教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"技術開発で猛暑の夏を涼しく過ごす" (8/4 テレ東系 ガイアの夜明け「新技術で猛暑を冷やせ!」から)

 既に猛暑で茹だっているが、この夏は特に三密防止で屋内の冷房の効きが悪いために大変である。そんな中、この猛暑をしのぐための技術開発をしているメーカーを紹介。

 

マイクロミストで雲を作る

 まず最初に登場するのはマイクロミストを作るためのノズルを開発している、その名も「霧のいけうち」。従業員600人で年商57億という産業用ノズルの国内トップメーカーである。ここのノズルで吹き出した水滴は、マイクロミストであるので手に着くとすぐに蒸発するので濡れることがない。そしてその時に気化熱で身体が冷えるという仕掛けである。今年は密防止で開放空間を冷やす需要が増えていることから、売り上げも伸びているという。同社のノズルは水を高速回転させてノズルの小さな穴から吹き出すようになっているので、細かな霧が扇型に広い範囲に広がるのだという。開発担当者はこの霧がうまく出ているかは目視と手触りで判断するとか。最新技術と手工芸の世界である。

 同社のノズルを使用しているのが島根県松江市の日本庭園由志園。同園ではマイクロミストによる霧を庭園の演出と涼しさの両用で使用している。そして今年依頼されたのは、霧をさらに進化させて雲を作りたいというもの。庭園内に雲を漂わせて客を驚かせたい(と同時に涼ませたい)という要望である。

 会社に戻ると早速開発担当者が今まで開発したノズルの中から最適なノズルの選定に入る。霧でなくて雲となると、高い位置で大量のミストを出す必要がある。しかしミストが細かすぎるとすぐに消えて雲にならないし、ミストが大きすぎると手が濡れてしまう。その結果、選択したのはピンジェットノズルという大量のミストを放出することが出来るタイプのノズル。早速依頼主を呼んでテストを実施したが、評価は「50%ぐらい」というもの。理想の雲を目指してまだまだ練り直しが必要。結局は水圧を上げることでより本当の雲のボリューム感を出せるという結論に。

 

溶けにくい上に純度の高い単結晶氷

 コロナの影響で飲食業界は野外に座席を設ける例が増えたが、照りつける野外では飲み物の氷もすぐに溶けてしまう。そんな中、新しい画期的な氷を製造したメーカーが。その氷を製造したのは新潟県の金属加工メーカーのサカタ製作所。従業員160人で年商が43億円の会社で、ソーラーパネルの取り付け金具で一時は絶好調だったという。しかし太陽高電力の買い取り価格低下で売り上げが激減、新たな商品開発を迫られたのだという。

 そして開発したのがこの単結晶氷。まず見た目から通常の氷と違って透明度が異様に高いが、その製造過程は容器の上の方から順次氷の結晶を成長させるのが最大の特徴で、氷が単結晶になっているので気泡や不純物の含まれない純度の高い氷なのだという。これが溶けにくい理由。また結晶の境界には不純物が蓄積しやすいので、そういうものを含まない純粋な氷なのだという。

 そもそもこのような氷造りを始めたのは、亡き社長が病床で創業時代の製品であったカンナへの思いを口にしていたことだったという。カンナ事業は創業数年で成り立たなくなり、その後同社は建築金具に転身したのだが、社長はカンナへの思いが深かったのだという。そこでカンナの技術を活かしてかき氷器を製造、それを社長に見せたところ大いに喜んだのだという。そしてかき氷器からさらに特別な氷を作るというように進化したのだという。

 この氷の真価を確認してもらうため、世界のカクテルコンクールで優勝したこともあるというバーのオーナーの元を訪れてこの単結晶氷を試してもらうことに。オーナーは氷を試してみて、まずかなり溶けにくい上に、ウィスキーの本当の味を引き出すとかなり上々な評価。さらに集まった他のバーテンダー達にも大好評、この氷を採用してもらうことに。そこで同社では大量生産に乗り出している。

 

