教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/22 NHK 歴史秘話ヒストリア「我ら忍者 甲賀にあり 忍び込め!ヒトの心」

 どうも創作物などのイメージが先行してしまっている忍者であるが、その実態について忍者の調査のために甲賀に向かった磯田氏(また登場である)と共に紹介とのこと。

 

甲賀忍者・木村奥之助が残した忍者の極意

 まず磯田氏が甲賀で発見したのは忍者の末裔である木村氏。実はここの屋敷で多数の忍者に関する書物が見つかったのだという。

 これらの資料によると木村氏の御先祖は木村奥之助といって尾張藩に仕える甲賀忍者だったらしい。亀山、桑名、名古屋辺りで情報収集に従事していたようである。

 名古屋で彼が残した忍術の極意の書なども発見されている。それによると、忍術の極意その1は歌、茶の湯、囲碁、将棋などで趣味の友達を作るということ。その人脈から情報収集をするのだという。

 その2は四知之伝で、これは相手の本性を曝く方法だとのこと。その中身は望聞問切で望はその人物の普段をよく観察する。聞は周囲の評判を聞く。問は本人と直に話すで、切は賄賂を渡してみたり、美人を近づけたりなどで相手の本当の姿を露わにするのだとか。

 その3は準備は普段からで、事前に配下を各地に潜ませておくなどの事前の手配を行っておくということだそうな。このような様々な方法を駆使して、忍者は目的とする情報を収集していたということである。

 

山伏として全国を回っていた忍者

 なお磯田氏は福量寺を訪問して秘仏の飯綱権現を参拝しているが、忍者のいるところでは飯綱権現が崇拝されていることが多いのだという。飯綱権現は修験道と関わりの深い神であり、つまりは山伏が忍者である場合が多かったということ。全国を調査のために渡り歩くには山伏は都合が良かったのだという。なお修験道というのは元々かなりマッチョな宗教であるから(鳥取投入堂なんて、命がけのアスレチックみたいなものである)、忍術との関連は容易に想像できる。ちなみに義経に武術を教えたという天狗の正体も彼らであろうと言われている。

 

家康の天下取りにも貢献した

 また木村奥之助は「家康に天下を取らせたのは忍者の働きである」ということも記しているという。それによると家康が今川から独立する時、今川家に人質として取られている妻子を取り返すための交換人員として今川一族の子供を堅城の中から誘拐してきたり、関ヶ原の合戦の時に脇坂安治に寝返り工作したり、小早川秀秋の動向を細かく調べたりしたのもすべて忍者だったのだという。家康はこれらの忍者を巧みに使いこなすことで天下を取ったのである。

 木村奥之助が仕えたのは尾張藩2代藩主の光友に仕えたが、将軍家綱に子がなく後継争いの動向が激しくなってきた時、情報調査のための忍びの組を作ることを命じられ、甲賀から選りすぐりの5人のスペシャリストを選んで編成したらしい。そのメンバーは武術に秀でた物から、薬草の専門家、火薬の専門家、情報収集の専門家などがいたようで、まさにAチームである。

 

しかし太平の世で存在を忘れられる

 ただ太平の世になるにつれて忍びの必要性も薄まり、彼らの任務は本来の情報収集でなく、火消しだとか要人警護などのまさに「お庭番」となっていった。木村奥之助も「今の世では忍者を不可欠のものと考えていない者がほとんど」と語っていたようで、何かの記憶を残したいという思いが、若者に対してこのように忍者について語って記録が残るということにつながったのだろうという。

 その後、世間にその存在が忘れられていく一方で、創作界での忍者はドンドンと特異な存在になっていく。なお本当の忍者が再び活躍したのは幕末の動乱の中だったという。


 まあ結局は動乱の世でないと必要性のない職業と言うことです。なお忍者は創作界でドンドンとイメージが拡張し、蝦蟇に乗ったり果ては現代では変身ヒーローにまでなってます(創作忍者の最たる存在が児雷也ですが、実はメタルヒーローシリーズに「世界忍者戦ジライヤ」って作品があったんですが・・・知らない人が大半ですよね(笑))。ただ実態の忍者は情報部員というところだったようです・・・が、この情報部員という言葉も007などでかなりイメージが拡張されているようです。実際はCIAの仕事なんかも大半は地味な仕事だと言います。さらに日本版CIAなどと言われている内閣情報調査室(内調)に至っては、公開資料から情報を集めて報告書を上げるだけのまさに事務仕事だとのこと。

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児雷也

 

忙しい方のための今回の要点

・甲賀で忍者であった木村奥之助が忍術について語った書が残っている。
・それによると、趣味のつながりなどで友人を作って情報収集をしたり、相手の本心を見抜いたりなどの方法が解説されているという。
・多くの忍者は山伏などとして各地を回っていたとのこと。
・また忍者の働きが家康の天下取りに貢献したと言うことが自負を持って語られている。
・しかし太平の世がくるにつれて忍者の必要性はなくなり、木村奥之助もやがて忍術も不要の物とされることを感じていたようである。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・何やら唐突に磯田氏が登場しているのですが、番組の本筋自体は磯田氏と無関係に進んでますね。一体何のためにわざわざ登場したんだ? そう言えば、最近あちこちの番組で磯田氏の顔を見るようになったな。今は磯田氏か千田氏抜きでは歴史番組は作れなくなりつつあるようだ(笑)。

 

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