教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/12 NHKスペシャル「食の起源 第3集 脂~発見!人類を救う"命のアブラ"~」

 脂も人類を魅了する食材である。体に必需でありながら、摂りすぎると動脈硬化などの病気につながる。動脈硬化などはいかにも現代病に思われるが、実は3000年前のエジプト王族のミイラを調べたところ、多数の動脈硬化が発見されたという。

 

動脈硬化を防ぐ脂がある

 その一方で摂取カロリーの7割を脂から摂っているにもかかわらず、至って健康な人たちもいる。それはアラスカのイヌイット。彼らはクジラやアザラシを狩って、その脂身を食べている。彼らの伝統食はトナカイの干し肉にアザラシの脂をタップリつけて食べるというもの。

 そんなに大量の脂を摂取する生活をしているのに、なぜか彼らが動脈硬化などにならずに健康でいられるのか。それを調べたところ彼らの摂っている脂に特徴があることが分かった。彼らが摂っている脂にはオメガ3と呼ばれる成分が非常に多いことが判明したのだという。

 オメガ3は細胞膜をしなやかにする効果があるので、オメガ3を摂ることで動脈硬化の予防になるのだという。脂の摂取が動脈硬化の原因だと思われていたが、逆に動脈硬化を防ぐ脂があるということである。

 

オメガ3と人類の進化

 人類とオメガ3とのつきあいは太古に遡るという。まだ人類の祖先が海中生活をしていた頃、彼らは体内でオメガ3を合成するDNAを持っていた。しかし彼らが食料として摂取する海藻などにもオメガ3が大量に含まれるため、やがては体内で合成の必要がなくなりその機能を失ってしまった。そして海中ではオメガ3の争奪戦になる。大きくて強い動物は小さい動物を食べることで体内のオメガ3を摂取するようになったのだという。現在でもオメガ3はマグロなど青魚に多く含まれるという(DHAやEPAと言うのがまさにそれらしい)。そのほかにもエゴマ油などがあるという。

 また人類の進化においてオメガ3は重要な役割を果たしている。およそ7万年前の人類の居住跡が見つかっている南アフリカのピナクルポイントでは、人類がウミガメやクジラ、さらには大量の貝を食べていたことが分かっているという。実はこの4000年前ぐらいに大規模な火山活動があり、地球規模での気候変動があって地上の獲物が減少して食糧難になったと考えられるのだという。しかし彼らは食料を海に求めることで豊かな生活を送っていたという。そして大量のオメガ3を摂取した結果として、脳細胞の神経系統などか発達し、この時期の人類は一気に高度な文化を築き上げたことが分かっているのだとか。

 

もう一つの脂・オメガ6

 さらにオメガ3の弟分とも言えるオメガ6という脂もある。これは豚肉や牛肉などに含まれる脂だが、体内の白血球を活性化して免疫力を強化する能力があるので、これも必須の脂である。しかしこれには功罪両面があり、オメガ6が増えすぎると白血球が暴走して血管壁の細胞などを攻撃してしまい、これが動脈硬化の原因となるのだという。これを鎮めるのがオメガ3だと言う。

 オメガ3とオメガ6はそのバランスが大事で、このバランスが1:2を越えると心筋梗塞などの可能性が急増するのだという。実は自然界の動物は自然にこの比を保つような食生活をするようになっているのだが、穀物で育てられた家畜はオメガ6を穀物から大量に摂取するため、体内のオメガ3とオメガ6の比が1:10ぐらいになっているのだとか。日本でも食生活が欧米化している若者などでは体内の比がこのぐらいの数字になっているという。

 最初に登場したエジプトの王族も、ガチョウに無理矢理穀物を食べさせて作ったフォアグラや家畜にした羊の肉などを大量に食べていたので動脈硬化になったのだという。そして現代人の食生活はまさにエジプトの王族そのものなのだとか。

 このような状況を改善するために、ヨーロッパなどでは家畜をあえて牧草で育てるというような試みも成されているという。ただ穀物の飼料を使うよりも効率が悪く、育てるのがなかなか難しいとのこと。

 またオメガ6から合成される物質が人間の脳を興奮させる効果があるということが分かっているとのことで、人はオメガ6の大量摂取の誘惑に抵抗するのは難しいらしい。

 

 少し昔は脂はとにかく駄目と言われていましたが、最近はかなり潮流が代わってきました。それにしても牛肉や豚肉が駄目というのではなく、配合飼料で育てられた家畜の肉が駄目とは、突き詰めると現代文明を否定するところまで行きかねない難しい話です。

 結局は人類は自然の中で生きてきたのだから、なるべく自然な環境で生活するのが一番健康に良いということになってしまうのだが、それが今の世では一番難しい。

 ところでこの番組、当初からTOKIOのグダグダトークが結構鬱陶しいと感じているのですが、次回が放映後にBSで再編集版を放送する模様。多分それは海外マーケットを意識したもっとハードなドキュメンタリー志向の編集をすると推測されるので、そっちの方が番組としては良いかも。

 

忙しい方のための今回の要点

・脂にもいろいろな脂があり、その中でもオメガ3という脂は動脈硬化などを防ぐことが明らかとなってきた。カロリーの70%を脂から摂取するというイヌイットが健康を保てるのはこの効果であるという。
・人類の遠い祖先もオメガ3を体内で合成する機能を有していたが、食料から容易に摂取できるためにその機能は退化した。
・オメガ3の他に豚肉などに含まれるオメガ6という脂もあり、これは免疫力を高める効果があるが、大量に摂りすぎると免疫が暴走して血管壁を傷つけることで動脈硬化につながる。それを鎮めるのがオメガ3である。
・オメガ3とオメガ6の比は1:2が好ましく、自然界の動物は大抵この比を取るのだが、穀物で育てた家畜ではこの比が1:10ぐらいに増加してしまう。

 

忙しくない方のためのどうでも良い点

・結局は「もっと魚を食べましょう」というお魚天国の話になってしまうわけですね。日本人はかつてはこの比はかなり良好だったのではと推測されるのですが、今の日本人は悲惨なものでしょう。欧米化の悪しき側面を導入しちゃったようです。
・それにしてもイヌイットの食生活って、生肉食って脂ばかりを摂っていてと滅茶苦茶なように見えますが、栄養学的に見ると理にかなっているんです。それが少し前には「非欧米的だ=野蛮だ=改善させる必要がある」と欧米が欧米文化絶対優位論に立った無茶な介入をした結果、イヌイットの食生活が滅茶苦茶になって病人がゴロゴロ出たということがありました。今はどうなったんだろう。
・で、クジラの脂もやはり体に良いようです。日本人は昔からクジラの脂を食べてました。クジラの脂を搾って燃やしていた連中にどうこう文句は言われたくないですね。ましてや差別主義的思想に骨まで染まったテロリスト・シーシェパードとかには。

 

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