教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

8/15 BSプレミアム 偉人達の健康診断「徳川将軍家の健康法SP」

 今回は徳川将軍家の健康法と言うことで、要は今までいろいろ扱ってきた各将軍に関する話の総集編のようである。

 まず徳川将軍を見渡した時に、とにかく際立つのが初代家康と15代慶喜の長寿。共に70歳を越える長寿であり、特に家康についてはあの時代に70歳越えというのは驚異的である。これは家康が徳川幕府を守るためにとにかく健康に気を使っていたということが大きい。

家康の長寿を支えた八丁味噌

 とにかく家康は食生活に気をつけていた。食中毒を避けるために常に火を通したものを食べるようにしており、季節外れのものや珍しいものは警戒して口にしなかったという。その家康が特に好んでいたのが八丁味噌。この八丁味噌にこそ家康健康の秘密があるとの話。

 八丁味噌の特徴は通常の豆味噌の発酵が半年程度なのに対し、八丁味噌は2年も発酵させるということ。そのことにより、血圧を下げたり血糖値を下げたりするような有効成分が25種類も生成するのだという。特に長期熟成によって生じる褐色色素であるメラノイジンは、その強力な抗酸化作用によってコレステロールを下げ、糖尿病やガンなどを防ぐ効果があるという。また腸内細菌の環境を整える効果まであるのだとのこと。なんか私も明日から八丁味噌を食いたくなってくる。

慶喜長寿の秘密は豚肉にあり?

 さて慶喜の方であるが、確かに比較的健康的な食事を取っていたようであるが、彼が特徴的なのはとにかく豚肉が好きだったらしい。当時の豚肉は高級だったのだが、彼はしょっちゅう薩摩に豚肉の献上を要求するので、度が過ぎていると辟易とされていたらしい(このせいで薩摩と倒幕に走ったのか?(笑))。そこでついたあだ名が「豚一様」だったとか(豚肉好きの一橋の殿様の意らしい)。で、豚肉であるが、アルブミンを含んでいるために体内の免疫細胞を活性化する効果があるという。近年の研究では体内のアルブミン濃度が高い人の方が長寿であるという結果が得られているとか。また豚肉は牛肉などよりもカロリーが低くビタミンB1を多く含んでいることから、糖質などのエネルギー変換を促進する効果があるとのこと。実際、慶喜は晩年まで肥満と無縁でスリムな体型を保っている。

 

将軍もツラいよ、ストレスから来る病に苦しめられた将軍達

 一方、病気で苦しんだのは家光。彼は将軍になってからも何度も大きな病気をしているが、それがことごとく将軍としての権威を示す必要がある重要な行事の時だという。家光が病気になった原因はストレスにあると考えられる。ストレスがかかると人は抗ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されるが、ストレスが続いて体内にコルチゾールが蓄積しすぎると、これがリンパ球を攻撃することで免疫力が低下するのだとか。つまりは家光は将軍としてのストレスにさらされ続けていることで免疫力が低下して病気になっていたと言う話。まあ本番に弱いタイプなんだろう。

 また常にストレスにさらされる将軍が皆悩んでいた病気は肩こりだという。いわゆる緊張性の肩こりというやつで、最近はこれのために精神科にかかる患者も多いとか。

将軍達のストレス解消法

 そうなると重要なのはストレス解消法だが、これは秀忠については以前に紹介されていたが「鼓を打つこと」。太鼓を叩くなどの行為はストレス解消に良く、また脳をリラックスさせる効果があるとのこと。これは何となく感覚的に理解できる。だから高ストレスな現代に「太鼓の達人」がヒットしたと言うことか。

 後はやはり運動と言うことで、将軍達が好んだ運動と言えば鷹狩り。これは結構歩くので体に良いのだという。今回はさらにタカとふれあうことでアニマルセラピーの効果もあったのではとしている。これは犬を飼っている人に見られた現象で、ペットと交流することで幸せ物質とも言われるオキシトシンが分泌され、これが心身をリラックスさせていたという。なおこのオキシトシンは人同士のふれあいでも分泌されるものなので、この辺りが孤独な独身者は早く死ぬと言われている所以のようだ。つまりは私も長生きは出来ないということでパートナー募集中・・・すみません、脱線しました。

