教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/4 コズミックフロントNEXT「ザ・プラネッツ 破壊と創造の暴君 土星」

 先週は別のネタを放送していたので土星の放送はないのかと心配しましたが、今週放送されたようで安心しました(笑)。

誕生早々大きく姿を変えた土星

 さて土星であるが、この星は誕生してから非常に劇的な変化を遂げた星だという。土星が45年前に生まれた時には、巨大な岩と氷で出来た惑星だったという。しかしその重力が周辺の水素やヘリウムを引き寄せ、これが大量に惑星上にに積もっていく。やがてその圧力で岩や氷が消滅して巨大ガス惑星の土星が生まれたとのこと。この間の変化は100万年ぐらいの間で起こっているという。

土星のリング誕生のメカニズム

 土星と言えばそのリングが有名であるが、実はこのリングが出来たのはつい最近だと言うことも分かってきた。地球では恐竜が闊歩していた1億年前、土星の近くを回る直径400キロの氷の惑星が土星の潮汐力で破壊される。そして飛び散った氷の破片が土星のリングを形作ったとのこと。

土星にダイヤモンドの雨が降る

 また土星表面ではは激しい気象変動が起こっているが、そのエネルギーは太陽からでなく土星の内部に起因しているという。土星の内部では激しい嵐が起こり、メタンは分解されて炭素の結晶となり、やがては高圧でダイヤモンドの雨となって降り注ぐ。しかしさらに深部ではそのダイヤモンドでさえ融解して形を保てなくなる。その奥には液体金属のような層があると考えられるとのこと。

土星の衛星に生命の可能性

 土星を最初に観測したのはボイジャーだったが、ボイジャーは数日で土星を通過しただけである。そこで土星を本格的に観測するために打ち上げられた探査機がカッシーニであった。惑星をスイングバイして速度を上げたカッシーニは土星の周回軌道に乗り、貴重なデータをいろいろと送ってきた。

 その中での最大の発見は衛星エンケラドスに関してのものだった。エンケラドスの表面から間欠泉が吹き上げているのが観測されたという。カッシーニはその間欠泉に接近して観測したところ、その成分は塩水であることが分かったという。エンケラドスの氷の表面の奥には液体の海があることが分かったのだという。エンケラドスは土星の回りを楕円の軌道で回るため、そのエネルギーで氷が融解していると考えられるとのこと。また地球の熱水噴出口で観測されるような成分が含まれることが判明したことから、エンケラドスの氷の下には生命の存在の可能性も考えられるとのこと。


 以上、土星に関しての最新情報。土星と言えば巨大衛星のタイタンばかりが注目され、創作の世界なんかでもよく登場してますが(999もタイタンに立ち寄っています)、エンケラドスといった隠し球があったというのは衝撃の発見です。木星や土星のような外惑星は凍り付いた死の世界のイメージがありますが、どっこい惑星の潮汐力なんかでエネルギーが発生する可能性があるということですか。そうやって考えると、まだまだ生命の存在の可能性のある星はいくらでもありそうです。

 で、このシリーズ、さすがに天王星とか海王星はデータが少なすぎて無理でしょうね。これらの土星よりもさらに最果ての惑星なんかも大いに興味はあるところではありますが。

 


忙しい方のための今回の要点

・土星は最初は岩と氷の巨大惑星として誕生したが、やがてそこに降り積もった水素とヘリウムの圧力によってこれらが消滅し、巨大ガス惑星となった。
・土星のリングは1億年前に衛星の一つが土星の潮汐力で破壊されることによって生成した。
・土星の衛星のエンケラドスでは、氷の下に液体の海が存在することが確認されており、地球の熱水噴出口と同じ成分が検出されていることから、生命の存在の可能性もある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・土星の輪は思いの外複雑な構造になっていることが分かったようですが、昔言われていたカッシーニの隙間はなかったようですね。もっとも別の隙間はあるようですが。ちなみに戦艦アンドロメダを中心とする地球防衛艦隊は、カッシーニの隙間を利用して白色彗星帝国の艦隊に勝利するのですが・・・。
・土星の輪はいずれはなくなるということも分かったとか。そうやって考えてみると、もしかしたら木星にも今の土星のような巨大な輪がある時代があったのかもしれませんね。