教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/2 NHK ガッテン「"西洋まつたけ!?"マッシュルーム本当の実力」

実は松茸と共通点が

 今回の主役は今ひとつ地味な印象のキノコであるマッシュルーム。しかしこれから絶品料理を作り出そうという毎度のこの番組のパターンである。

 まず登場するのは明治のややいかつい男性。森本彦三郎氏というこの人物が、日本に初めてマッシュルームをもたらした人物らしい。彼は一旗揚げようと18歳でアメリカに行き、レストランで働いていた時に見せられたキノコがマッシュルーム。これに魅せられた彼はこれを日本で作ろうと16年かけて成功させたらしい。彼がこのマッシュルームを売り込む時につけた名前が「西洋松茸」というものであるが、それが全くの無茶ではないのだというところから番組は始まる。

 まずはマッシュルームの製造工場を見学。マッシュルームは菌の付いた麦を藁にまぶし、暖かい部屋で菌が藁一面に広がった頃に室温を急激に下げるのだという。すると生命の危機を感じたマッシュルームが胞子を撒くためにキノコを作るのだという。そしてこのキノコが開いてしまう前に収穫する。

 松茸とマッシュルームを比較した時の共通項は、形が似ているということがまずあるが、この胞子を撒く前のこどものうちに収穫するということが共通項であるという(松茸は傘の開いたものも食べるが傘が開いていない方が高い)。これに対して他のキノコは傘が開いてから食べるもので、よく見ると胞子が出ているのが分かるという。

 マッシュルームが傘が開かないうちに収穫するのは傘の内側が黒いせいで傷んでいると思われるし、シチューなどにすると黒くなるからだという。

 

マッシュルームの香りを生かした絶品料理

 ちなみに傘が開かないマッシュルームは生のまま食べられるのが特徴だという。他のキノコは傘が開くせいでそこに雑菌などが付きやすいので加熱が原則、なお松茸の場合も自然環境中で生育しているのでやはり加熱が必要だという。番組ゲストも生のマッシュルームを試食しているが、香りが強いと言っている。

 で、松茸との共通項の3つめがこの香りだという。マッシュルームに含まれる香り成分1-オクテン-3-オールでこれが別名マツタケオールとも呼ばれるものだという。ただし生のままだと量が少ないので、これの量を増やすには適度な加熱と酸素が必要とのこと。細胞中のリノール酸に酵素が作用することで発生するので、適度な加熱で細胞壁を破壊し(ただし加熱が強すぎると酵素が失活する)、酸素があることで反応が進むらしい。

 番組お勧めの料理法は、マッシュルームを6つぐらいに割ってから塩を振って5分おき、、これを炊きたてのご飯で握るのだという。するとご飯の熱で香り成分が発生するのだとか。炊飯器に入れて一緒炊いてしまうと酸素が不足するので、この方が良いらしい。

 さらに番組ではマッシュルーム専門料理店(そんなものがあるらしい)の高橋和久氏を取材して、お勧めの調理法を聞いてきている。それはマッシュルームの軸を取って、塩を振って5分置いてからオーブンで焼くだけというもの。マッシュルームの中から大量のスープが湧いて出てくるのだという。メカニズムは不明だが、マッシュルームの菌糸は大きいので多量の水分を含んでいるのではとのこと。250度で5分加熱すれば良いとのこと。マッシュルームを器にしてスープが一杯出てくる。

 さらにもう一つの絶品料理がマッシュルームにパン粉をつけて高温の油で40秒ほど揚げるレアマッシュルームフライ。なんかすぐにも試したくなる料理ばかりである。恐らく明日はスーパーの店頭からマッシュルームが消えるだろう。

 

 地味なキノコであるが、なかなかの実力者であったようである。私はシチューの時ぐらいしか使ったことがないが、その時に「もしかしてこのキノコ、結構美味いんじゃね?」と感じていたのだが、どうやらそれが正解だったようである。

 それにしてもいつもは大抵「マッシュルームに含まれる○○が△△に対しての健康効果を」という内容が多いのだが、今回はひたすら料理番組に徹していた(笑)。まあ一般的に考えてキノコ類が健康に悪いということはまずないだろう。

 また時々傘が開きかけていて中が真っ黒のマッシュルームがあったりしたのだが「腐りかけ?」とか思っていたのであるが、あれが胞子の色だったとは。と言うことは食べても問題ないということだな。なお傘が開くところまで放置すると風味が強くなると言っていたが、それはつまりはクセも強くなるということだろう。キノコはどうしても独特のクセがあるのでそれが好みの分かれるところ。私も実はシイタケとかはあまり得意でない。

 

忙しい方のための今回の要点

・マッシュルームを初めて日本に持ち込んだ森本彦三郎氏は「西洋松茸」と名付けてマッシュルームを売り込んだ。
・マッシュルームと松茸の類似点としては、ともに傘が開かないうちに食べること。だからマッシュルームは生でも食べられるという。
・またマッシュルームの香りの成分はマツタケオールとも呼ばれるもの。ただし生のままでは弱く、適度な加熱と酸素の存在で強くなる。
・番組お勧めの料理法は、まず6つぐらいに割って塩を振って5分置いてから、炊きたてのご飯で握る方法。さらに軸を外してから塩を振って5分おき、これを250度のオーブンで焼くと内部からスープが出て来て絶品料理になるという。
・またパン粉をつけて高温の油で40秒揚げるレアマッシュルームフライもお勧め。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・マッシュルームって、実際にこれを意識して食べることってあまりないキノコですよね。大きさ的にもシイタケほどの存在感はないが、エノキやナメコなどよりは存在感があると言う結構微妙な位置づけだったりする。それでも実はやれば出来る子だったようです。

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