教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"Withコロナ時代は働き方そのものが変わる" (7/21 テレ東系 ガイアの夜明け「コロナで激変…大追跡!新しい働き方」から)

 コロナ時代になってから急速に増えた在宅勤務。それが個人の生活スタイルをも変化させている。派遣社員で雇い止めにあった人なども多く、それは社会問題にもなっている。その一方で新しい働き方を見つけて、新しい世界に進み始める人も。そういう様々な風景を紹介する。

 

在宅勤務をきっかけに地方に引っ越したIT企業社員

 さくらインターネットでは3月から原則在宅勤務となっている。都心のオフィスは完全に空っぽの状態。6月の在宅率は9割だという。オフィスを訪れた社長も1ヶ月ぶりにここに来たとのこと。会議室では男性社員が椅子を持ち帰りのために梱包中。在宅勤務のために椅子を持ち帰っても良いことになっているという。

 女子社員の一人は在宅勤務を機会にボーイフレンド共に駒ヶ根に移住した。家賃11万円は折半。かつては都心の家賃7万7千円の狭いマンションで暮らしていたのだが、今は駒ヶ根の自然タップリの環境で生活している。通勤から解放されたことで住む場所を選ぶ必要がなくなったのである。通勤時間がないので朝をゆっくり読書をしてから9時になると業務開始。元々自然が好きだったという彼女は、休みになると周辺を散策。今まで日々仕事に追われていたのが、思いがけないことで理想の働き方を獲得できたという。会社の仲間とはオンラインで会議。他のメンバーも地方へ移住したい考えている者が多いという。実際にここに来て地方への移住希望者は増加しているという。

 一方、都心のオフィスで一人仕事をしていた社長は、既に年間数億の賃料を払って複数のオフィスを構えていることが馬鹿らしくなっていた。実は彼自身もダイビングを楽しむために沖縄に住んでいるとか。

 

飲食店に就職した男性がIT企業で働く

 コロナで働き方が大きく変わった男性もいる。彼はIT企業の採用面接を受けているがどうも様子がおかしい。実は彼は元々飲食店への就職が決まっていたのだが、このコロナショックでいきなり入社が延期になってしまったのだという。そこでその間にIT会社の面接を受けていた。彼がこういうことをやっているのは、彼が就職が決まっていたスパイスワークスでは、緊急事態宣言後に店舗を休業したことによりスタッフ約450人を自宅待機にしたのだという。しかし社長はスタッフを切ってしまったら、再開の時に店舗の雰囲気自体まで変わってしまうと雇用は死守したい考え。そこで彼が目をつけたのがロンデルが手がける人材シェアサービスで、仕事のない飲食店の従業員を人手不足のIT企業や物流企業などに紹介し、期間限定で契約社員として働いてもらうというシステムである。期間が終われば元の勤め先に戻るか、派遣先で正社員として入社するかの二者択一となるという。ロンデルには雇用を守りたい飲食店から依頼が殺到しているという。先ほどの男性はそのコミュニケーション力が買われて見事に採用決定。早速採用先のITベンチャー企業で飲食店のネットサービス支援の仕事に。そのコミュニケーション力を活かして店主からその店のアピールポイントを聞き出し、それをネットで紹介する記事などを作成している。

 

オンライン授業に挑むフリーインストラクター

 フリーのヨガインストラクターの女性。今までスポーツジムや企業と契約して個人やグループ向けにヨガのレッスンの仕事をしていた。しかしコロナの影響で彼女の仕事はすべて消えた。このままでは生活が出来ないと言うことで彼女が挑戦したのはオンラインでのヨガ教室。このようなオンライン教室を仲介しているMOSHでは登録者数2月末5000人が6月末には1万人に増加しているという。講師希望者はプロフィールやアピールポイントを書いて生徒を募集、MOSHはその仲介と決済などを手がけている。

 授業を想定して予行演習をやってみる彼女だが、実際に録画を見てみると身体が切れて肝心の所が見えなかったり、授業の組み立て方に苦労したりなどややいつもとは勝手が違う。結局は初めての授業は彼女はスタジオを借りて万全の体制で臨む。生徒は11人。授業料はヨガ教室は競争率が高いことと、初めてということで安めの1500円に設定した。万全の準備で実際に授業を開始したら中学校時代の恩師が生徒だったりなどの思いがけないことも。またアメリカにいる高校生の同級生など懐かしい面々もレッスンに参加してくれた。普段の対面のレッスンとは違った面白さも感じた彼女だった。この日の収入は手数料やスタジオ使用料などを除いて1万2050円。彼女にとっては久しぶりの収入である。

