砂岩の浸食で生まれた大峡谷
オーストラリア東部のグレーター・ブルーマウンテンズ地域は深い峡谷が続く壮大な景色の地域である。オーストラリアのグランドキャニオンとも言われている。東京都の5倍もの広さがあるという。
『世界遺産』12/13(日) グレーター・ブルーマウンテンズ地域 〜 絶景! 豪州の“グランドキャニオン”【TBS】
標高1000メートルの台地を深い谷が切り裂いているが、中でもジャミソン・バレーは最大級で幅10キロにも峡谷が広がっている。そこに高さ200メートルの塔のような岩が3つ並んでいるが、それが見所の一つのスリーシスターズだという。アポリジニの伝説では美しい3姉妹が魔法で岩に変えられたのだという。この岩は崖のギリギリに立っている。
さらに細長い絶壁が連なるナローネックが3キロも伸びる。狭いところではわずか60メートルの幅しかない。1年に数回だけファントム・フォールズと呼ばれる雲海の雲が絶壁を越えて落ちてくる現象が見られる。ここにはイノシシ岩など様々な奇岩が存在する。
ブルーマウンテンズを形成する岩は砂岩である。かつて3億年前この地域は古い大陸の河口で厚さ1000メートルの砂岩の層を形成した。これが隆起して現在も雨によって日々浸食されているのである。
垂直の断崖と青い山々の秘密
北の谷にはキノコ型をした謎の岩が並ぶ。これがどうして生成したかは専門家も首をひねるという。黒い縞模様が見えるが、ここには鉄分が多くて堅いので浸食が遅くなり、それで岩全体が丸みを帯びたのだという。しかしこの黒い層になぜ鉄分が集まったかは不明だという。
南の大峡谷は切り去ったような垂直の崖となっている。そこを多くの滝が谷底に落ちていく。最大のウェントワースの滝は高さ300メートルもある。断崖を縫って川が走っているが、この急流が断崖の下部を横に削っていく。そしてその浸食が限界まで来た時に、浸食された上部の岩が垂直に一気に崩落するのだという。こうして垂直の断崖と巨大な渓谷が誕生したのだという。中にはつい最近(1931年)に大崩落の起こった場所があり、そこはまだ風化せずに白い岩盤が見えている。切り取ったような切り口の下には崩れ落ちた岩が転がっている。
この谷は朝に青く輝くという風景を見せる。太陽が昇り気温が高くなると山々が青く彩られるのだという。この着色の理由は森に多数棲息しているユーカリ。ユーカリは砂岩の痩せた土壌に適応して広く繁殖している。このユーカリの葉の表面を覆うワックス状の油分が蒸発して、それが青く輝くのだという。この変化に富んだ大地とユーカリの森がここが世界遺産に選ばれた理由となっている。
忙しい方のための今回の要点
・オーストラリアのグレーター・ブルーマウンテンズ地域は、オーストラリアのグランドキャニオンとも言われる大渓谷である。
・高さ1000メートルの砂岩の大地が河川によって浸食をされて様々な奇岩の広がる光景を繰り広げる。
・垂直な断崖は、絶壁を落ちた水が急流を流れることで、断崖の下の岩を横に削り、限界が来た時に上の岩が一気に垂直に崩れたことで生成した。
・早朝、山々が青く輝くという光景を見せることがあるのだが、これはこの地域に広く繁殖しているユーカリの葉の油分が、太陽光で蒸発することによって発生している。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・台地が河川の浸食で大峡谷となったという点では、確かにグランドキャニオンそのものですね。ただあちらは本当に荒涼たる大地があるだけで、ここのように森が広がる光景とはかなり違いますが。その辺りは降水量の差でしょうか。
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