教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

8/1 コズミックフロントNEXT「ザ・プラネッツ 太陽系の果て 未踏の世界へ」

 このシリーズも土星で終了かと思っていたら、どうやら最終回があったようである。今回は土星より外の惑星をまとめて紹介。

凍り付いた世界、天王星

 まず天王星だが、これを観測したのはボイジャー。しかし既に速度を上げていたボイジャーが天王星を観測できた時間は6時間に過ぎないという。それでもその間にボイジャーは多くの発見を成し遂げた。まず天王星の大気の成分は水素とヘリウム、さらに惑星内部はメタン、アンモニア、水が混ざり合ったものであることが分かった。大気には取り立てて大きな特徴はなく、雲が10個あるということが分かっただけ。マイナス224度の凍り付いた世界ではほとんどのものが変化しないのである。

 また天王星には輪があるが、幅はわずか数キロ。この輪が拡散してしまわない理由が不明だったのだが、輪の両側にまるで羊飼いのように回る衛星が発見された。これらの衛星が輪が拡散しないように働いていると考えられるとのこと。また天王星は他の惑星と違って横向きに自転しているのが特徴であるが、これについては地球サイズの天体がかつて衝突したのではと推測されているという。

 

嵐の吹き荒れる海王星

 ボイジャーはさらに外側の海王星にも立ち寄っている。その結果、海王星の様相は天王星はかなり異なることも分かった。海王星の大気の活動は活発で、風速時速2000キロ以上の嵐が吹き荒れているという。またボイジャーの到着時には巨大な黒い渦巻きが観測され、その渦巻きはその後数年にわたって残存したという。

 太陽から遠いにもかかわらずこの激しい大気の活動のエネルギーはどこにあるか。それは海王星の温度がマイナス214度と天王星よりも高いことが示しているという。つまりは内部からのエネルギーがあるとのこと。もっともそのエネルギー源が何かはまだ不明である。

 さらに発見は海王星の衛星トリトンでもあった。この星は特徴のない衛星と考えられていたが、間欠泉が吹き上げているのが観測されたという。間欠泉は太陽の光が当たる部分で発生しており、太陽の光が内部の窒素の温度を上げ、それが表面の凍った窒素を突き破って吹き上げているのだという。またトリトンは海王星の自転と反対方向に公転していることから、外部からやってきて海王星に捕らえられた星と考えられるとのこと。現在は真円に近い軌道を取っているが、かつては楕円軌道だったと考えられ、その時に引力の変化の影響で多くの縞模様が残っているとのこと。

 

変化に富んだ冥王星の素顔

 最後の惑星の冥王星を探査する観測船はニューホライズンは2006年にNASAによって打ち上げられ、10年かけて冥王星に到着するため、機体の寿命を延ばすための休眠状態に入った。しかし皮肉なことにニューホライズンが眠りながら冥王星に向かっている間に冥王星は惑星の地位から滑り落ちてしまう。しかしそんなことは探査船には関係のないことである。2015年に冥王星に到着したニューホライズンは驚くデータを送信してきた。冥王星の表面には氷の山脈や多数のクレーターなど実に変化に富んだ地形をしていた。もっとも特徴的だったのはトンボー地域で、冥王星のハートと呼ばれるハート型の平原である。ここにはクレーターのない平坦な地形が続いている。さらに細かく観測したところ、蜂の巣状の模様があることが分かった。これは内部で対流が起こっていることを意味している。この下には何らかの熱源があって凍った窒素を暖めていると考えられる。その熱源として最も有力な説は放射性元素の崩壊熱であり、内部には海が存在するのではないかと考える研究者もいるとのこと。

 冥王星を2時間ほどで通過したニューホライズンは現在カイパーベルトと呼ばれる原始惑星が存在すると考えられる絶対零度の世界を飛行中であり、また新たな発見が期待されている。


 以上、最新研究とCGで各惑星を紹介したシリーズもこれで終了。それにしてもやはり今回は今までとは段違いに情報量が少ないのは仕方のないところのようである。それにしてもこのような外惑星にまで実際に探査機が行ったというのはスゴいことで、私が子供の頃には完全に想像の世界の話でした。

 


忙しい方のための今回の要点

・天王星は水素とヘリウムの大気に内部はメタン・アンモニア・水が混じり合った静かな凍り付いた世界であった。また幅数キロの細い輪があるが、この輪の両側を衛星が回っており、その重力が輪の拡散を防いでいる。
・海王星は天王星と違い、時速2000キロの嵐が吹き荒れる世界。この大気活動のエネルギーは惑星内部から来ていると考えられるが、エネルギー源は不明である。
・海王星の衛星トリトンは、海王星が出来てから外から飛来したものと考えられている。表面では太陽の熱による間欠泉の吹き上げが起こっており、かつて楕円軌道を取っていた時の名残の縞模様が多数残っている。
・冥王星の表面は氷の山脈など変化に富んだ地形をしている。またクレーターがほとんどないトンボー地域では、内部の熱による対流が発生していると考えられている。そのことから冥王星内部に海が存在すると考える研究者もいる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・人類はこんな最果てにまで探査機を飛ばすようになったのですが、その一方で相変わらずの愚かさも抜けていません。このような高度な技術を人類の幸福のために使うか、それとも愚かな自滅のために使うか。今こそ人類の英知が問われているのですが、残念ながら現在の各国のトップは英知とは対極の位置に立つ人間が多すぎます。
・NASAがわざわざ冥王星に探査機を飛ばしたのは、冥王星が唯一アメリカ人が発見した惑星だからという背景もあったようですが、皮肉なことにその後に冥王星は惑星の位置から滑り落ちてしまいます。冥王星が当初に予想されたよりも遥かに小さかったことと、同様の軌道に同規模の星が多数観測されたことが決定的な要因になってしまいました。
・もっとも冥王星が惑星でなくなったからといっても、星がなくなるわけでもないので何かの影響があるというほどではありません。影響を受けたのは星占いとセーラー戦士ぐらいでしょう(笑)。