南フランスの高原の奇岩の森
南フランスのコースとセヴェンヌ地方は自然と人の営みによって作られた景観がある。
『世界遺産』10/11(日) コースとセヴェンヌの牧畜が生んだ景観 〜 奇岩の絶景! 南フランスの大峡谷【TBS】
なだらかな高原が続くコース地方にある大峡谷がタルン川峡谷である。深さは600メートルにもなるという。50キロ続く垂直の石灰岩の断崖があり、また奇岩の森モンペリエ・ル・ヴィュー自然公園は様々な形の岩のある絶景である。元々この地は海底の石灰岩が隆起したものであり、海が浅くなると水中のマグネシウムを取り込んで一部がドロマイトになる。これが陸上に出てから雨で浸食、溶けにくいドロマイトだけが残って今日の風景となったという。
牧畜が作り出した風景
高原のコース地方は農耕に不向きな石灰岩の荒れ地であり、昔から羊を飼う牧畜が行われてきた。飼育されているのは搾乳に適したラコール種。この乳からチーズを作る。空から見ると放牧地を囲う石垣の跡が残っているが、そこに謎の円形の池が存在する。これはラボーニュと呼ばれる羊の水飲み場。羊が踏み荒らして埋まらないように石を敷いたのだという。今でも使用されているものは限られているとか。またテーブルのような山頂に世界遺産の村ロックフォール・シュル・スールゾンがある。ここはロックフォールチーズで有名。村の背後の200メートルの崖に洞窟があり、その中でチーズが作られる。作られているのは青カビのブルーチーズ。ここの洞窟しかない固有のカビがポイントなんだが、断崖にある亀裂から湿気を帯びた外気が流れ込むことでこのカビが育っているのだという。
セヴェンヌ地方は太古の地殻変動で生まれた 花崗岩が隆起したロゼール山の山頂の木がないところは伐採で作った羊の放牧地だという。この地域では1000年前から麓の村から山頂に移動する移牧が行われてきた。夏になると麓の村から一週間かけて羊たちは山頂に登る。長い移動に耐える身体の大きなタラスコネーズ種の羊が飼育されている。山の峰には移牧のための道があり、山頂には石で作られた羊飼いの家がある。彼らは夏の間はこの小屋で過ごし、羊たちは山の栄養がタップリの草を食べる。実はこの移牧によって風景が守られている。もし移牧がなければ山頂はすぐに雑草だらけになってしまうとのこと。
この1000年に渡る人と羊の営みがこの景観を生んだとして世界遺産に登録された。
忙しい方のための今回の要点
・南フランスのコース地方はなだらかな高原が続く牧畜地域であるが、ここにはタルン川峡谷という断崖が50キロも続く大峡谷があり、またモンペリエ・ル・ヴィュー自然公園という奇岩の森もある。
・これらの岩は海底の石灰岩が隆起して浅くなった時に、一部がマグネシウムを取り込んでドロマイトに変化。その後地表に隆起すると石灰岩が雨で浸食され、溶けにくいドロマイトだけが残ったのだという。
・コース地方の世界遺産の村ロックフォール・シュル・スールゾンでは有名なロックフォールチーズというブルーチーズが作られている。このチーズの青カビはこの村の背後の洞窟内の固有種であり、岩の割れ目から湿った空気が侵入することで繁殖している。
・一方、セヴェンヌ地方では山頂と麓の村を移動する移牧が行われており、夏になると羊の群れを連れて一週間をかけて山頂に移動する。この移牧が山の風景を守ることにつながっている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・農耕民族の日本人には今ひとつピンとこない話ですが、牧畜民族のヨーロッパ人にとっては一つの原風景なのかもしれません。どこの国でも、その地の風土に溶け込んだ生活というのは美しいものです。
次回の世界遺産
前回の世界遺産