教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

9/8 サイエンスZERO「世界記録更新!驚異の超深海魚」

 今回はマリアナ海溝の8178メートルの超深海で棲息しているという魚について。

発見!超深海で泳ぐ魚

 一般的に魚と言えば浅い海にいると思われている。しかし今回、マリアナ海溝に4Kカメラを沈めて魚の存在を確認したという。8000メートルと言えば、1センチ四方に800キロもの水圧がかかるという高水圧化である。しかしこの世界でも魚が泳いでいることが発見された。

 超深海に沈めたカメラの前につけた餌の鯖に、最初はヨコエビの仲間が大量にたかっていたのだが、やがてそのエビを狙って現れた白い半透明の魚が写っていた。後に罠を仕掛けてその魚を捕獲して調査したところ諸々のことが分かってきたという。

超深海魚の驚きの生態

 その魚の最初は名前がなかったそうだが、この発見で正式名称が付いた。その名称はシュードリパリススワイヤーアイというもの(以下シュードと略)。いかにもマヌケな顔をした魚であるが、この世界で生態系の頂点に君臨していると考えられるという。この魚は三重四重になった100本以上の歯を持つ上に、のどのところにも咽頭顎という歯のようなものを持っている。これらで飲み込んだ甲殻類の殻を砕いて食べていると考えられるという。

 しかし一般の魚だとこの深度では活動が出来ない。それは高水圧のせいでタンパク質の活動が取り付いた水によって阻害されるからだという。しかしこのシュードはTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)という親水物質を大量に体内に持っており、これが水分子を取り込んでタンパク質から引きはがすことでタンパク質が機能することができるのだという。

 

耳石分析で分かった生まれた謎

 さらにこの魚の耳石の酸素同位体を測定することで、興味深いことが分かった。この魚は成長してからは水温の低い深海にいるが、稚魚の時には水温の高い1000メートル以下の海底にいたことが分かったのだという。

 その成長のメカニズムは未だ仮説の段階だが、その魚の仲間は温度が上昇すると産卵するという事実があることから、産卵のために浅い海に浮上してきて、そこで産卵した後に再び深海に戻るのではと推測されるとのこと。これを確認するには今後の更なる調査が期待されるところ。


 なかなかに面白い魚です。ここでもう一つの謎は、なぜわざわざ浮上してきて産卵するかですが、やはり浅い海の方が餌が豊富であるからでしょうか。そしてある程度成長すると敵がいない深海に潜るということなんでしょうか。超深海にはまだまだ謎が多数あるようです。それにしても8000メートルも潜る魚もすごいが、8000メートル潜る4Kカメラも凄いな。ちなみにダイオウイカでもたかだか600メートル程度とのことなので桁違いです。

 


忙しい方のための今回の要点

・魚はいないと思われるマリアナ海溝の8000メートルの深海で魚が発見された。
・この魚(シュードリパリススワイヤーアイ)は通常の魚なら水圧でタンパク質が機能しなくなるところだが、TMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)という親水物質を大量に体内に有することで、タンパク質から水をはがして機能させている。
・耳石の分析の結果、シュードは稚魚の時は1000メートル以下の海で生活していることが判明、産卵ためにこの深度まで浮上してきていると推測される。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・NHKはこの手の新映像というのを良く出して来ますが、今回はさりげに4Kの宣伝も兼ねてます。ところで当の4Kや8Kは無用の長物として目下のところあんまり評判が良くないのですが(そもそも現在民放が垂れ流しているようなくだらないバラエティ番組なんか、ハイビジョンである必要さえない)、これからどうなるんですかね。放送技術の方は上がっても、当のコンテンツを作る能力の方はドンドン下がっているのが現状ですから。