汚泥の有効活用で保水性ブロックを製造

 日本で一番暑いと言われる多治見市に吸水性のブロックを売り込みに来たのは、石川県の繊維メーカーの小松マテーレ。従業員1274人、年商365億のメーカーである。生地の染色には大量の水を使用するが、その排水を処理するには微生物を使用するが、これが大量の汚泥となって排出される、その量、年間数千トン。これを何とか有効活用するべく、地元九谷焼の粘土と混ぜて焼いたところ、水分の多い汚泥は焼成の際に分解し、結果として多孔性のブロックが焼き上がったのだという。この穴の中に大量の水を保持することが出来る。この素材はグリーンビズと名付けられ、舗装用のブロックにしたのである。

 このブロックを敷き詰めると、1平方メートル辺り15リットルの水を吸収するので、まず大雨対策になる。さらにはその水が蒸発する時に気化熱で回りの温度を下げる効果があるのである。実際にテストしてみると、水を撒いて1時間後にアスファルトの路面とで10度以上の温度差が。実はこのブロック、既に国立競技場に使用させているのだという。

 売り込みを図っていた多治見市からは試験的に使ってみたいとの返答が来て、早速市役所前のバス停でテストをすることに。しかし温度差が生じない。予定外だったのは日が陰ってしまったこと。これではグリーンビズのありがたみが分からない。今日は市長も見学に来るはずだったのに。と思っていたら市長が来る頃には突然に日がさしてきた。市長曰く、自分はスーパー晴れ男なんだとか。予定していた10度以上という温度差は披露できなかったが、4度の温度差に市長はまずまずの感触。多治見市で検証したデータはドンドンとアピールしてくれとのこと(多治見市にとってもPRになる)。

 一方、由志園の雲の製造だが、計画通りの装置で庭園内は雲がモクモク。ここではお客にソーシャルディスタンスを取ってマスクを取って涼んでもらうことにした。お客の反応は極めて上々である。

 

 以上、暑さ対策のメーカーのご紹介。マイクロミストについてはかなり以前から注目されていた技術なのですが、もうここまで実用化されていたんですね。これは私もよく知りませんでした。とにかく開放空間を涼しく出来るというのが一番のメリットです。また水を撒くだけなので環境にも優しいです。難点は夏の猛暑には良いんですが、梅雨時の蒸し暑さには逆効果になることがあること。

 単結晶氷には個人的に非常に興味があります。どんな物質も極限まで不純物を減らすと独特の物性が出るということがあり、この氷なんかも不純物がかなり少ないという点では非常に興味深いです。それと単純に、こいつでかき氷を作ったら美味そう(笑)。

 最後の保水性のブロックは都会のコンクリートジャグルを緩和するのに最適な材料の一つです。とにかく透水性のないアスファルト舗装は都市型洪水の最大の原因ですので、路面舗装が一時的に水を蓄えることが出来たらそれの緩和が期待できます。現在は透水性舗装も研究されていますが、これの難点はすぐに目詰まりすること。このブロックは目詰まりは大丈夫なのでしょうか。

 

忙しい方のための今回の要点

・産業用ノズルメーカーの霧のいけうちはマイクロミストを発生させる装置を販売している。マイクロミストはすぐに蒸発するのでぬらさずに空間の温度を下げることが出来、三密対策で開放空間が増えたことで需要が伸びている。
・同社では島根の由志園の要望に応えて、雲を作る装置を納入、観光客に涼を与えるのに貢献している。
・新潟県の金属加工メーカー・サカタ製作所が製造した単結晶氷は、気泡や不純物が少ないために透明度が高くて溶けにくい。さらには不純物の少なさからウィスキーなどの味も引き立てると注目されている。
・石川県の生地メーカー・小松マテーレが開発したのは保水性のブロック。排水処理で出た汚泥を粘土と混ぜて焼成することで多孔質のブロックを製造することに成功し、この穴に水分を取り込むことで1平方メートル辺り15リットルもの水を吸収できる。
・さらにこの水の気化熱で辺りを冷やすことが出来、炎天下のアスファルトと比較すると、10度以上もの温度差が生じるという。
・現在、日本一暑いと言われる多治見市で実証試験中である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・冷房はかなり電力を食う上に閉鎖空間でしか使用できませんから、こういうアイディアはありでしょう。実際にマイクロミスト発生装置はいろいろな場面で使用されているようですね。
・で、単結晶氷の宇治金時食ってみたいな・・・。

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