イギリス南部のドーゼットと東デヴォンの海岸は、155キロに及ぶ絶景の海岸である。
3種の岩盤が入り交じる海岸
この海岸が面白いのは、白い断崖と赤い断崖、さらに灰色の断崖が連続していること。それぞれ岩の種類と出来た年代が違い、白い岩は白亜紀に出来た石灰岩の一種のチョーク。石灰質の殻を持ったプランクトンが堆積して出来た岩、赤い岩は砂岩であり赤い色は含まれる鉄分が酸化してもの、この岩は三畳紀に生成している。そして灰色の岩はこれも石灰岩の一種であるライムストーン。ジュラ紀に生成した非常に固い岩盤層である。つまり古い順から言うと、赤、灰、白となるという。
これらの三種の岩盤がこの海岸で入り乱れている理由だが、まず砂岩の上に海面上昇によって海が出来、ここにアンモナイトの死骸などが降り積もってライムストーンが生成する。その後、地層が傾きながら隆起して表面が浸食された後、再び海面が上昇して今度はそこにプランクトンの死骸が蓄積してチョーク層が生成、そしてもう一度隆起してから浸食されたのが今日の姿であるという。このような時代の異なる地層が連なる光景は世界でも極めて稀であるという。
小石の転がる砂州
またこの海岸には全長28キロという長大な砂州がまるで防波堤のように連なっているところがある。よく見るとこの砂州は砂ではなくて様々な色の小さい丸い岩石が滞積している。波の作用で岩石が削られてこのような小石になって堆積したのだという。この砂州は北海の荒波にさらされているので、1年で最大15センチほど移動するという。
地層が作った丸い湾
また海岸には特徴的な丸い湾がいくつも見られる。これも地層の影響で生成するのだという。海岸から一番古い地層で頑丈なライムストーン、その次がかなりもいろ砂岩で、一番奥がこれも固いチョークとなっている。元々は縦になっていた地層が横倒しに隆起したものだという。ここが川に浸食され、河口のリムストーンの割れ目から海水が入って、次の脆い砂岩層を浸食し、その奥のチョーク層で止まる結果、丸い湾になるのだという。
黄金のアンモナイトと巨大な魚竜
またこの海岸は多くの化石が見つかることからジュラシックコーストとの呼び名もあるという。特にジュラ紀の頁岩と石灰岩が層状になった地層などは、頁岩は濡れると脆くなるために、雨が降った後には頁岩層が崩れてアンモナイトなどの化石が転がっていることがあるのだという。またこの化石はアンモナイトの殻の石灰分が硫化水素と反応して黄鉄鉱に変化しているため、磨くと黄金色に輝くという・・・のだが、黄鉄鉱はFeS2で石灰は水酸化カルシウムや炭酸カルシウムなどなので、鉄はどこから来たんだ? 単純に石灰と硫化水素の反応だと、硫化カルシウムか硫酸カルシウムぐらいしか生成しないと思うのだが?
なおここの地層からは全長7メートルの巨大なイクチオサウルスという魚竜(海棲大型は虫類)の貴重な全身骨格も発掘されており、ロンドン自然史博物館に展示されている。また首長竜・プレシオサウルスなどの化石も発掘されているとか。この海岸は太古の地球の様子を伝えるとして世界遺産に指定された。
なるほど、なかなかに面白い地層でした。ただ説明が数カ所ピンとこなかった場面があり。本文中でも言った黄鉄鉱の件が一番ですが、これ以外でも最初にチョーク層を紹介した時は岩から白い粉がボロボロ出てたから脆い岩なのかと思ってたら、湾の下りでは「固い」と言ってるし。しかも最初は砂岩、ライムストーン、チョークの順で古かったはずが、ここではライムストーン、砂岩、チョークの順になってるし。なんか説明が錯綜して今ひとつ納得しにくかったです。
忙しい方のための今回の要点
・イギリス南部のドーゼットと東デヴォンは3種類の岩盤が入り交じった海岸となっている。
・これらの岩盤はそれぞれ生成年代が違っており、色だけでなく性質も異なる。
・またこの海岸からは多くの化石が発掘されるためにジュラシックコーストとの呼び名もある。
・ここで発見された巨大な魚竜の全身化石がロンドン自然史博物館で展示されている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ここの岩は北海の荒波で浸食されたようですが、北海ってかなり波が荒いですね。恐らく今の風景も100年も経つと全然変わっているでしょう。