教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"コロナ不況で相次いで倒産する企業のリアルな現場に密着" (7/7 テレ東系 ガイアの夜明け「緊急取材!"コロナ破たん"の真相」から)

地域の足だったバス会社が経営破綻 

 埼玉で市民の足となっているバス会社が経営破綻した。その会社は「けんちゃんバス」を運営する丸建自動車。同社は埼玉県内中心に路線バスや観光バスを運行していた従業員60人ほどの会社である。地元の要請に応えて採算ギリギリの路線を運行していた。しかしその会社をコロナショックが直撃した。コロナで運行本数は3割減少し、ここ4ヶ月の売り上げは前年よりも5000万円減少した。この会社にとっては致命的な数字である。社長は国や県を駆け回って支援を求めたが回答は得られなかったという。そこでやむなく5月15日「民事再生」の申請をしたという。市民からの「バスを止めないで欲しい」という要望に、社長は自らバス存続を求める署名を集めている。

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けんちゃんバス

maru-ken.co.jp

 

倒産情報を調査している帝国データバンク

 東京の都内では破綻した会社を調査する女性の姿が。彼女は帝国データバンクの調査員だという。帝国データバンクは民間の信用調査を行っている。倒産した企業があればその経緯を調査する。彼女が調査したのは倒産した化粧品会社。社長によると全国の美容室にシャンプーなどを販売して売り上げは4億円ほどあったという。美容室の休業などで売り上げが減少したところに韓国から1300万円の注文のキャンセルがあってそれがトドメとなったという。「倒産はコロナのせいでなくて、自分の経営のせい」と言っている社長も、そのキャンセルの件になるとどうしても押さえきれない怒気が滲んでいた。20人の社員を解雇し、5月20日に破産手続きを開始したという。この生々しい話は上司に伝えられ、ネットでの倒産のニュースには韓国からのキャンセルが致命傷になったことが記された。帝国データバンクの調査によると、今年のコロナ関連倒産は1万件を超える見通しだという。

 高めで推移していた今年の倒産件数は実は5月に大幅に減少している。しかしこれは倒産が減ったのではなく、裁判所などもステイホームに入ったことで手続きが滞留してしまっているためだという。2020年6月の倒産件数は飲食店が90件、ホテル・旅館などが17件、洋服関連が31件などとコロナ影響をまともに受けた業界が並んでいる。このまま経営が好転しないとさらに倒産は相次ぐと予想されいる。

 帝国データバンクの調査・情報部門には1700人ものスタッフがいる。これらのスタッフが民間企業の信用調査を行ってその情報を提供している。内部の会議では危機に瀕している企業の情報などが共有化されている。中には計画倒産で代金を踏み倒す「パクリ屋」と呼ばれる詐欺集団の情報なども含まれている。帝国データバンクでは取引先の情報、地域からの情報(張り紙がなされていたなど)から察知し、必ず現場を見て、経営陣や法的申請に関わった人の話を確認するようにしているという。複数の確認をしないと記事としては出さないというルールになっているという(デマを流したら会社の存続に関わる問題になるだろうから慎重である)。

 

町の中に溢れる厳しい現実

 町のブラジル料理店が閉店しているという情報を聞いて現地確認に来た調査員。シャッターが下ろされて人の気配はなく、裏側に回ると4月7日の緊急事態宣言を受けて営業を自粛するとの張り紙がされていた。しかしビルのオーナーに聞いても連絡はないという。その後の調査で、この店は事業を停止して5月29日に破産手続きの開始が決定されたことがわかったという。このように休業が長引いたことで経営が成り立たなくなり、再開できないまま倒産というパターンも多いという。帝国データバンクによる企業倒産リスク分析によると売り上げが半減して支援策がない場合、倒産企業は月を追うごとに増加し、1年後には60万件に達するという。特に東京などの都市部は死屍累々である。

 上野公園には支援団体による炊き出しを受け取るための150人ほどの行列が出来ていた。ここに並ぶ若い人も目立つという。番組が取材した男性は、週に4回ほどこういった炊き出しに並んでいるという。食費にかけられるのは週2000円ほどとのこと。こんな生活を3ヶ月も続けているという。彼はかつては建築現場で働き、土木作業の様々な資格も持っており、月収35~40万円を稼いでいたという。しかしコロナで建築工事が中断し、雇い止めになってしまったのだという。このような雇い止めにあった労働者は全国で3万人以上いるという。彼はスマホで仕事を探しているが、金がないので通信会社との契約は解除して、無料のWi-Fiの入る場所を探してネットに接続している。以前はアパートに住んでいたが、今は一泊2250円の簡易宿泊所で生活しているという(私がよく使う新今宮のホテルと同じぐらいだな・・・)。翌日、ハローワークの紹介する日雇いの仕事のためにハローワークの出張所に向かう。そこには既に大勢の行列が出来ている。しかし残念なことに彼は以前に別の仕事で指に怪我をしてギプスを嵌めているために、仕事を断られて戻ってくる。生活の見通しが立たない中で彼は次の仕事を探している。

