教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/11 NHK ガッテン「野菜ファースト・カット野菜・塩こうじ 食卓の革命児大集結SP」

 食に関しての流行が様々あるが、その中で2011年~2013年に流行したものを掘り下げるというのが今回のテーマ。まあSPと銘打ってはいるが、例によっての「小ネタ集」でもある。

野菜ファーストは単に順番だけではない

 2013年から流行したのが野菜を先に食べるというベジファースト。実践している人も多いという(実は私も試している)。これは食事の時に野菜から食べることで血糖値の上昇が防げてダイエットにもなるという話。

 これを論文にして発表したのが、内科医の梶山静夫氏と京都大学食物栄養学科の今井佐恵子教授。そもそもは梶山医師の元の糖尿病患者が、厳しい食事制限に失敗する例が多かったことから、なるべく負担の少ない方法はないかと編み出した方法だという。

 原理としては野菜の植物繊維が糖の急激な吸収を防止するので最初に野菜を食べるのだが、実は大切なのは順序だけではないという。元々の論文ではこの時に5分かけて食べろと言っているのだとか。早食いだと効果が出ないらしい。まあ原理を考えたら当然の結果ではあるが・・・それじゃ私ダメじゃん。何しろ食事時間がトータルで5分ぐらいだから。

 なお食べる順序の研究は他でも進んでおり、魚などのおかず類を先に食べるとインクレチンなるホルモンが働いて血糖値上昇を防ぐという研究もあるとか。なかなかホットな分野のようである。

 

カット野菜の鮮度を保つための技術

 2011年から急激に増えたのがカット野菜。しかし野菜は普通は刻むと変色したりしおれたりなどの劣化をする。それをどうして防いでいるか。

 番組ではカット野菜を作る機械を開発しているメーカーに取材しているが、開発者の松本光司氏によると切り方が変わったのだという。繊維をなるべく破壊しないことで、野菜の鮮度が落ちないとのだという。

 例えば大根から刺身の妻を作る場合、最初の機械では繊維をぶった切る形になっていたのでどうしても味が落ちていたのだが、和食料理人のかつら剥きにしてから切るといった方法や、包丁を引きながら切るといった技術などを再現するために、かなりの試行錯誤の開発を重ねたらしい(ほとんどプロジェクトXネタレベル)。その結果、今日の野菜を傷めないカット機が製造できたとか。

 なおここでは細かく紹介されていないが、カット野菜を保存するには酸素を遮断できるポリ袋の開発も大きいと思われる。実は素材の世界ではこれも大きいことで、このおかげで食品の保存が劇的に進化しているのですが、これは今回と無関係の話。

 

塩麴を開発した老舗麹屋の二代目

 2012年は塩こうじ。肉を柔らかくするので、ケニアに行ったマラソン選手が愛用しているとか(向こうの肉は滅茶苦茶堅いらしい)。塩こうじに含まれる酵素が肉のたんぱく質を分解することで柔らかくなり旨味も増すのだという。

 塩麹を開発したのは、大分県佐伯市の老舗麹屋の二代目の浅利妙峰氏。年々右肩下がりで売り上げが落ちていく会社をどうにかするために、あらゆる文献を読み漁ってこうじの利用法を研究したのだという。その結果、江戸時代の料理本に塩麹漬なる料理が登場していたことから、試行錯誤で麹に塩を合わせる方法を開発したのだとか。

 そうして開発した塩麹は徐々に広がっていって、やがては大手メーカーも参入、新しい調味料として脚光を浴びることになったとのこと。浅利氏は塩麹を使ったメニューの開発も行っており、また塩麹の登場によって廃業の危機から復活した麹屋などもあるらしい。

 

 以上、小ネタ集ではありますが、いずれも開発した人たちにとってはプロジェクトX並みの悪戦苦闘があったということでして、こういう頑張る人たちが社会を支えていますよという話でもあります。正直なところEDの時には私の頭の中では「ヘッドライト、テールライト」が聞こえてました(笑)。この前のヒストリアと言い、NHKが最近プロジェクトXづいてるのか?

 

忙しい方のための今回の要点

・野菜から先に食べることで血糖値の上昇を防いでダイエットにもなるというベジファースト。ただし効果を上げるには、単に野菜を先に食べるだけでなく、5分はかけて食べるというのが重要である。
・最近のカット野菜の鮮度が保たれているのは、カット機械の進歩によってなるべく細胞を破壊せずにカットできるようになったからである。
・塩麹は酵素の働きで肉のたんぱく質を分解して柔らかくするとともに旨味を増す効果がある。開発したのは傾きかけた麹屋の二代目。これのヒットのおかげで立ち直った麹屋が他にもあるとか。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ゆっくり食べたほうが良いのはよく分かっているのですが、分かっちゃいるけどどうにもならないというのがサラリーマンの昼食です。正直なところよく噛んで食べている時間さえないですから。
・カット野菜を私は使うことはありませんが、カット野菜を使ったサラダは食べてますね。確かに昔に比べると鮮度はかなり良くなってます。流通技術の進歩なんてのもあるのでしょうね。
・で、塩麹は実は私は食べたことがありません。甘酒なら好きなんですが。しかし麹屋って商売は正直初めて知りました。

 

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