教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/6 NHK 歴史秘話ヒストリア「秋だ!戦国の旅へGO」

 今回は秋向けの旅企画・・・と思えますが、実のところは過去のライブラリーに一部新映像を加えた省エネ小ネタ集です。

京都に残る秀吉の痕跡を辿る

 まずは渡邊佐和子が京都を訪問。いきなり秀吉の墓を訪ねておりますが、秀吉が整備した京の町の痕跡を散策という企画。

秀吉が築いた聚楽第

 まず最初は秀吉が京都に作った城郭・聚楽第の跡。いかにも秀吉らしいキンキラキンの豪華絢爛な城郭だったらしい。しかしこれは今では市街に完全に埋もれて全く何も残っておらず、聚楽という地名の痕跡が残るのみ(メゾン・ド・聚楽なんてのも登場)・・・と思えるのだが、実は地形を細かく見ていくと、かつて堀の跡だった低地が残っているのが分かるとのこと。それにしてもこの下り、演出のその他が完全に「ブラタモリ」。これだと地層も見ないといけない(笑)。

 

秀吉の都市計画

 また通りにも秀吉の意図があるのだという。秀吉の時代には京の都は戦乱で荒れ果てていた。秀吉はこの京を再び賑わすことを考え、それまでは大きな区画の道路に面したところに住宅があり、その奥は畑などになっていたのを、区画の中央に道路を通して区画全部を住宅に変更したのだという。この秀吉の都市改革は狙い通りに京の人口を増やして賑わいを取り戻すことにつながったという。

秀吉が築いた京都大仏

 最後に訪問するのはかつて京都の大仏があった跡(現在は公園)。秀吉が建造したこの大仏は奈良の大仏よりも巨大な18メートルというサイズだったという。これより少し前に天正地震という巨大な直下型地震があって人心が動揺したことから、それを鎮めるために建造したのだという。しかし皮肉なことに、大仏がほぼ完成して開眼供養を行う直前に慶長伏見地震が発生。何とこの地震で大仏が倒壊してしまう。その後に秀頼によって再建されたが、それからも何度か焼失を繰り返しては再建され(その度に規模は縮小されたようだが)、最後に焼失する1973年までは一応存在したらしい。

 

武田信玄の温泉と金山

 次は俳優の岩永徹也が山梨の武田信玄ゆかりの地を訪ねるというコーナー。

 武田信玄は多くの温泉を開発していたことが有名だが、これらの温泉は怪我の治療などに使われた。これらの温泉は信玄自身のためだけでなく、家臣達の怪我の治療にも使用されたという。こういう万全の体制を整えることで、武田の家臣達は怪我を恐れずに勇敢に戦ったというわけである。

 さらに信玄と言えば金山。実は金山と温泉は密接な関わりがあり、温泉で湧くお湯と共に金が地下から地上に近いところに移動したと考えられるのだとか。戦国時代には金の製錬技術に革命的な進歩があり、金の産出量が劇的に増加したのだという。信玄はこの金をふんだんに家臣達に配分することでその心もつかんでいた。

 

地元民の総力戦で再建された天空の城

 最後は天空の城として近年人気の備中松山城を歴史タレントの小栗さくら氏が訪問。ただし石垣フェチが石垣で大興奮してギャアギャア騒いでいるだけである(この石垣は真田丸OPに登場)。

f:id:ksagi:20191108231112j:plain

真田丸OPに登場したのはこの石垣

f:id:ksagi:20191108231139j:plain

備中松山城天守

 で、山頂には現存12天守の内で最高所にある天守が残るのだが、この天守は一時期は放置されて倒壊寸前の状態になっていた。それを再建するために立ち上がったのが地元の人たちだった。地元の教師・信野友春が天守の詳細な記録をし出版。そのことが地元の人たちの城への思いをかき立てることになる。そしてついに1939年に城を完全に解体して修復することになる。木材は近くの山から切り出すことが出来たが、問題となったのは1枚2キロもする瓦を2万枚もどうやって麓から運搬するか。これに協力したのが、旧制高梁中学校の生徒達。彼らが瓦を何枚も背負って山道を何往復もしたのだという。この瓦の運搬には女生徒も協力したとのことで、まさに地元の総力戦で天守の再建をなしたというわけである。


 以上、小ネタ集×3。ハッキリ言って、いずれのエピソードも以前の回で見た記憶があります。それにレポート部分を付け加えただけという、NHKらしい「素材の有効活用」でした。ただこの番組、最近は再放送、休みがそれでなくても多いのに、その挙げ句にこのような総集編的なものって、大分製作現場が苦しいんですかね。どうも最近のNHKは私の見るような番組(良質だが地味なのが多い)について、最近はやけに力を抜いて来つつあるのを感じるのですよね。4K8Kとかのどうでも良いようなところに力を入れるのなら、もっちキチンとこういう番組に力を入れて欲しいと思う今日この頃。その挙げ句に国からの変な介入で利権ピックの宣伝番組ばかりやらされたりとか無茶苦茶です。最近「NHKから国民を守る党」なる色物がまかり間違って選挙で当選しちゃいましたけど、私は「NHKを国から守る党」でも作りたいところ。

 

忙しい方のための今回の要点

・京都には今でも秀吉が整備した頃の名残が各地に残っており、番組では聚楽第の堀の跡、京都大仏の跡などを訪問している。
・山梨では武田信玄ゆかりの温泉と金山を訪問。この時代に金の製錬技術に革命があったことで金の産出量は増大。それが信玄の軍資金となった。
・岡山の天空の城・備中松山城は明治以降放置されて倒壊の危機に瀕していた。しかし地元民が立ち上がって再建に協力、今日の姿を取り戻すことにつながった。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・で、次回は網走刑務所。一体どんな話になるのやら。高倉健は出るの?(笑)

 

次回のヒストリア

tv.ksagi.work

前回のヒストリア

tv.ksagi.work