教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/14 NHK ガッテン「実は世界共通語!?"パン粉"の知らない世界」

世界に通用する日本の"panko"

 今回のテーマは揚げ物に欠かせないパン粉。印象が薄く、ゲストの大久保佳代子など「今までの人生でパン粉のことを考えたのは5分ほどしかない」と言い切るが、実際にそんなものだろう。しかし実は世界中で「panko」という言葉は日本の特徴的な食材として通用するのだという。そんなパン粉を紹介。


 まずは最初はパン粉がどこで出来ているかだが、「そんなのパン屋に決まっているでしょう」と言いたくなるのだが、実は今はパン屋の副産物ではなく、パン粉を作るためのパン粉工場というのが存在するのだという。実際に宮森君がパン粉工場を訪問しているが、工場ではパン粉を作るためにわざわざそれ用のパンを焼いているのだという。焼きたてのパンを宮森君が食べてみたものの「味がしない」との話。甘さとか乳製品を普通のパンよりも減らしているのだという。糖分が多いと揚げた時に焦げてしまうからだという。そもそも余ったパンの再利用だったパン粉を、日本は独自の食材にしてしまったのである。

 

世界を席巻した白パン粉

 ここで会場に登場するのが通常の数倍もある巨大なパンなんだが、それが世界の食卓を変えた白パン粉の元だという。これをどう使い分けるかだが、番組ではとんかつ屋で取材。例によって店名は出さないが、しっかり制服の「新宿さぼてん」という店名が見えるように映す「取材協力に対する配慮」は欠かさない。

 それとともかくとして、普通の茶色のパン粉は店内で食べるため、白パン粉は弁当用に使っているのだという。白パン粉は冷めてもサクサクになるという特徴があるとのこと。通常のパン粉用のパンが焙焼式なのに対して、白パン粉のパンは電極式で焼かれているのだという。

 白パン粉は金属板の間で電極から生地に電気を流しながら焼くために耳が出来ないのが特徴だという。電極式のパン粉はカッチリした構造をしているのでしっかりしているのだという。だから冷めてもサクサクなのののだとか。

 しかしこの白パン粉は実は冷めても美味しいものを作ろうとして生まれたのではないという。昔、電極式パン焼き器というのがあって、その方式が電気代が安くなるので採用されたのだとのこと。白パン粉は冷凍食品によく用いられるという。

 

ハンバーグ用の特別パン粉

 ここで登場するのが老舗パン粉工場の三代目という中林正一氏。子どもの頃に既に未来のパン粉工場の絵を描いたという筋金入りのパン粉職人。彼はユーザーの要望に従ってのオーダーメイドパン粉を手がけているという。イカスミ入りパン粉などいろいろなパン粉を作ったようだが、番組に登場したのはパンの側面の耳しか使わないというパン粉。これはハンバーグのつなぎ専門のパン粉だという。実際に食べ比べると柔らかさや香りが全然違うという。これは中林氏が香ばしさを出しつつ肉汁を吸う隙間を作るために至った結論だとのこと。

 中林氏のパン粉を手に入れられない一般人のために、番組では取材に行った中林氏のパン粉を使用しているハンバーグ専門店の店主の伊藤泰史氏に無理矢理に似たパン粉を家庭で作る方法を検討してもらっている。伊藤氏はパン粉を炒ったり焼いたりいろいろやった結論はトーストして耳の部分だけを使用したパン粉。肉100グラムに対してトーストの耳1本程度を砕いたらすぐに材料と混ぜ合わせるのだとか。

 そして最後に紹介するのはパン粉を使用したらフレンチトースト材料をまねてこねて焼くだけだとのこと。さらに炒ったパン粉を振りかける揚げないカツ丼とかパン粉のふりかけとか、パン粉をもっと料理に使いましょうということで完です。

 

 まさかpankoが世界で通用するとは思わなかった。まあ中国人が一番食べたい和食で「ラーメン」を挙げるぐらいですから、オリジナルをアレンジしてオリジナルを越えてしまうというのが最も得意な日本人らしくはあります。それにしても「冷めてもサクサク」と評判になった白パン粉が「コスト低減を考えた結果」って。一石二鳥の最たるものであるが、こんなうまい話が実際にあるんですな。

 パン粉といえば最近人気なのは生パン粉。なんとなくしっとりとしているパン粉ですが、あれを揚げるとサクサクになるという。なんかパン粉の世界も日々進化しているようです。現在のパン粉は既にかつてのようなパンを切ったクズとか、古くなって固くなったパンを砕いたもの(ヨーロッパのパン粉はそもそもこれ)とかではないってことですね。だからフレンチトーストを作ることも可能ということか。甘味を抑えてあるらしいから、甘味を加えるフレンチトーストには最適。うーん、よく考えている。

 ところで今回のパン粉フレンチトースト登場の経緯は、コロナで店頭から小麦粉などが消える中でパン粉だけが売れ残っているから、このパン粉で粉の代わりが出来ないかと試した結果とのこと。と言うことはお好み焼きとかたこ焼きとかもパン粉で作れないか試したけど駄目だったんだろうと推測される。まあさすがにパン粉はどう頑張ってもパンにしかならなかったんだろう(笑)。

 

忙しい方のための今回の要点

・日本のパン粉は実は世界にも通用する食材となっている。
・世界を席巻したのは冷めてもサクサクの白パン粉。このパン粉は構造がしっかりしているためにサクサク感が強い。
・白パン粉はコスト低減のために導入された電極式製法によって生まれた。
・番組ではさらにハンバーグのつなぎに最適のパン粉の作り方を紹介。トーストの耳の部分だけを砕いて使用するのだという。
・さらにはパン粉と材料を混ぜて焼くだけのパン粉フレンチトーストなども紹介している。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・そう言えば、私が子どもの頃のカツって、冷めたら衣がベッタリしていた記憶がある。それがいつ頃からか変わったんだが、あれが白パン粉の登場だったのか。何か裏事情を知ったら感慨深いものがあるな。

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