教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/31 NHK ガッテン「夏の幸せ丸ごとお届け!極甘スイカ祭」

 今回はいかにも夏向け企画。甘いスイカをいかにして見分けるかという内容。

スイカの実の空洞はなぜ出来る?

 スイカと言えば切ってガッカリするのが、いわゆる空洞の入ったスイカ。どうしてこういうことになるかと言えば、熟れすぎなのだとか。スイカというのは熟れどきが外からは見分けにくく、農家なんかも日にちの印を入れて管理しているとか。これをキチンとしてないと熟れすぎたり、逆に熟れてなくて真っ白なんてことも起こるという。まあそこの管理は農家がしっかりしているので、未熟なスイカが市場に出てくることはないという。

叩いて音を聞いても分からない

 ただ空洞のあるスイカにはたまに出くわすのは事実。で、そんなスイカをどうやって見分けるか。一般にスイカを見分けるには叩いてみるというのはよく言われていること。そこで熊本にスイカを買いに来たお客に2つのスイカを比べてもらって、どっちが身の詰まったスイカかを見分けてもらう実験を行っている。皆さんコンコン叩いて念入りに調べているが、結果は見事に的中率は1/2。つまりは誰も分からなかったという結果。

 要は音で調べてもダメなのだそうな。実際に音が高いと良いとか、低いと良いとかいろいろ言われているが、音の高さは関係ないという。

 

音ではなくて振動で判断する

 ではどうやって見分けるかだが、ここで番組は唐突に地面を叩いてその震動から地下水の位置などを調べている農研機構上級研究員黒田清一郎氏の元を訪れて、スイカの中を調べる装置の開発を依頼している。そして彼が作ったハンドメイドマシン・スイカたたき1号は見事に中身の詰まったスイカを判別して目出度し目出度しなんだが・・・なんじゃこりゃ?

 まさか皆さんでこの装置を買いましょうという話にもならないので、この後にスイカの見分けのプロが登場することになる。スイカと48年間つきあっているという杉本好一氏。本人曰く98%は当たるとのことなのだが、確かに百発百中。しかも当てる度にこれ見よがしのドヤ顔をするというテレビ的にはおいしいキャラ。一体NHKはどういうルートでこんなおいしいキャラを発掘してきたのやら

 で、彼が取っていた方法なんだが、やはりスイカを叩いている。しかし音を聞いているのではなく、振動を感じているのだとか。要はスイカに片手を当てて、反対側をもう片手で叩く。そしてその振動が伝わってくるかを調べるのだという。つまりは中に空洞があるとそこで振動が途切れるので伝わってこないと言うこと。で、先ほど農研機構まで行ってきたのが、「振動を調べる」ということの伏線だったことが判明するわけであるが、えらく遠回しな表現だ。正直なところ、途中で志の輔氏が「まだ番組の時間が長いのでここで明かすわけにはいきません」というようなことを言っていたが、実際に一つのネタだけで番組を引っ張るための時間稼ぎのような気がしてならない。いきなりこの方法が登場したら番組は5分で終わってしまうので、チコちゃんの1ネタよりも短くなる(笑)。

 

実は大事なのは空洞よりも鮮度

 なお空洞があってもそれは熟しているということなので、スイカの味には影響ないということを最後に説明してますが、それだったら先ほどの方法は意味ないじゃん!とツッコミを入れたくなるところです。スイカで味が落ちるのは空洞が入ることでなくて、種の回りなどからボサボサになる場合で、これは収穫してから日にちが経つと種を守るために糖などが消費されるからだとか。だからスイカは鮮度が命とのこと・・・って本当に大事なのはこっちの方じゃん! で、それを見分けるのは蔓を切った切り口を見ろとのこと。ここが緑色の内は新しいということで、時間が経つと黒くなってくるとのこと。ただしここで「必ず中身が劣化しているとは限りません」とお断りのテロップを入れてしまうところがNHKの良識というか責任回避というか・・・。

 後はイタリアではスイカにレモンをかけて食べるといったどうでも良い海外ネタや、先ほどスイカの実験で見事に空洞スイカをひいてしまったお爺ちゃんが、この方法を教えてもらって見事にミッチリと身が詰まったスイカを買って帰って大いに面目を施すというどうでも良いネタで時間稼ぎ(笑)。最後はさらに熟したスイカが発する音がどうこうという、分かったような分からんようなネタまで登場するが、これは完全に蛇足。


 以上、非常に実用的な内容ではありますが、どことなく番組のピントが微妙にずれてるのと、あからさまな時間稼ぎが目についてしまいました。正直なところ、昔に比べると最近のこの番組の作りはかなり雑になっているのを感じます。やっぱりネタがしんどくなってきてるのかな? 最近はやたらに休みも多いし。

 


忙しい方のための今回の要点

・スイカは熟れどきが外目ではほとんど分からないので、農家では日にちの印をつけて収穫時を管理している。
・よくある空洞の出来たスイカは熟れすぎたせい。ただ少々空洞が入っても味には影響しないとのこと。
・空洞のないスイカを見分けるには、スイカに片手を当てて、反対側を叩いて振動が伝わってくるかを調べると良い。
・スイカは収穫してから時間が経つと、種を守るために糖分が消費されて、ボソボソとした食感となると同時に味も落ちる。だからスイカは鮮度が命である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・なんか番組全体の組み立てが回りくどい上に論点がぼやけていて、今ひとつピンときませんね。空洞入りのスイカを避ける方法を紹介しておきながら、その直後にスイカに空洞があっても味には関係ありませんという説明が入ったり(いかにもNHK的に販売店や農家に気を使ったんだろうが)。正直なところ、この展開だと私としてはガッテン台叩く気にならんな。鮮度が命って言うのなら、最初から鮮度の見分け方一本に絞って番組を組み立てた方がスッキリする。ただしそれだと「蔓を見てください」の一言でいよいよ番組が3分で終わってしまって、これはチコちゃんの「働き方改革のコーナー」以下か(笑)。

 

次回のガッテン

tv.ksagi.work

前回のガッテン

tv.ksagi.work