教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/23 NHK ガッテン「旬到来!今年の梨をはずれナシにするSP技」

梨狩りから始まった大発明

 梨の旬のシーズンを迎え、産地では収穫作業まっ最中とのことであるが、この梨の糖度の高いものを選ぶためのテクニックを紹介するとしている。

 最初は冒頭Tipsだが、梨農園でミニスカートがきっかけで生まれた大発明は何かという問題。答えはレジ袋らしいが、なぜというのがいささか複雑な話。ミニスカート流行の頃と言えばそれにはナイロンストッキングを組み合わせるというのが普通だった。しかしそのナイロンストッキングは当時としてはなかなか高価なのに、これが伝線しやすいという問題があったのはご存じの通り。そして当時の梨狩りはかごを使用していたが、このかごがストッキングに引っかかって伝線が起こるという苦情が相次いだのだという。そこで対策を袋のメーカーに相談したところ、今のレジ袋の前身となるポリエチレン袋が開発されたという。これが後にレジ袋になったとのこと。

 

梨の色で熟し度合いを見分けるのは困難

 では本題であるが、どうやって甘い梨を見分けるかというのが今回のテーマ。まずは見た目で判別しようと言うことで、同じ銘柄の同じぐらいの価格の梨を集めて色による分類というのに挑戦している。そうやって見たところ、大体青っぽい梨と赤っぽい梨に分類されるが、この色は糖度とは全く無関係。実際に梨を10円パンチでゴリゴリしたところ(これは絶対に店頭ではするなとの注釈付き)、表面の皮の下から緑色の皮が出てくるという。梨の皮は2層構造になっているので、表面の色を見ても意味がないらしい・・・なんてことを言えば、「するな」と言っていても10円パンチする馬鹿が出てきそうな・・・という悪い予感がするので、番組は直ちにその必要のない方法を提案する(笑)。

 ここで登場するのが梨農家で収穫作業にに協力しているお嫁さん。梨は収穫時期が限られるので短期勝負なのだという。しかし問題になるのが、どうやって熟した梨を判別するか。ベテランのお義父さんは「透けている」とか「ボーッと電気がついている」という表現で色で判別しているのだが、元々は社会科教師で農家とは無関係で、収穫作業に協力するようになってまだ3年というお嫁さんにはその違いは判別不能。途中で分からなくなって手が止まってしまうという状態。この彼女でも判別できる方法を伝授しようというお話である。

 その方法を伝授したところ、お義父さんのように遠くからパッと見て次々判断するということは不可能までも、梨を手にとって見てみるとと判別できるようなった。農家はともかくとして一般客の場合はこれで十分だろう。さてその方法とは。

 

甘い梨の見分け方と美味しく食べる切り方

 それは「コルク」を見るのだとか。「コルク」と何であるかであるが、表面に見えるツブツブのことだという。これは実際に表面に穴があってコルク層がそれを埋めているらしい。この穴はそもそも呼吸をするためのもので、実が小さいうちはそれで良いが、実が大きく成長すると穴も大きくなって菌などが入ってくる危険があるので、梨はコルクで蓋をするのだという。このコルクは実が熟してくるにつれて役割を終えて段々と目立たなくなってくるので、これが目立たなくなっているものは熟しているサインだという。特にお尻の部分が一番最後に熟するので、お尻を見ると違いが分かりやすいとのこと。

 さらに梨を美味しく食べるのには切り方も大事だという。梨を切る時に大切なのは、芯を大きめに取ること。と言うのは、芯の周辺に見える線のあたりに石細胞と呼ばれる固い細胞が密集しており、これが味を落とすのでこれを完全に除去するためにケチらずに芯を深く切り取ることが重要とのこと。私がつい先日に訪問した鳥取二十世紀梨記念館の館長もザックリと芯を大きめに取るのを「おいしい梨の切り方」として紹介している。

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鳥取二十世紀梨記念館

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世界中の梨が展示されてます

 なお梨には青梨系と赤梨系があるので、先ほどのコルクで見分けるのはコルクが発達している赤梨系(幸水、豊水、私がなしっこ館で試食した新甘泉など)であり、コルクがあまり発達していない青梨系(二十世紀など)では色でそのまま判別すれば良いという。青梨は先ほどの内側の色が表面に出ているので、黄色っぽいものを選べば良いという。これで店頭で10円パンチをする必要はなくなった(笑)。

