教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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10/20 テレ東系 ガイアの夜明け「新型コロナ 台湾の奇跡! 日本と何が違ったのか」

「台湾の奇跡」はなぜ実現したのかを紹介

 原因不明の謎のファクターXのおかげでアジアは比較的コロナの被害が少ないと言われているが、そんな中で桁違いに被害を押さえているのが台湾である。日本の感染者が9万人を越え、1670人が死亡したと言うのに対し、台湾の感染者は535人、死亡者は7人に過ぎない。台湾が日本よりも人口が少ないと言っても、それでも日本の1/5。人口だけでは説明できない。台湾のどういう対応が感染封じ込めにつながったのかを紹介。

 コロナの感染拡大でやり玉に挙げられたクルーズ船だが、台湾では感染を封じ込めたことで既に国内でのクルーズ船のツアーは再開されている。現地在留の日本人に取材してもらっているが、家族3人、2泊3日で費用は24万円のツアーがキャンペーンで8万7千円だそうな。船にはプールもあり多くの客がマスクなしで楽しんでいる。食事はビュッフェ型式だが、スタッフが盛ってくれる形になっているという。

 人口10万人当たりの死亡者数を世界で比較すると、感染者数が一番多いアメリカの67.03人を越えているのが、馬鹿大統領がコロナ対策を放棄しているブラジルで73.36人。またヨーロッパではベルギーが90.98人でスペインが72.29人と非常に多い。これに対してアジアは理由不明だが桁違いに低い。中国が0.34人で、日本はアジアの中では成績が悪い1.32人。しかし台湾は何と0.03人である。

 

SARSの教訓からいち早い水際対策を実施

 台湾の奇跡を作り上げたと言われているのが陳建仁氏。感染予防などの疫学者で最近まで彼は副総統として台湾政府の中心にいた。彼の行った対策の中でまず際立っているのは水際対策の早さ。武漢で新型感染症が発生したという情報が入ると共に台湾では昨年の12月31日から武漢からの直行便への検疫を実施、さらに旧正月には対象を拡大して、2月6日以降は中国大陸からの入境を禁止した。新型感染症は中国が発生源になることが多いということで、中国の情報には注視していたのだという。ちなみにこの時日本では、安倍総理自らが中国からの観光客誘致のビデオに出演して渡航をPR、旧正月には大量の観光客をノーチェックで受け入れたのは知られているところである。

 渡航制限などに対して政治的圧力はなかったかの問いに、陳氏は「もちろん強い政治的圧力はあった」と言う。しかしそれを気にしていてはコロナを押さえ込めないと言い切る。実際に当局のこの判断は台湾市民の9割が支持したという。陳氏がここまで果断な処置に踏み切った背景には、2003年のSARSでの失敗の記憶があるからだという。この時に院内感染の拡大を起こしてしまい、いきなり病院を封鎖してパニックが起こるなど多きな影響を出したのだという。陳氏はこの時に責任をとって辞任した前任者に変わって日本の厚生大臣に当たる役職に就任して、SARSの全地域拡大を阻止するための陣頭指揮を執ったのだという。この苦い教訓から法整備などを行って今回、先手を打つ形での対策が取れるようになったのだという。一方の日本では、新型インフルエンザに備えた法律はあったのだが、なぜか安倍総理をそれを使わずにどさくさ紛れの有事立法の制定に固執して、対策は実質的に放棄してしまった。

 現在の台湾では190日連続で市中感染者0が続いている。2月頃には飲食店などを中心に深刻な影響が出ていたのだが、現在では国内の客が戻ってきて売り上げは回復しているという(ただし海外からの観光客はまだ来れない)。そんな中で日本から進出した飲食店は「日本には行けないからせめて日本の料理を食べたい」と軒並み売り上げが増えており、過去最高を更新している企業もあるという。

 

