教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/5 テレ東系 ガイアの夜明け「京都で日本初"レジ袋禁止"!過酷な舞台裏に密着600日」

レジ袋全面禁止に踏み切った亀岡市

 京都府の亀岡市で今年の1月1日からレジ袋を全面禁止する条例が施行されることになった。既に全国的にレジ袋の有料化が行われているが、亀岡市の条例はそこからさらに一歩踏み込んで、レジ袋の有料提供も禁じるもので、レジ袋そのものをなくすという取り組みである。番組ではこの条例のために奔走した環境政策課の山内剛課長に600日間にわたって密着している。

 亀岡市がレジ袋禁止へと動くことになったのは、保津川に捨てられた大量のプラスチックゴミが理由である。これらのプラスチックゴミは保津川を経由して大阪湾に流れ着く。大阪湾の海底には300万枚のレジ袋が沈んでいると言われており、これらは細かい破片であるマイクロプラスチックとなって環境を破壊する。近年はこのマイクロプラスチックの害が世界的にも注目されている。

 この条例を住民に説明するという重要な任務を託されたのが山内課長である。説明のために小売店を回るがやはり反応には厳しいものがあり、本当に実行できるのかという疑問はあったという。そんな山内氏は通勤途中のゴミ拾いが日課となっている。

 

市民の理解は得たものの小売業者からは強い反発が

 昨年の1月、亀岡市の公民館で住民説明会を実施する山内氏の姿があった。山内氏は市内28カ所の全ての自治会でこれを実施してきたという。条例の裁決を2ヶ月後に控えて、住民の理解は不可欠である。しかし住民からは疑問の声も上がってくる。山内氏はそれに一つずつ答えていく。その甲斐あってか、7割の市民が条例賛成となっていた。

 しかし小売業者からの反発は強かった。商店街などはやはり客とのトラブルや売り上げの減少を懸念しており、そのような不安の声が多数上がっており、それらの突き上げを食らった議員からも山内氏に対してかなり厳しい声が上がる。集中砲火を浴びた山内氏(正直、少し涙目になってましたが)であるが、ここで上がった話は実際にはこれまで何度も説明を繰り返してきたことだという。説明が足りなかったのかな・・・とツラい気分の山内氏は帰りに焼酎とおつまみのおはぎを買い込んで、家族が寝静まった自宅へと帰っていく。大学から始めた空手で実は全国大会優勝の経験があるという山内氏は、同僚が皆口を揃えるように行動力のあるタフガイらしい。

 

何とか条例は動きだし、次なる手へと

 そして3月24日、ついにレジ袋禁止条例裁決の日がやって来る。議会の行方を見守る山内氏だが、条例は無事に全会一致で裁決される。ホッとする山内氏であるが、そこにコロナの影響が予想外の形で襲いかかる。テイクアウトの増加によってプラスチックゴミが大幅に増加していたのである。そこで容器を持参してテイクアウトを受ければ割引を受けられる「プラごみゼロ」クーポンを導入する。さらには数年に一度交換されるパラグライダーの帆をエコバッグとして再生し、ホヅバックとして製造。これをロフトなど東京で販売することにした。亀岡市のPRの意図もある。

 そうしていよいよ年末。不測の事態に対応するために山内氏は役所に泊まり込みである。しかし正月は幸いにして特別な問題も発生しなかったようで肩をなで下ろす。

 

東京では容器リサイクルシステムを開始

 一方の東京ではごみを減らす新しいシステムの導入が進められていた。それは「LOOP」というアメリカ発のサービスで、再利用可能な容器に調味料や食品、洗剤などの日用品を入れて配達し、容器は回収して洗浄して再利用するというものである。昔、牛乳瓶やビール瓶が回収して再利用されていたようなものである。容器などのプラスチックごみを大幅に減らす効果が期待されている。都は2030年までにプラスチックごみを4割減らす目標を掲げており、そのためにこの事業に協力することにしたとか。

 容器を再利用する場合、問題となるのは使い勝手や耐久性など。また商品イメージを損ねない必要もある。そこで導入を決めたロッテでは容器の設計について会議。結局は諸般の意見を取り入れてステンレス製の満足のいく容器が開発された。これらの商品は都内のイオンで扱われることになるという。

 

 廃プラスチックの問題がクローズアップされているが、そもそもレジ袋は本来の使われ方をしていたらそれほど環境破壊にはならない(家庭でゴミ袋の代わりに使われたりで、有効利用されている例が非常に多い)のだが、そこらに捨てるような信じがたいほどレベルの低い人間がいるからこういうことになるわけである。この手の人間はレジ袋に限らず、あらゆるゴミをそこらに捨てるので、まずはそういう人間を廃棄することから始めろと言いたくなる。例によって1人のバカが1万人を不幸にするというパターンである。

 まあそれはともかくとして、プラスチックゴミの問題を根本的に解決しようとしたら、プラスチックを使うなという方法は一つではある。要は利便性と環境のバランスをどこに取るかである。今の世の中見渡していたら、実際にわざわざプラスチックを使う必然性のない場にプラスチックが使用されている例も多い(生産性やコスト優先の結果)ので、そういうものはなくしも良いと考える。なおすっかり定着したエコバックであるが、あれは実は常習者にとっては「万引きがしやすくなる」というとんでもない副作用もあるとのことで、それも新たな問題になっている。

 LOOPのサービスについては私も注目するところである。かつては再利用するリターナル瓶が多かったのだが、それらは「コストと効率」を優先した結果ほぼなくなってしまった。しかし容器の再利用はそもそも日本自身にあった文化であるので、そういうのの復権を目指すのは正しいと思う。むしろこのアイディアがアメリカ発祥というのが情けないのであるが。

 とにかく基本は「コストと効率」を最優先にした社会を見直す必要性である。資本主義の原理で突っ走ったら、どうしても低コストで高効率が正義となってしまうので、今の状況は行き過ぎた資本主義の弊害でもある。やはりそういうものを社会的に見直していくべき時が来ているとしか言いようがない。

 

忙しい方のための今回の要点

・京都府の亀岡市で、今年の元日からレジ袋を全面的に禁止(有料での提供も禁止)する条例が施行されることとなった。
・番組では市民に対して条例を説明する役割を担った山内課長に600日密着した。
・山内氏は各地で住民に対しての説明会を開催し、徐々に市民の賛同を得て、ついには7割の市民の賛成を得ることが出来た。
・しかし小売り事業者などからは反発も強く、これは条例制定の直前まで揉め、山内氏も議員から突き上げを食らうこともあった。
・それでも昨年、条例はようやく成立し、今年の正月とりあえず大きな混乱もなく施行された。
・亀岡市ではゴミ削減の取り組みとして、さらに不要となったパラグライダーの帆を使ったエコバッグを製造するなどして、環境への取り組みをアピールしている。
・東京ではゴミ削減に向けて日用品の容器を再利用するシステムLOOPの導入が進められている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・所詮はレジ袋って、ストローなどと同じでプラスチックゴミ問題の中では象徴的な意味しかないんですよね。むしろ使い捨てペットボトルとかの方が本丸。何にしろ、ゴミをそこらにポンポン捨てるバカがいる限りどうにもならない。こういう連中の意識を変革できるかが難問。

次回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work

前回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work