コロナの流行で問題となっているのがマスクや防護服などの医療用具の不足。それを解決するために異業種参入などで多くの企業が動き始めている。
不足が問題になっている医療用ガウン。これをゴミ袋を使用して製造していたのが仕事のなくなった給食センター。近くの病院で医療用ガウンの代わりに使用している。
医療用ガウンの製造に乗り出した縫製会社
全国的な医療用防護服の不足に対して名乗りを上げた企業の一つがヴァレイの谷英希氏。6月末までに10万枚の医療用ガウンの生産を目指すとした。ヴァレイは雑居ビルの社員8人の小さな会社だが、全国にフリーランスの職人のネットワークを有しているのだという。ヴァレイで生地の裁断を行い、それを全国の縫製職人に送って縫製してもらってからヴァレイで検品して納入するシステムだという。これまでその方法で小ロットのおしゃれ着などの生産を手がけてきた。
谷氏の実家は代々縫製業を営んでいたが、海外に仕事が移管されて衰退していくのを目の当たりにして、何とかしたいと始めた事業だという。ただし10万枚の医療ガウンを縫製するとなったら何かも問題も多い。まずは縫い手の不足。これについてはANAからの応援が得られた(例のCAに医療用ガウンを縫わせると言う話)。しかし問題になったのは材料の不足。本来は安価なポリプロピレンを使用するのだが、それが確保できずに高価なナイロンをしようしたのだが、それさえも不足しているという。それを解決したのがユニチカ。コットンの不織布にポリエチレンを貼り合わせることで医療用のシート材として使用できる生地を製造したという。この材料をヴァレイで裁断して、各地の職人に送られることとなった。さらに谷氏は中国からの技術留学生などにも縫い手として仕事を依頼している。
クリアファイルを利用した医療用フェイスシールド
不足しているのは医療用フェイスシールドも。これについてはトヨタ自動車、ヤマハ発動機、日立製作所、さらにはバンダイまで製造に名乗り出たという。そんな中で独自色を放っているのが大阪大学の中島清一特任教授。彼はクリアファイルをフェイスシールドとして使うためのフレームの設計図をネットで公開しており、3Dプリンタなどを使用してこれを製造できるようにしている。彼はさらに東大阪の町工場と連携してこれらのフレームを大量生産することにした。金型費用や流通費用などをクラウドファンディングが集め、4社の町工場に製造を依頼。それぞれの町工場ではプライドを懸けてフレームの量産に取り組んでいる。このフレームにはクリアファイルを取り付けることが出来、するとフェイスシールドに使える・・・とのことなのだが、そのクリアファイルは十分にあるんだろうかということが気になった。元々病院などはクリアファイルは大量に使用しているだろうが、古くて傷が入ったものなら視界が曇って使えないだろうし。
以上、まさにオールジャパンでの取り組みについて。やっぱりこういう時でも活躍するのは日本の町工場。日本の製造業の底力はそういう町工場の強さに由来しているのですが、最近のアベノミクスのインチキ経済政策と、このコロナショックでそういう町工場が青色吐息なのが気になるところ。
そう言えば人気取りで雨合羽を集めた市長がいて、それをまるで美談のようにテレビで宣伝してましたが、実際には雨合羽は医療用ガウン代わりに使うには問題がありすぎる上に、状態の悪いものなんかも大量に送られてきて、逆に役所や病院業務を滞らせることになっているとか。それを批判されたら「ないよりマシだろう」とヤクザのように吠えたそうだが、とにかくこの非常時でまで人気取りや利権のことしか考えないトップは有害無益である。危機に際してこそリーダーの真の資質というのが問われるのだが、いざ危機が来ると日本にはまともなリーダーはほとんどいなかったということが判明したというお寒い話(何しろ総理自身が、この後に及んで自分の利権が第一なんだから)。
忙しい方のための今回の要点
・不足する医療用ガウンの製造に名乗り出た企業ヴァレイでは、全国のフリーの縫製職人のネットワークで6月末までに10万枚の製造を目指している。
・ガウンの材料については、ポリプロピレンやナイロンが不足しているため、ユニチカがコットンの不織布とポリエチレンを張り合わした新生地を開発した。
・大阪大学の中島清一特任教授はクリアファイルをフェイスシールドに使うためのフレームの図面をネットで公開。さらには町工場に協力してもらって大量生産体制に入っている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・こういう危機に対して迅速な対応が出来るかどうかと言うのがトップの器量なんですが、やっぱり日本は政府よりも民間の方が人材がいるようですね。それも大手企業の経営層なんかは全く駄目で、中小企業なんかの方が人材が豊富。日本では偉くなればなるほど人材としては劣化すると言われているが、それが顕著に出ている。
次回のガイアの夜明け
前回のガイアの夜明け