教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/25 NHK ガッテン「高血圧も認知症も撃退!?世界に誇る日本の"減塩ワザ"SP」

塩分摂取量について考える

 高血圧の原因となり、心臓病などに結びつくと言われている塩。しかし昔からどうも日本人は塩分の摂取は多め。現在国際的に出されている塩分摂取量のガイドラインは5g/日とのことだが、スタジオのお客さんの塩分摂取量を調べてもほとんどの人がそれを越えているのが実態。ではこの塩分を減らすためにはどうしたら良いかが今回のテーマ。

国を挙げて減塩に取り組んだイギリスの成果

 まずは国を挙げて減塩に取り組んでいるというイギリスでは、食品の表示で塩分含有量が一目で分かるように工夫してある。塩分量を0.06gで緑、0.8gで黄色、1.6gで赤というように量によって色のシグナルが記載されており、一目で塩分の量が判断できるというようにしている。このような取り組みで、全国で塩分摂取量が2003年から2011年の間に1.4g減少したのだが、その結果として心筋梗塞や脳卒中での死亡率が4割も減少したという。

 

減塩食品の効果を上げる魔法の粉

 イギリスではパンに含まれる塩分を徐々に減らすようにしたというのだが、実は日本でも最近は減塩食品が増えている。ただ減塩食品と言えば、味が薄い、まずいというイメージがあったのだが、どっこい最近の減塩食品は違うという。ここで登場するのが神奈川県の野村善博氏。彼は多くの減塩食品の開発に携わってきたというが、ここで彼が用いるのが魔法の粉。あるコンビニでの新商品開発の現場に立ち会っているが、なぜかこの粉を加えると減塩食品の方がむしろ美味しいとの評価が。

 さてこの粉の正体が何かが気になるところだが、その正体とは納豆のネバネバ成分だという(要するに多糖類ということか?)。塩分を効率的にキャッチすることで、塩味を強く感じさせると考えられているとのことだが、何やら分かったような分からないような説明だ。粘りによって塩分を食材に引っ付けることで塩味が強くなるということだろうか? ただそのメカニズムだったとしたら、出汁などを飲まないそばの時は摂取する塩分は増えてしまうような気がするのだが・・・。それともその塩分をキャッチというのを舌の上でするのか? ちょっとこの辺りの説明がどうにも不足しているように感じたのだが、番組はこの情報はあっさりほったらかして次の話題にいってしまう。

 

塩を振るのは単なる「習慣」?

 次は塩分の摂取量についてネイチャーに掲載された論文に基づいての実験。スタジオパークのお客さんに2種類の塩を使ってゆで卵を食べてもらったところ、一方の塩は使用量がかなり少ないという結果。何が違うかといえば、単純に塩をいれた容器の穴の大きさが違っていて、一方は振ってもほとんど出てこない状態だったということ。これだと「そんなもの当たり前じゃないか」で終わりだが、ポイントはそれにも関わらずほとんどのお客は味は変わらないと感じていたということ。つまりはこの論文の主旨は、塩を振るという行為は単なる習慣であり、味ではなくただの惰性で振っているとのこと。早い話、塩を振ったつもりになっていたら、実際はほとんど振っていなくてもそれで塩が付いた気になっていたという話・・・なんだけど、これはゆで卵なんてそもそも塩を振らなくても普通に食べられるものであるからで、料理の場合はそうはいかないだろう。

 

京料理から学ぶ減塩テクニック

 次の塩分を減らすワザは、京の料亭などで使われているという水塩のワザ。これは食塩水をスプレーなどで吹き付けるというワザで、これによって振り塩よりもさらに微妙で繊細な塩味をつけるのだという。これは料理などにも使用できるワザとのこと。

 ここで突然にある子役の家庭に密着している。先ほどのスタジオパークでの実験に参加した中にEテレ出演中の子役がいたそうだが、彼がかなりの塩好きなので母親がかなり心配しているとのことで、この家庭が減塩に取り組むという話。ここで使ったのは先ほどの水塩の応用で、醤油をスプレー容器に入れたもの。これで吹き付けて使うことで醤油の消費量を大幅に減らせるそうな。そのような取り組みを続けているうちに、その子役自身の意識も変わってきて、減塩食品なんかも気にするようなって、結果として塩分摂取量が半減して目出度し目出度しというオチなんだが、この実験って意味あるの?

 

呉市の減塩の伝道師の取り組み

 最後は呉市で減塩の伝道師として市民の減塩に取り組んでいる女医の紹介。彼女が最初に行っているのは塩分の見える化。呉で検尿検査をすると、塩分摂取量の数値も同時に出してくれるとのこと。これで塩分摂取量を意識するようになる。さらには先ほどの醤油スプレーの容器を販売したり、町の飲食店などでも減塩メニューの開発に協力してもらったりなど、まさに町を挙げての意識改革に取り組んでいるとか。この効果があって、呉市では塩分摂取量の平均が全国平均よりも1グラム以上少ないとのこと。

 

 以上、減塩のためのテクニック紹介とのことだが、納得いく話もあれば、どうにも中途半端な話や、今ひとつ意味不明の話なんかもあって、どうにも番組の構成が甘いというか、脈絡がないというか、一貫性が弱いという印象を受ける回でもあった。情報の内容自体は悪くはないのですが、どうも構成に問題を感じることが最近多いです。この番組。

 

忙しい方のための今回の要点

・塩分摂取量の国際的な目安は5g/日であるが、大抵の日本人はそれを大きく越えてしまっている。
・イギリスでは食品の塩分含有量が一目で分かるように表示を変更。国民の塩分摂取量を1.4g減らしたところ、心筋梗塞や脳卒中での死亡率が4割減少した。
・納豆のネバネバ成分を加えることで減塩しても味が薄くならない効果なども開発されている。
・またネイチャーに掲載された論文によると、塩を振る行為は単なる習慣であって、振った気になっていると実際にはかかっていなくても味は変化しないとか(ホンマかいな?)
・京料理の水塩のテクニックを使用し、醤油をスプレーで吹き付けるという方法が、塩分減少には効果がある。
・とにかく塩分の摂取量を意識して、塩分に対する意識を変えることが一番大事。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・何か番組の構成が?なんですよね。最近はこの番組について構成の雑さが目につくことが多いです。一体何が番組の一番のポイントかが分かりにくいし、前後の脈絡がなかったり、論理的に無駄な遠回りがあったり、場合によってはあからさまな時間稼ぎがあったりとか、番組の中心となる柱が通っていない印象です。何か感心しないんですよね。もっともあからさまな嘘を流したりとかがないのは一番の救いですが・・・。
・単に情報を脈絡なくバラバラ並べるのでなく、ドラマか何かのような起承転結をつけてくれれば見やすいんですが・・・。

 

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