 

将軍達の死因

 最後は徳川将軍の死因なのだが、吉宗は63歳の時に突然に倒れ、言語や半身に麻痺が出たという。これは病名はすぐに分かるが脳卒中。吉宗は質素倹約のためにおかずをしょっぱめに味付けして、おかずの量をへらすなんてことまでしていたらしい。で、塩分が過多になってしまって高血圧になって、これが脳卒中につながったということ。吉宗は懸命のリハビリに取り組んだそうだが、5年後に脳卒中の再発作が襲ってそれで死亡している。

 5代将軍の綱吉はトイレから出てきた途端に意識を失って急死しているという。彼はトイレに入る直前に餅を食べており、トイレで具合が悪くなって食べ物を戻そうとした時に、餅が気管につかえて窒息したのではとのこと。この餅による窒息では今でも毎年高齢者が数人なくなっている。これを防ぐには喉の筋肉を衰えさせないことで、方法としては飲み込むという行為を意識するだけで、喉のどの筋肉が使われているかが分かるようになるので、強く飲み込むということが出来るようになるという。つまりはそういう習慣を付けろと言うことらしい。

 最後は家康なのだが、実はこの死因がハッキリしていない。記録では鯛の天ぷらを食べた後に体調を崩しているので、かつては食中毒が原因と言われていたのだが、実は家康はこの後3ヶ月ほど闘病しており、食中毒だと大体2週間以内には死ぬか回復するかをしているのでこれはあり得ないという。で、一番考えられる死因は胃がんだとのこと。確かに最近はこれが通説のようだ。


 以上、将軍家の健康法について・・・とのことなんだが、実際には健康法とは関係のない話も多数だった気が。なお何だかんだ言っても今回は徳川関係総集編という要素が強いことから、やはり製作スタッフの夏休み向け「働き方改革のコーナー」だったのではという気がします(笑)。夏場のNHKの番組は大体こうなります。ガッテンもつい先週がもろにそうでしたし。

 


忙しい方のための今回の要点

・家康は八丁味噌を好んだが、八丁味噌に含まれるメラノイジンにはガンや糖尿病を抑制する効果があるという。
・慶喜が好んだ豚肉に含まれるアルブミンは免疫を活性化する効果がある。またビタミンB1は糖類を効率的にエネルギー変換する作用がある。
・アニマルセラピーによってオキシトシンが分泌されることによってストレスが軽減されたり、心臓病などを抑制する効果があるという。
・吉宗は塩分過多のせいで脳卒中で亡くなった。
・綱吉の死因は餅を喉に詰めたことである。
・家康の死因は胃がんが最有力であると考えられる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・家康のおかげで最近はやたらに八丁味噌が注目されていますが、別に米味噌が体に悪いわけでも健康効果がないわけでもありません。あれはあれで健康効果もあれば体に悪い点もあります。それは八丁味噌も同じ。基本的なことですが、とにかく何かに極端に偏るのは良くないというのは真理のようです。家康だって八丁味噌ばかり食べてたわけではない。
・慶喜の長寿については、幕府をさっさと投げ出してしまったことも大きいのでは。あのまま将軍を続けていたら、ストレスで早死にしてる気がします。晩年の慶喜は結構悠々自適の趣味三昧だったようですし・・・。むしろ回りの元部下達の方がストレスで早死にしてます(笑)。しかし未だにこの人だけは、本当に何を考えていたのかよく分からないところがあるんですよね。もしかして将軍を引き受けた時点で、既に幕府の行く末に見切りを付けてたのではという気も。

 

次回の偉人たちの健康診断

tv.ksagi.work

前回の偉人たちの健康診断

tv.ksagi.work