教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"都市型淡水水族館の開業までに密着" (8/11 テレ東系 ガイアの夜明け「新たな挑戦…日本初の水族館を作る!」から)

川崎駅前に淡水魚専門の水族館がオープン

 川崎市の駅前のビルの中に新たに開設されることになった水族館がカワスイ。既存の商業ビルの建物内に改修によって新たに水族館を作ろうというのは初めての試み。それだけに制約が多いがそれを逆手にとって個性ある水族館を目指している。番組ではそのオープンまでに密着している。

kawa-sui.com

 館長は日本の水族館の半分には関与しているという水族館界のレジェンド75才の坂野新也氏。設計から運営まですべてを手がけるために、坂野氏は自ら会社を立ち上げ、各地の有名水族館のみならず、レストランなど周辺施設も含めての精鋭スタッフを集めた。そして副館長に抜擢したのが小川泰史氏。千葉の鴨川シーワールドで15年勤務した飼育のスペシャリストで、それに加えてレゴランドジャパンの立ち上げメンバーであるということで抜擢されたという。つまり水族館の現場を知っていて、さらに経営の観点もある人物ということだろう。

 坂野氏がまず向かったのはAmazon館なる怪しげな施設(何も通販をしているわけではありません)。アマゾンでの生物標本などを並べた雑多なこの施設を経営するのは松坂寛氏(73才)。アマゾンに40年通い続けて仮面ライダーアマゾン・・・でなくてアマゾンマンと呼ばれている日本でもトップのアマゾン通。坂野氏は彼にアマゾンのガイドを頼んだのだという。

 

アマゾンの生態系再現のために現地調査に飛ぶ

 アマゾンに飛んだのが副館長の小川泰史氏。カワスイは今までの海水魚が中心の水族館と違い、淡水魚の水族館として独自性を出す。アマゾンを再現する水族館にしようという考えである。

 一行はまずはアマゾン川沿いのイキトスに。ここのフィッシュマーケットを覗くと見たこともない魚がゾロゾロ。しかし川に近づくとプラチックゴミがゴロゴロという現在のアマゾンの現状も分かる。さらに現地のマーケットでは様々な食材をチェック(中にはイモムシのようなものを焼いたものまで)。飲食担当スタッフの山口えりこ氏はこれらの食材をチェック、カワスイのレストランで出すメニューのヒントにしようという考え(さすがにイモムシは出さないだろうが)。

 翌朝、アマゾン川に向かった小川氏はアマゾンのイルカや魚類を視察。想像以上に多様な生態系であることが分かる。さらにシーラカンスにも匹敵するという古代魚タライロンを捕獲したことから、これは日本に空輸することに。小川氏は自ら水に潜って、アマゾンの環境を観察。これらを基にしてアマゾンの生態系そのものを再現しようと考えている。

 日本で演出プランを考えていたのは坂野氏。今回の水族館の最大の制約となるのは重量。既存の建物の中に作るために重量の制限が大きい。例えば沖縄の美ら海水族館の大水槽は7500トンの水を使うのに対し、カワスイは総水量で250トンという制約がある。この大きなハンデの中で演出で魅せる水族館にしないといけない。

 日本に戻ってきた小川氏は、千葉の海岸で自らのイメージ通りの水槽を作るために流木などの素材蒐集をしていた。この方が安上がりであるという。さらには水族館の中では水質のチェックなどが進んでいた。

 

思わぬコロナの影響を受けるがオープンにこぎ着ける

 しかしここでとんでもないトラブルが発生していた。海外から輸入するはずの魚がすべてコロナの影響を受け、輸入計画自体が白紙になってしまい(検疫などができないのだと推測される)、予定の1%も搬入されていないという危機的状況に。せっかくアマゾンで捕獲した古代魚タライロンも輸入できなくなってしまったという(シーラカンス並みに巨大魚に育てると言うことを小川氏は目論んでいたようなのだが)。これは小川氏にとっても異常事態だという。やむなく小川氏は大半の魚を国内調達に切り替える(確かに国内でもピラニアとかなら調達できる)。