 

 否応なく働き方の変更を迫られた人も多いのだが、在宅勤務に関しては可能な業種と不可能な業種に分かれるのがツラいところ。IT企業などはいち早く在宅勤務に切り替え、もう既にこれを常態にしてオフィスの廃止を検討するところも出ているのに対し、メーカーなど現場を抱える企業では在宅勤務のやりようがなくて困っている。私の勤め先も緊急事態宣言を受けて急遽在宅勤務を取り入れたものの、結局は本社の一部の管理業務など以外はことごとくまともに仕事にならず、実質的に社員を自宅待機にしてしまったのと同じになり、緊急事態宣言解除と共にさっさと在宅勤務を廃止した。こういう会社は結構多いと思われる。

 なお在宅勤務のメリットばかりが強調されるが、気をつけないといけないのが勤務管理。特に社員がサボるということよりも、逆に会社側が社員に過剰勤務を要求する事例の方が日本では多い。要は社員に過剰なノルマを課してそれをクリアすることを要求すれば、経営者にとっての夢の「手当なしの24時間労働」を社員に強制することが出来るからである。在宅勤務が増えてきたら、いずれはこのブラック面が浮上してくると思われる。そこにどういう歯止めを作るかが難題。経団連の宣伝番組でもあるこの番組では、恐らくそんな面には触れないでしょうけど。

 また飲食店勤務者をIT企業にというのも、それに対応できる人材なら良いが、そんな人材ばかりではないだろう。番組登場の男性は明らかにかなり能力の高い人物であり、だからこそIT企業の方も彼を雇ったし、彼の就職先の飲食店も彼を手放したくなかったんだろうことが推測できる。このような能力の高い人物はどうにでもなるが、例えば厨房一筋で黙々と料理を作ってきた人なんかは他の仕事への対応は難しいだろう。よく労働者のシフトとか口では簡単に言うのだが、いくら介護関係の人手が不足と言っても、昨日まで工場のラインで働いていた人がいきなりそんな仕事に転職できないのと同じで、人の対応能力というのには限界がある。

 最後のオンライン授業に関しては、フリーの立場の労働者の厳しさを語る一面でもある。フリーの労働者は保証がないために、社会情勢の変化ですぐに職にあぶれる不安というのは常につきまとう。しかも国の施策もフリーの労働者は対象から漏れる場合が多く、今回の休業補償の件でも政府は当初、「フリーの労働者はどうするんだ?」と言われた時、フリーの労働者→フリーター→ニートと連想したようで、無職の者は関係ないというトンチンカンな返答をしたという話まである始末。結局はフリーの労働者は世の中がどうなっても自らの才覚で生き抜くしかないようです。その才覚のない者は、極力寄らば大樹が一番無難ですが、今はその大樹だと思っていた組織が実は幹が腐ってスカスカだったという話も多いんで困ったもんなんですが。

 

忙しい方のための今回の要点

・コロナ時代になって、IT企業などでは通勤を廃して在宅勤務に切り替えるところが増えている。
・通勤のなくなった社員は東京に住む必要がなくなり、地方に引っ越す例なども多い。
・また社員を自宅待機にせざるを得なくなった飲食店などの従業員を、期間限定でIT企業などの人手不足の業界に紹介するサービスもある。派遣社員として働いて、期間満了後は元の勤め先に戻るか、派遣先の企業に正社員として入社するかを選択できる。
・フリーのインストラクターなどコロナで仕事をなくした人々がオンライン授業をするためのシステムを提供しているのがMOSH。講師と生徒の仲介や決済処理を行っている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回の内容を見ていてつくづく思いましたが、やはり何か身を助ける一芸を持っている人は強いです。とにかく能力の高い者は世の中がどうなって大抵生きていける。しかし普通の会社員やっていると、ドンドンとその能力が摩滅していく社会なんですよね。日本は。私なんかも本業がどうにかなったら、特に何かの技能なんてないので、早速路頭に迷うことになってしまう。だけど大抵の社会人ってそんな人が多いのでは?

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