 

企業買収による希有なハッピーケース

 コロナで会社は倒産し、社員は路頭に迷うという惨憺たるケースが続出する中で、希有なハッピーエンドになったケースもあるという。会社の雇用を守ったままでM&Aを行うという事例があるという。大塚に本店がある「寿し常」、70年続く老舗の寿司店である。都内で37店舗を展開する寿司チェーンだが、経営が行き詰まったのだが事業譲渡に動いたのだという。買収したのは東京一番フーズ。「とらふぐ亭」などの50店舗を展開して売上高46億円で従業員200人の外食チェーンである。社長の坂本大地氏によると、寿し常の従業員200人を全員受け入れ、6月以降は9割の給与を保証、残りの10%は売り上げが戻れば賞与で全額返すというのである。元々同社は1年売り上げがなくても社員200人を守れるだけの金を持っていたのだという(内部留保が大きかったということか)。そこで寿し常を受け入れることを考えたのだという。さらには自社で養殖を手がけているクロマグロやブリなんかを活用できるので経営的にもプラスという判断であったという。同社にとってはコストをかけずに店舗を展開できるチャンスにもなるという経営的判断である。とりあえず雇用が守られることになった従業員か感謝していて士気は上がっており、店には活気が戻ってきている。

 

 政府の無為無策のせいで死屍累々である。今の政権はお友達が絡んでいる案件なら制限無しに公費を投入するが、そうでなかったらびた一文払いたくないという超利己主義政権なので、今後も倒産は相次ぎそうである。しかも今回は豪雨のためにコロナとのダブルパンチになった地域も多く、そういうところが立ち上がるのはかなり困難である。ああ、私の大好きな人吉温泉が・・・。

 実際に飲食店などでは自粛からそのまま廃業につながってしまった店は結構多く、私の知っているところでもいくつか聞いてます。恐らく帝国データバンクでさえ把握していない水面下の倒産は無数にあると思います(さすがに町の飲食店の倒産となったら、彼らとてもれなく把握するのは無理だろう)。結局はそうやって良い店がなくなってきて、余計に購買意欲も失われてしまうということも起こります。生き残れるのはブラック職場で金を抱き込んでいた外食チェーンだけという救いようのない展開。

 上野公園での炊き出しは私もリアルな現場を目にしたことは何回かありますが(ちょうど東京国立博物館の前辺りでやってますからね)、私が目にしたときは年配が大半という印象でした。そこに若者が混じってきているとなれば事態はかなり深刻です。次々と職場が消滅して、雇用の場がなくなってきているということです。ワーキングプアの最後のワークまでもが奪われたという現状が各地であると言います。

 最後のは希有なハッピーケースで、まさにWin-Win。まあ東京一番フーズの方も何も慈善事業なわけでなく、明らかに経営的にメリットがあったから決断できたわけではあるが。また寿し常に買収するだけのブランド価値があったと言うことだろう。これがもっとガタガタになってからでは手遅れ。やはり事業も撤退時というのが判断が難しいところである。

 
忙しい方のための今回の要点

・コロナ倒産が増加しており、帝国データバンクの予測では今年は1万件を突破しそうである。
・民間の信用情報を調査している帝国データバンクでは、倒産した企業の倒産の経緯などを調査している。
・緊急事態宣言の発令を受けての営業自粛から、そのまま経営再開できずに倒産する事例が多い。
・雇い止めにあった者が全国で分かっているだけでも3万人を越えており、上野公園の炊き出しに並ぶ若者も増えている。
・その一方で希有なハッピーケースとしては、破綻した企業がM&Aで買収されて、雇用も守られた例がある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・とにかく想像以上に深刻な事態になっています。何しろこの数ヶ月間収入がゼロだった人がゴロゴロいるわけですから。それにも関わらず政府は野党と国民に突き上げを食らって10万円を渋々配っただけ。特に商売をやっているところでは10万円だと家賃にさえならないというところが多いので、にっちもさっちもいかなくなっている。
・安倍が根本的に勘違いしているのは、お友達の大企業さえ優遇していたら大丈夫だと思っていること。実際は国の根幹を支えているのが大勢の庶民だと言うことを理解していない。ましてや中抜きの電通やら、賃金ピンハネのパソナなんかを優遇しても、労働界には害しかない。この辺りは馬鹿ボンの限界。世の中を知らなすぎる上に想像力がない。庶民を貧しくすればするほど自分や友達が儲かると考えているようだが、実は庶民の貧困化は国の貧困化につながっているということを理解していない。

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