 小川氏はアマゾンの生態系をそのまま再現することを目指しているので、魚だけでなくアルマジロなどの生物も持ち込んだ(これは水槽を減らすことにも貢献する)。さらにはアマゾンから拾ってきたポリ袋や網などのゴミも、あえてアマゾンの現状を知らせるという意味で展示内に設置する。

 一方の飲食部門は収益増加のための鍵の一つとして進められていた。山口氏がアマゾンのイメージを利用したカクテルなどを提案、準備が順調に進行しいた。

 この後、松下奈緒がオープン前のカワスイを実際に回って紹介ということをしていたが、魚の説明をQRコードにして看板を出さないなどいわゆる「若向け」の水族館であることが分かる。またやはり水族館の割には水槽が少ないという印象。

 しかしここにきてさらに大事件が。飲食部門のスタッフが発熱、コロナの可能性があるというのである。ここに来てこれは下手をすると致命傷になりかねない。とりあえずPCR検査の結果待ちということになり、陰性だったという結果が出たが、念のためにレストランのオープンは二週間遅らせることになったという。

 7月17日、水族館のオープン。大勢のお客が長蛇の列、開館時間を繰り上げることにしたりでてんやわんや、しかしお客は満足して帰って行く(とこの辺りは完全に宣伝)

 

 まあ、今時の水族館だなという印象を受けた。私が見た中ではすみだ水族館と雰囲気が似ている。いわゆるお洒落な都会型水族館である。個人的には水族館のイメージと言えば、神戸の改装前の須磨水族館のイメージが頭に焼き付いており、観客のあまりいない閑散とした施設で巨大な亀やデンキウナギが泳いでいるというものなのだが、そういう水族館のイメージは古すぎるわけだ(笑)。今は水族館も動物園と同様で、いかに見せるかの演出にこだわる時代になっている。

 それにしても淡水魚の水族館というのは確かに国内では非常に珍しい。私が今まで訪れた中では千歳水族館ぐらいだが、あそこは淡水魚水族館と言うよりも、千歳川を遡上する鮭をそのまま見せるという施設のニュアンスが強かった。ただし普通の水族館がその一部としてアマゾンの生態系を展示するというのは、そう極端に珍しいわけではない。

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川の中が直接観察できる千歳水族館

 カワスイは川崎の駅前という非常に立地の良いところなので、それなりの集客は望めるだろう。私もコロナが終息したら川崎にはミューザでのコンサートに出向くこともあろうが、いつも川崎ではコンサート開催までの時間つぶしに困ることが多かったので、こういう施設が出来るのはありがたいこと。遠からずいずれ訪問することがあるだろう。その時には記事は私のもう一つのブログの「徒然草枕」の方にアップすることになると思います(笑)。

 

忙しい方のための今回の要点

・川崎駅前の商業ビル内にオープンした都市型水族館カワスイに密着。
・カワスイを手がけたのは水族館のレジェンド坂野新也氏。
・副館長の小川泰史氏は魚調達のためにアマゾンに飛び、そこでアマゾンの現状を伝えつつその生態系を復元する展示を企画する。
・しかしコロナの影響で海外から輸入する予定だった魚がことごとく輸入ストップ。急遽国内調達に切り替えることに。
・なおカワスイは既存のビル内ということで重量の制約が大きくて巨大水槽は設置できないため、アマゾンの動物たちと併せて展示することにしている。
・7月17日にオープン、来客者達の反応は上々。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・カワスイのHPを覗きに行ったところ「料金高っ!」というのが本音ですね。都会型水族館でコスト高だから仕方ないんでしょうが。ミューザでのコンサートの度に立ち寄ると言うわけにはいかなそうです(笑)。
・だけど民間がこのような施設を運営する場合は仕方ないんでしょうね。有名な白浜のアドベンチャーワールドなんかでも、入場料は馬鹿高ですから。公営の施設のように入場料数百円では運営資金はとても出ないでしょう。民間の場合はそれに加えて、レストランの売り上げや売店の売り上げなんかも見込んで採算を合わせているはずなので。

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