教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/9 NHK ガッテン「サケ料理を激ウマに変えるたった1つの法則」

昭和初期の鮭専門書に記されたサケ料理のコツ

 今回はいきなり一冊の本の紹介からはじまる。それは昭和初期に発行されたという「鮭鱒聚苑」という本。背表紙に鮭の皮を使用しているといういかにもマニアックな本であるが、執筆したのは北海道の缶詰工場の社長の松下高氏。鮭の歴史から栄養成分の分析、さらには全国の鮭を使った郷土料理に至るまでありとあらゆる鮭に関する情報を集大成した鮭愛に満ちた著書である。そこにはサケ料理のコツなどまで書かれていて、それが今回の主題。

 この後、全国サーモン協会代表のサーモン中尾こと中尾晋なる「売れない芸人臭」がプンプンする人物が唐突に登場して、そのコツを駆使した焼き鮭を作って「うめぇー」って展開になるのだが、これが後にも何にもつながっていない全くどうでも良い蛇足。取材に行ったものの大した情報もなく、かといってスルーというわけにも行かないので無理矢理出演させたというところか?

 で、件の本に戻るのだが、そのサケ料理のコツとは要約すれば「塩ふらずして鮭にあらず」ということになるらしい。しかし現代は塩鮭は塩分のこととかで嫌われていて、実際に年間消費量も生鮭の方が塩鮭の倍ほどになっている。

 

鮭に塩が必要な理由

 では鮭の本場ではどうなんだろうかというわけで、番組は北海道の中標津町に取材に行っている。そこで紹介された郷土料理のルイベは塩水につけた鮭を凍らせたものだが、これ以外でもやはり鮭は塩をまぶして調理しているようだ。飲食店で取材しているが、まさに塩漬けと言っても良い状態。

 これに対して生鮭を購入している都会の人はこれをどう調理しているかだが、ホイル焼きやムニエルという答えもあるが、実際は一番は塩焼きだという。つまりは鮭に好みの量の塩を振って焼いているのである。しかしこれでは実は駄目なんだというのが今回の胆。

 その理由は鮭の生態に関わっているという。鮭は川で生まれると海に下り、ベーリング海辺りで数年暮らす間に大きく成長する。そしていよいよ生まれ故郷の川に戻ってくる・・・というところで捕まえて我々が頂いているわけであるが、この時の鮭の体内を見ると、腹に大きく溜まった卵などで胃が圧迫されており、鮭は餌を摂れない状態なのであるという。で、鮭は自らが溜め込んだエネルギーを分解して活動しているというわけであるが、この時に副産物として大量に水が出てくるのだという。つまりはこの時の鮭の身はかなり水っぽいわけであり、だからこそこの水を抜くのに大量の塩が必要であるという話になる。

塩を減らして味も良くするガッテン流

 実際に食べ比べると塩鮭に比べると生鮭に塩を振ったものはどうしても味が水っぽくなる。しかし塩っぱいのも嫌という意見は多い、そこで登場するのが毎度お約束のガッテン流。ちょうど塩鮭と生鮭の中間ぐらいになってゲストも大喜びという話だが、これが実はかなり簡単な仕掛けで、塩を振ってすぐに焼くのではなく、一晩おいてから焼くというもの。塩が少ないので水が出にくいのを時間で稼ごうという方法である。このような塩を振って少し置くというのは、プロの和食料理人なんかも駆使している技とか。

 

鮭を使った新食感の絶品料理

 最後には話が変わって新食感のサケ料理が登場。これを開発したのは世界の料理人1000人にも選ばれたというイタリアンの奥田政行シェフ。彼の料理は焼き鮭でもない生でもない独特の食感のサケ料理だという。そのポイントは鮭を43度のお湯に浸すことで、ちょうどタンパク質が固まるか固まらないかという温度なのだとのこと。これで生のような火の入ったようなという状態になるそうだ。

 で、この料理を味わうには奥田シェフの店に行くしかないのだが、番組ではこの原理を使ったもっとお手軽料理を提案している。それは鮭のしゃぶしゃぶ。沸騰したお湯600mlに1.2Lの水を加え(こうすると大体60度になる)、そこに刺身用サーモンに塩を振って10分置いたもの(天然鮭はアニサキスがいることがあるから刺身用を使えとのこと)を15秒くぐらせるのだとか。すると絶品の鮭しゃぶになるとのことだが、指原の「美味しい」を聞いていても仕方がないので、気になる人は自分で試すしかなかろう。

 この後は意味不明の鮭のプロモーション映像が入って番組終了。最後まで残る謎は「全国サーモン協会って何なの?」ということである(笑)。恐らく私の「日本の地域振興と交通について考える市民の会」(私のもう一つのブログである「徒然草枕」のプロフィールをご参照ください)とあまり大差ないのでは?

 生鮭は水っぽいなというのは以前から感じてましたが、鮭の生態までは私は知りませんでした。鮭に塩をするのは単純に保存のためだと思ってました。なお番組では鮭で有名な村上にも取材に行ってましたが、あそこは町中に鮭が干してあるので、町が鮭の匂いがしてます(笑)。また鮭を干して薄切りにしたのも頂きましたが、塩気と旨味が強くて酒のつまみにちょうど良さそうだと感じました。私は酒は全く飲めませんが(笑)。

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村上の店頭に吊された鮭

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そして見学に訪問した武家屋敷の軒先にもなぜか鮭

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マンホールにも鮭

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なぜか赤旗まで鮭

 

忙しい方のための今回の要点

・サケ料理のポイントは塩。鮭は絶食状態で川に戻ってくるために、体内でエネルギーを生成するために水が副成するので、どうしても身が水っぽくなる。これを引き締めるのには塩が必要となる。
・しかし塩鮭は塩っぱくてという人のために提案するガッテン流は、生鮭に塩を振って一晩おく方法。時間をかけることによって鮭の身から水気を抜くことが出来る。
・鮭の新食感を活かした料理法として、鮭のしゃぶしゃぶを提案。60度のお湯に、塩をして10分置いた刺身用の鮭を15秒くぐらせるだけで絶品の料理に。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・我が家ではやはり生鮭は水っぽいことから焼き鮭には塩鮭を使ってますが、塩っぱくてカリカリの塩鮭は苦手と言うことでかなり選んでますね。大体塩分抑えめの甘塩のものを買うことが多いようです。

 

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