教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/2 テレ東系 ガイアの夜明け「便利で楽しく安全に!~コロナで変わる小売りの現場~」

高機能カートにAIで人と接触せずに買い物

 コロナ時代になって注目を浴びているスーパーがTRIAL。ここの特徴はカートに無人レジの機能を持たせていること。客はバーコードをチェックしてからカートに商品を入れる。現在いくら買っているかも一目瞭然だし、会計はそのままカートでゲートを通ればカードから引き落とされるので非常にスムーズ。さらにこのコロナ時代には人と接触しないでも良いというのが客に評判で、コロナ以降各スーパーの売り上げが微増の中、TRIALはそれらを越えて売り上げが上昇している。

 トライアルは1984年の創業当初はPOSシステムなどを手がけるIT企業だった。それがそのシステムを活かして1992年に小売業に参入した。元々得意な情報戦略を活用してコストを低減するのが強みになっている。AIカメラを店内に設置して商品棚などをチェック、画像解析で商品の売れ行きなどを監視し、商品補充がスムーズに出来るようにしている。飲料のコーナーにはお茶カメラと呼ばれるカメラがあり、各商品の売り上げが一目瞭然。会議では各飲料メーカーの担当者と共に、どの商品を増やすかの会議を行っている。飲料メーカーとしては自分のメーカーの商品が減らされることもあるが、トータルの売り上げが増えることでパイが大きくなるということで協力している。

 同社ではハイテク店舗は現在は北九州中心の20店舗であるが、これを全国に増やそうと考えている。その最初が千葉市のトライアル長沼店。AI導入の改装を行っている。688台のAIカメラを設置して、レジカート180台も導入した。これでレジの人員を半分に出来るという。

 さらに新たな仕掛けも考えていた。現在は外食を控えることで酒のボトルなどの売り上げが増えている。そこでお酒に合う総菜を開発して、そのレシピを公開しようという考え。材料の売り場の近くにカートが来ると、この材料を使用してのレシピとそれに合うお酒がカートのモニターに映るという仕掛け。しかもQRコードを読むと作り方のビデオまで見られるという仕掛け。新装開店後には興奮気味の常連客が殺到、新しいシステムに興味津々の客が多い。

 なおトライアルではこのシステムを同社だけでなく、同業他社にも紹介しており、実際に導入を決定したスーパーもあるという。この辺り、同社が小売りだけでなくシステムの会社でもあるからこそのビジネスだろう。

 

ハナマルキではリモート対面販売を検討

 コロナでビジネスの仕方を考えていたのがハナマルキ。同社ではマネキンと呼ばれる対面販売が出来ないことで困っていた。同社が現在家庭用販売で力を入れている塩こうじ、これをどうやって客に売り込むか。この商品、塩こうじの液体で肉などに揉み込むと柔らかくなるというのが売り。対面販売をすると売り上げが10倍ぐらいになると言うから、それを封じられているのは同社としてはツラいところである。

     
ハナマルキが売りたいのはこの液体塩こうじ

 そこで同社が取り組んだのはオンライン対面販売。売り場にモニターを置いて、リモートで対面販売をしようという考えである。リモート会議の対面販売版である。

 実際に首都圏のスーパーで試験運用を行ってみた。結果としてはどうしても無視されることが多い。そこでこちらから呼びかけると反応が、捕まえた客には売り込むことが出来たが(ここで実演をしたマネキンさんはかなりの凄腕の模様)、まだまだ改良の余地はありそうである。

 

自動運搬ロボットの開発現場

 非接触と言えば運搬ロボットなども注目されている。ホテルなどでは各部屋に荷物を運ぶデリバーロボットが導入されている。こういう自動ロボットに詳しいのがストロボ社長の下山哲平氏。自動運転技術を紹介する専門サイトも運営している人物。アメリカ・中国などに比べると日本の対応は遅れているようだ。

