を奪い合う敵であったはず。この狼が犬になるメカニズムをロシアの研究所で、狼と同じく犬科である狐を使って研究したという。その方法とは狐の中からなるべく気性の穏やかなものを選んで、それをさらに交配していくということの繰り返しである。その結果、56世代目になると人間の指示を理解してそれに従う「犬化した」狐が登場したという。

 そしてこういった狐の頭蓋骨を調べたところ、長さは短くて幅が広いということが分かったとか。これは子供の特徴なのだという。つまり犬化するというのは、脳が子供のまま大人に成長するというネオテニー(幼形成熟)という状態になることだという。ネオテニーした個体は攻撃性を司るコルチゾールの分泌が少なく、その一方で記憶を司る海馬の細胞増加が多いなど学習能力が高くなっているのだという。つまりは協調性があって学習できる生物になったと言うことらしい。同様のネオテニーの性質を持っている動物は、人間を始めとする一部の類人猿らしい。ということで、人間と犬はネオテニー同士で絆を結べると言うことらしい。

 以上、犬と人間の関わりについて。犬と人間が特別な関係を持っているということは分かりましたが、犬と並ぶペットの双璧である猫にはこういう関係が全くないので、結果として猫は自由と言うことになるというわけか。ただこの理屈から言うと、チンパンジーはさらに人間の感情を察することが出来るような気がするが、あそこまで知能が発達すると、今度は自分の都合が優先してくるから犬のようにアニマルセラピーには向かないということになるか。なお今回は出てきませんでしたが、犬はそもそも群れで暮らす社会性を持った動物なので、そのリーダーに人間を置くことでヒトに従うのだというのが従来の説明でした。確かに実際にはこの性質も大きいような気がします。

 なおアニマルセラピーって万人に効くんでしょうか? 私は正直なところ動物は苦手なので(特に臭いが駄目)、アニマルセラピーって御免蒙りたいのですが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・犬は人間の感情を理解する能力があると考えられる。
・犬と人間が見つめ合った時、癒やし物質であるオキシトシンが双方に分泌されることが分かった。
・犬は狼の中から性質の大人しい個体が人間のそばで繁殖することを重ねることで生まれたと考えられる。
・犬はネオテニー(幼形成熟)した動物と考えられ、それはヒトや類人猿の一部と同じである。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・アニマルセラピー云々の話がありましたが、私がよく閉口するのは、犬を飼っている人って犬を嫌いな人間もいるということを理解していない場合が多々あること。食事の場に犬を連れてこられたりしたら私には不快極まりないんですが、それを「なんで?」って反応した人もいます。ヒトはヒト、獣は獣というのが私の考えです。

 

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