 

甘くない梨の使用法と日本の梨の原型種

 では甘くない梨をつかんでしまったらどうするかだが、番組では韓国料理のプルコギなどから学ぶ知恵を教えている。梨を丸ごと降ろしてその汁に肉を漬け込むことで酵素の働きで肉が軟らかくなるのだとか。梨は皮ごとおろして梨1個分で肉1キロをつけ込むことが可能で1時間つけ込めばそれだけで肉が軟らかくなるという。梨はクセが少ないので料理を邪魔しないのでお勧めとのこと。なお日本の梨は洋梨と違って違って追熟しないので放置しても無駄。このような使い方がベストだとしている。

 最後は日本に到着した一番古い梨について。神戸大学准教授の片山寛則氏は構内で梨を栽培して研究している第一人者らしいが、彼によるとイワテヤマナシという絶滅危惧種が日本に渡来した古代種らしい。実際にその実をゲストが試食したが、渋くて非常に不味いとのこと。しかし片山氏はこの梨の可能性に非常に期待しているという。それはこの梨は非常に匂いが強い(実際にゲストも「良い匂いがする」と言っている)こと。現在の梨は匂いが弱いのでこのイワテヤマナシを掛け合わせることで味や香りがアップするのでは期待しているのだという。ちなみに梨の渡来の経緯はなしっこ館でも映像で紹介していたな。

 

 つい先週に二十世紀梨記念館を見学してきた直後であるのでなかなか感慨深いものがある。梨の原産地は中国方面らしいが、世界中の各種梨を展示してあり、日本の梨などの品種改良の経過なんかも知ることが出来る。鳥取が現在の梨王国になるには病気の克服などの苦闘の歴史があったことも紹介されている。鳥取には鳥取城を始めとする立派な山城があり、鳥取の駅前にも温泉があるが、二十世紀梨記念館のある倉吉周辺には有名な三朝温泉を始めとして、はわい温泉、東郷温泉などの温泉街があり、さらには「日本で一番危険な国宝」と呼ばれている投入堂など鳥取砂丘以外にも観光名所もあります。この際、鳥取に観光で出向かれてはいかがでしょうか・・・って、なんで私が鳥取の観光大使をしてるんだ(笑)。ちなみにその遠征の詳細は私のもう一つのブログである「徒然草枕」で紹介しているので、そちらをどうぞと最後は自分のブログの宣伝をしておくか(笑)。

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 私も梨は大好きでして、最近は二十世紀よりも幸水や豊水を食べることが多くなっています。以前より取引のある果物屋から今年もそろそろ梨が一箱届く頃。届いたら今年の梨を堪能したいと考えております。今後は気をつけて大胆に芯を落とすことにします。

 

忙しい方のための今回の要点

・梨の皮は二重構造になっているので、表面の色を見ただけで熟し度合いを判断するのは素人には困難である。
・素人の場合は色よりも表面に発達しているコルク(ツブツブのこと)を見る方が確実。熟してくるとこのコルクが目立たなくなるという。またお尻の方が一番最後に熟するので、ここを見るのが一番分かりやすい。
・なおコルクを見るのは赤梨の場合で、コルクが余り発達していない青梨の場合はそのまま表面の色を見て黄色っぽいものを選べば良い。
・なお甘くない梨は放置しても追熟しないので、すり下ろして肉を漬け込むのに使用すれば肉を軟らかくするのでお勧め。
・日本に入った梨の原型種はイワテヤマナシという品種。味は悪いのだが匂いが強いのでこれを掛け合わせることで現在の梨の風味を増すことが期待されている。

忙しくない方のためのどうでもよい点

・二十世紀というのは、たまたまゴミ捨て場に生えていたのが偶然発見されたらしいですが、それがその後の梨の大転機となり、現在のほとんどの品種もこの二十世紀の直系子孫だとのことです。そういう意味ではその名の通り、世紀を代表する大発見だったと言えるのかもしれません。

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