近年急速に進化しているAI人工知能であるが、あらゆる分野への実用が進んでいるという。
AIがタクシー客や退職者を予測
名古屋ではタクシー会社が客を拾うためにAIを実験している。このAIはNTTが開発したもので、携帯電話から得た人の位置情報に、タクシー会社の持つ過去の乗降情報、これにさらに日付や天候などの情報を掛け合わせて、そこから客がいそうな地域を割り出すのだという。これを導入したタクシーは乗客が2%増えたという。
また医療事務の職員を派遣している会社では、ストレスの高い仕事だけに退職者の多さに困っていたという。そこで面談における自由記述の文章の内容から、退職の可能性の高い職員を見つけ出し、面談等でサポートすることで退職者を減らしたというような事例もあるとか。このAIは文章中に現れる単語やその順序から退職者の特徴を割り出すのだとか。さらには結婚紹介所のマッチングにAIを使用するなど応用は広がっている。
個人の健康まで予測するAI
さらにいろいろな健康情報からその人が将来になる病気やらその際の医療費などを予測するAIもあるという。保険会社がそのようなAIを導入したことで、従来なら通常の保険料では加入が出来なかった高血圧のある人物などが、何のペナルティもなく保険をかけられたりした事例もあるとのこと。ただこれは逆に危険性が高いとして保険を断られる者も出る可能性があるわけであり、その判断が納得できるかというところが問題となる。
AIが人間の生死を左右する
その判断の是非がまさしく問われるのが、アメリカで進んでいる心臓移植患者の選定にAIを使うというケース。心臓移植は常にドナーよりも移植希望者の方が多い状態であり、どの患者に優先的に移植を行うかというのは非常に難しい判断になる。そこでAIで移植を行った場合の10年後の生存率と移植を行わない場合の生存率を計算して、その差が大きい患者ほど移植の利益があると判断して優先的に移植を行うということが進められているのだという。ただこの判断の中身はブラックボックスであるわけだから、実際に患者が納得できるかどうかは別問題である。番組では一人の移植希望患者を紹介していたが、彼は移植のメリットが少ないという判断となって移植を断られたらしい。納得できない彼は「すべては神のみが知る」と言っていたが、確かにAIが神の領域まで浸食しつつあるようでもある。
急速に発展するAIの現状について。ただAIと言っても全知全能の神であるわけではなく、今あるデータから数学的に相関性を導き出しているだけなので、そのデータ自体が誤っていたりバイアスがかかっていたりすると、その結論もバイアスのかかった誤ったものになってしまうので、結局は使い手次第と言うことになってしまう。あまりAIの結果をご神託のように受け取っていてはまずい。
そう言えば以前にAIにネットで言葉を学ばせるということをやったら、そのAIが吐き出したのは差別的で危険な文章だったという話があった。ネットの世界はそういう差別主義者ほどやたらに喧しいので、そういう文章を学んでしまったらしい。確かにこれを日本語でやっても、結局はネトウヨAIが誕生してしまうのがオチだと思う。AIを生かすも殺すもデータ次第である。
忙しい方のための今回の要点
・AIは既にタクシーの乗客予測などに利用され始めており、実際に2%の客の増加があったという。
・さらに退職者のパターンを予測して事前にフォローしたり、結婚紹介のマッチングなどにも使用されている。
・健康データから将来にかかる病気や医療費を予測するなんてことも行われており、これが生命保険の加入のデータとして使用されている。
・アメリカでは心臓移植の優先順位を決定するのにAIを使用したりしているらしいが、ただしAIの決定に患者が納得できるかは別の次元の問題でもある。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・AIが進歩を続けると、そのうちに確実にAIに駆逐される職業なんかが出てくるでしょうね。例えば証券アナリストなんかもいずれはAIに取って代わられるかもしれない。スポーツ評論家なんかもAIがやるかも(笑)。「ココデ抑エニ藤川デハ逆転サレル可能性ガ80%」とか。
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