教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

11/10 テレ東系 ガイアの夜明け「ユニクロ "世界初"への挑戦」

ユニクロが取り組んだ100パーセントリサイクルダウンジャケット

 ユニクロが最近テーマとして掲げているのがサステナブル。古着を回収して使えるものを難民キャンプに届ける取り組みや、PETボトルから繊維をつくってフリースを製造するなどということが行われているが、新たに取り組んだのはダウンジャケットのリサイクル。

 実は衣料品から衣料品へのリサイクルというのはほとんどなされていないというのが現状で、リサイクル率はわずか0.9%に過ぎないという。問題となるのはコスト。衣料品を再生するのは手間暇がかかるのでコスト高になるのだという。

 今回ユニクロが取り組んだのは、慈善事業ではなくあくまでビジネスとして成立するリサイクルダウンジャケットの製造販売。ユニクロは東レと協力してこのプロジェクトに取り組むこととなった。回収したダウンジャケットから羽毛を取り出して再生する。手間を減らして羽毛の回収率を上げるのがポイントとなる。羽毛の回収に取り組んでいた東レでは、ラボ機のテストが始まっていた。風の力で羽毛と生地を分離するようになっており、ロス率20パーセントに抑えるのが目標である。

 しかし実際に稼働を始めた頃、問題が発生していた。ロス率が30パーセント以上と増加してしまったのである。原因は生地の裁断が長くなってしまって大量の羽毛が生地に付着してしまったこと。工場には直ちに改善を指示するがコロナで直接に現地に赴けない責任者には焦りも。

 またユニクロが回収したダウンジャケットは直接東レに送られていたが、それについて東レの方から注文がつく、ダウンジャケットでない衣料がかなり紛れ込んでおり、それが負担になっているというのである。ユニクロでは各店舗から直接に東レの工場に送るのではなく、一旦自社の仕分け所に集め、そこから東レに送るシステムに変更する。

 

満を持して発売に臨む

 そうしてようやく東レの工場でもロス率は20パーセント程度にまで低下していた。そして満を持しての発売に臨む、ユニクロの方は自らのジャケットに込める想いを裏生地に印刷したという。100パーセントのリサイクルダウンジャケットは初の試みと言うことで社会の注目も集めている。注目されたのは価格設定だが、7990円と通常のジャケットと代わらない価格を打ち出した。これで十分にビジネスとして成立するところまで追い込んだのだという。デザインはユニセックスで男女ともに着用できるものにした。滑り出しの評判は上々で、担当者も胸をなで下ろしている。

 ユニクロではこれ以外にもマスクを製造したり、介護の必要な子どものための前開きのインナーなどの少ない要望でも重要なものは汲み取って対応しているという。これは経営者である柳井氏の理念が反映しているのだとか。

 

 まあ「もろに宣伝だな」という気もしたが、それもこの番組らしいところではある。ダウンのリサイクルをビジネスベースに乗せたということはかなり驚きではあるので、大々的に宣伝するのも悪くはなかろう。いかにもユニクロらしく「ちょっとええ格好しいすぎ」という感覚もないではないが、サステナブルとビジネスを両立させるという発想は社会的にも重要なのでそれは応援する。

 

忙しい方のための今回の要点

・サステナブルをキーワードにしているユニクロでは、100パーセントリサイクルダウンのジャケットを販売することを決定した。
・ダウンの分離の装置は東レが開発したが、いかに手間をかけずにダウンの回収率を上げるかがポイントとなり、目標であるロス率20パーセント以下を達成するのには苦労もあった。
・しかし技術開発に成功し、ユニクロでは100パーセントリサイクルダウンジャケットを通常のダウンジャケットと同じ価格帯で発売することになり、評判は上々である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・衣料のリサイクルって本当にされていないんですよね。だから大量生産大量廃棄の典型的な分野になっている。そういう点ではダウンのリサイクルへの取り組みはなかなかに興味深いとは思います。
・ただやっぱり生地の再生は難しいでしょうね。江戸時代なんかは生地もできる限り再生してすり切れるまで使用してましたが、それは膨大な手間によってなされていたので、残念ながら資本主義の原理だとビジネスに乗らない。
・羽毛の再生ってことなら羽毛布団があると思いますが、こっちの方はどうなんだろう。ジャケットよりもむしろ簡単な気がするんですが・・・。

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