正確な情報を流すことでパニックを抑えた

 台湾でも最初は情報が錯綜してデマなども発生した。しかしそのような不安を一掃するために中央感染症指揮センターの指揮官である陳時中氏が毎日記者会見してデータに基づいた情報を公開したという。また記者からの質問には時間無制限で全て受けたという。さらにはホットラインも開設し、親からの「ピンク色のマスクしか買えず、息子が小学校でいじめられるのを恐れてつけるのを嫌がっている」という相談に対しては、全員がピンク色のマスクをつけて記者会見に登場して「マスクはどれでも同じ」と呼びかけたという。さらに台湾当局が自らマスク製造器を発注してマスクの製造を始めたという。一方の日本では頼りない忖度専門家が登場して、政府の言い分だけを一方的に流していた(しかも感染者の実数さえ不明)という状況。その挙げ句に出てきた対策が例のアベノマスクである。

 なお台湾の公共交通ではマスクの着用が未だに義務づけられている。衛生局のLINEで感染者情報が毎日送られるようになっているという。感染者が立ち寄った店などを公開しているので、接触の可能性があるかどうかを判断できるようになっているという。またデマに対しての対応も行っており、トイレットペーパーがなくなるというデマが出た時には情報大臣が「お尻は一つ」というポスターを作ってデマで買い占めに走らないようにPRしたという。さらにはコロナ予防のための方法などのPRにも力を入れていたという。一方の日本ではメディアが空になったスーパーの商品棚を連日放送しては、パニックに拍車をかけていた・・・。

 学校などでは2月の冬休みが2週間延長されただけで通常の授業が行われているという。消毒などを徹底し、食事中に会話をしないようなどの注意は行われているが、学校で普通に学べる状態であるという。政府は学校に対して消毒薬や体温計などの物資を直ちに支援したという。また感染者が出た時の休校などの基準も明確に定まっているという。台湾で校内での感染者は未だにいないという。一方の日本は、唐突に一斉休校をして大混乱を招いたのはこれまた知られているところ・・・。

 なおビジネス番組らしく最後は、台湾に進出する崎陽軒の話を。台湾ではそもそも駅弁文化があるので台湾進出を決めたのだという。ただし温かい弁当に対するこだわりの強い台湾人に合わせて、厨房内に蒸し器を置いて温かい弁当を提供するようにしているとのこと。

 

 台湾の現状を紹介することで、日本の駄目さ加減が伝わってくる。ちなみに当時の日本の対応は私が加えたもので番組ではそれには一切触れない。そんなことを流したら、直ちに政府から呼び出しを食らって嫌がらせをされるので、そこは「お察しください」という内容になっている。コロナ対策はほぼ何もしなかったのに、そういうメディア弾圧だけは徹底したのが我が国である。

 しかし実際に台湾がやった対策を見ていると、当たり前のことを当たり前にしただけであるのだが、我が国では利権だの何だのを優先するあまりに、その当たり前のことを当たり前にすることさえ出来ないと言うことである。とにかく利権のために初動を失敗し、それを誤魔化すために検査を抑制したので現状が分からなくなって、結果としてまともな対策が出来なかったという初手から間違いを拡大していったのが日本の対応というわけである。その挙げ句に原因不明の外的要因でアジアの被害が少なかった(ただしあくまで「現時点では」である)を政府の対策の成功のようにアピールしてるんだから呆れを通り越して怒りを感じている今日この頃である。

 

忙しい方のための今回の要点

・台湾ではSARSの教訓から、世界でも最も早い入国規制に踏み切り、初動でコロナの拡大を抑制した。
・台湾での陣頭指揮を執ったのは疫学者である陳建仁氏。台湾では科学者が閣僚になることは少なくないという。
・初期での封じ込めに成功したことで、現在は190日間市中感染0が続いており、2月にはかなりのダメージを受けた飲食業なども復活してきており、現地の日本の飲食店などは逆に日本に旅行が出来ない台湾人客が増えて売り上げが最高を記録するところも出ている。
・また国民の不安に応えるために、中央感染症指揮センターの指揮官である陳時中氏が毎日の記者会見で正確な情報を伝え、また記者からの質問には無制限で対応した。また市民の声に応えるホットラインも設置した。
・デマなどに対しても情報大臣が正確な情報を流すことで抑え、さらにコロナ対策法のPRも行った。
・学校においては消毒などを徹底した上で通常に授業が行われている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・やっぱり「何よりも利権が優先」という政府の根本を何とかしないと、感染対策一つとってもまともに出来ないということだろうな・・・

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