 下山氏が案内してくれたのはZMPというベンチャー企業。ここでは物流などの自動運転ロボットを開発している。中には人の後を付いていける自動キャリー(既に物流の現場で活躍中)や自動で手すりなどを消毒して回るパトロなどのロボットを開発している。そして開発中の自動宅配ロボットがデリロ。荷物を受け取る人がQRコードをかざせば荷物室の鍵を開けられるようになっていて、50キロまで運搬できる。現在は野外の砂利道などを想定した走行テストを実施中である。早ければ年内にも公道に出た実証実験が始まるという。

www.zmp.co.jp

 

 物流現場なんかは人手不足が問題となっているから自動宅配ロボットは最も期待される分野だろう。ただし公道をロボットがウロウロということが可能かどうかである。実用化にはセキュリティの確保も問題となるだろう。それでなくても最近は荒っぽい外国人犯罪者が増えており、自動販売機なんかは彼らにとっては路上に金庫が放置してあるのと同じ意味らしく、かなり荒っぽい手口での窃盗が多い。そういう連中にかかれば、まさにカモにされかねない。

 自動会計式のカートの場合も問題となるのは万引き対策だろう。どういうセキュリティをかけているのか知らないが、とにかく人の目が減ると万引きが増加するというのは悲しい現実で、実際にエコバックになってから万引きがしやすくなったと常習者は喜んでいるという話まである。今のセルフレジでも、会計をせずに商品を放り込むというのはよくあるようで、結局はセルフレジをやめて以前の方式に戻したところもあるという。その歩留まりがどの程度か。またカートは消耗品でもある(どうしても壊す奴がいる)のでそのコストも問題。まあトライアルは「修羅の国」などと陰口を叩かれる北九州でこのシステムを展開したらしいから、その辺りは問題ないのかもしれないが。

 いずれも非接触ということもありますが、「省力化」につながるというのもキーワードです。省力化することで低コスト化するということ。しかしこれは裏を返すと、スーパーのレジのパートや配送の仕事などがなくなるということであり、またも失業増加につながる可能性があります。こうやって経済の合理性を追求すればするほど、一方で仕事がなくなっていくという矛盾。これの解決も今後の社会の課題のような気もします。失業を減らすと言うだけなら、すべての仕事を人手で行う江戸時代のような社会が一番ですが、それをやるとグローバル経済の時代にはコスト競争で勝てなくて淘汰されてしまう。この辺りは完全に自由主義経済の矛盾です。結局は未だに自由主義経済は社会や自然から収奪すればするほど有利になるってのを解消できてないので。

 

忙しい方のための今回の要点

・スーパートライアルでは無人レジの機能を持たせたカートを導入して、人と接触せずに買い物が出来るようになっている。
・また店内にはAIカメラを設置、商品棚を画像解析して商品のリアルタイムでの売り上げを把握でき、欠品補充をスムーズに出来るようにしている。
・トライアルは元々はPOSシステムを手がけるIT企業から小売業に進出しており、このシステムを同業他社にも紹介している。
・ハナマルキではコロナ時代に合わせて、リモートの対面販売に挑戦している。まだまだ改良の余地はあるが、今後の戦略に取り入れる予定。
・自動化が期待される物流の現場では、自動配送ロボットの導入が注目されている。ベンチャー企業のZMPでは自動配送ロボットを開発、早ければ年内にも公道での実証実験を実施する予定。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ロボット化はコロナ時代になってさらに加速しそうですが、タクシーやバスなんかの自動運転なんかも遠からず実用化されそうです。しかしそうなったら、今度は運転手が失業する。やっぱりどう考えても、コストを追及すればするほど一番のコストである人間がカットされることになるので、人の仕事がなくなっていきます。だから将来は「ロボットを開発する人間と、それをメンテする人間だけがいたらその他の人間は不要。」なんて話まで出てくるぐらい。これからの人間はどうやって食い口をかせげば良いんでしょうかね。

次回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work

前回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work