教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/1 NHK 歴史秘話ヒストリア「謎の茶碗は なにを語る」

4つ目の曜変天目茶碗発見!?

 世界に3つしかなく、いずれも国宝であると言う曜変天目。天目茶碗の最高峰とも言われている茶碗であるが、今回その4つめかもしれない茶碗が見つかったという。

 これを発表したのは大阪市立東洋陶磁美術館の出川哲朗館長。どうやら海外で発見されたものらしい(その詳細はなぜか番組では省いてある)。日本に茶碗が運ばれてから徹底的な科学的分析が行われることとなった。

 出川氏は質感その他から曜変天目である可能性が高いと考えているが、学芸課長代理の小林仁氏は断定はできないとやや慎重な姿勢。なお私が映像を通して一見した印象は「曜変天目である可能性がかなり高いが、日本に現存する3品ほどの名品ではない」というもの。私も画面を通して見た質感や光沢が曜変天目のものと感じたが、ただ模様などが全体的に地味なので器としての評価は落ちると感じた。

 

曜変天目とは

 さて曜変天目であるが、これは宋代(960~1279)に中国の建窯で焼かれたものとされている。実際にこの時代に都のあった杭州で曜変天目の破片が見つかったということがあったという。出川氏は早速調査に向かい、その茶碗は曜変天目で間違いないと判断したのだが、後は中国側で調査するので日本には調査させないと言うことで、それ以上の科学調査などは禁じられたとのことで、かなり生臭い。

 そこで今度の茶碗は科学調査がなされたのだが、曜変天目の特徴である構造色(モルフォチョウなどに見られる色彩)は確認された。ただしそれでも小林氏は慎重。曜変天目と認められるには宋代に作られたということと、建窯産であることが確認されないといけないとのこと。

 

年代調査の結果は

 そこでまず茶碗の年代調査に取り組んだ。茶碗が入っていた箱の花押などから箱自体は19世紀初頭ぐらいまでは遡るということで、現代に作られたものではないということになる。また茶碗を包んでいたと思われる布からは江戸初期か安土桃山ぐらいと推測されるという。また箱を包んでいた布の調査からは、徳川家に何らかのゆかりがあった可能性を指摘している。

 なお曜変天目が日本にしかない理由として、宋の時代から元の時代にかけてお茶の飲み方が変わったことによるとのこと。それまでの粉末のお茶を大きいお椀に入れて拡販して飲む飲み方から、茶葉を煮立てたりお湯をかけてくみ出すという飲み方に変わったらしい。そのために中国から大量に茶碗が日本に輸出されることになったのだとか。

 

信長も持っていた曜変天目

 なお曜変天目は信長のコレクションの中にも含まれており、本能寺の変で失われたとされている。ただ本能寺は全焼したというわけではないので、何らかの形で残っている可能性もとしているが、今回の曜変天目との直接の関わりは特に言ってない。

 なお茶碗の科学分析の結果、土と釉薬が建窯の陶器と非常に似ており、建窯産である可能性が高いとのことで、なおも調査中とのこと。結論はまだ出ていないようだ。

 

 なんとなく中途半端な印象を受ける内容だが、多分曜変天目で確定となれば、その時にはNHKスペシャルなどで放送されると思う。それにしても今回は結果が中途半端なのと、基本的に内容が少ないからかなり膨らませて番組を作っていたのを感じる。実際、茶碗に直接的に関係のある話だけにまとめたら、夜のニュースの2分かそこらの枠で収まってしまいそうな内容だから。

 今回の茶碗が曜変天目と言うことになったら扱いはどうなるんだろう? どこの所有かということを明らかにしてなかったが、外国のものだとしたらそこに帰ることになるだろう。日本国内のものならまあ国宝か重要文化財にはなるだろう。もっとも私が見た印象としては、現存の曜変天目と比較した場合に明らかに見劣りがあるように感じたが。

 

忙しい方のための今回の要点

・曜変天目は現在世界に3つしかないが、4つ目の曜変天目の可能性のある茶碗が発見された。
・精密な分析によると曜変天目の条件である構造色は確認されているが、まだ断定はできない。曜変天目の断定には建窯産であることと宋代のものであることが確認される必要がある。
・箱などの調査の結果は、少なくとも現代の模造品である可能性はなさそうである。また徳川家にゆかりのある可能性もある。
・科学分析の結果、建窯の陶器の破片と土や釉薬に含まれる成分が非常に近く、建窯産である可能性は高いと考えられている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・4つ目の曜変天目といえば、お宝鑑定団のドタバタがありましたね。あの茶碗は私も一目見て「こんなものが曜変天目のわけがない」と感じましたが、結局はその後に有耶無耶になっちゃいましたね。あの時に番組の鑑定に対して激怒していた曜変天目の研究家で陶芸家の長江氏の展覧会に行ったことがありますが、彼はかなり熱心に曜変天目を研究していることが覗えました。今回の茶碗、長江氏なんかはどう感じてるんですかね。

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