教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/6 NHK ガッテン「激痛でも放置!?心筋梗塞の意外な落とし穴」

一刻を争う心筋梗塞で、なぜか病院に行かない人が・・・

 非常に危険な病気である心筋梗塞だが、病院で直ちに処置をするとかなりの確率で助かることが出来る(今はステントなどの技術の登場で95%は助かるという)。しかし病院に行かずに放置する例があるのが問題だという。

 心筋梗塞は心臓の血管が閉塞することで発生し、放置すると心筋細胞が死に至り、24時間で3割が死亡するという。また命を取り止めても心機能低下の後遺症が残る場合が多い。だから早い治療が必要である。

 しかし番組で経験者110人に調査を行ったところ、救急車を呼んだりすぐに病院に行ったのは57人と半数に過ぎないのだという。つまりは半分がすぐに病院に行っていないのである。そのまま会社に行ったり何もしていない人がいる。なぜそのようなことが起こるのか。

 

病院に行かない3つの理由

 そこで影響している要素としてまず正常性バイアスがあるという。正常性バイアスとは命に関わるような危険な状態が起こっていても、そんな危険が自分に起こるはずがないという一種の現実逃避である。数年前に火災で煙が立ちこめる地下鉄車内にそのまま座っている人たちの映像で話題になった現象である。

 実際にこの時に病院に行かなかった人たちは、尋常でない痛みを経験していたにも関わらず「大したことはない」「自分は心臓の病気なんかにあるはずがない」と判断してすぐには病院に行かずに放置していたという。

 次の理由がしばらく経つと痛みが治まったから。尋常でない痛みが発生したにも関わらず、数分後に痛みが治まったので大したことがないと判断したのだという。このような例は一旦出来た血栓が、血管内の血栓を溶かす物質で血栓が溶けたことで血流が復活したからだという。ただし元々の血栓が完全に除去されたわけでなく、その部分は再び閉塞する可能性が高いので、数時間後や数日後に再度閉塞がして、その時には血栓を溶かしきれなくなるということになるという。だから早急な治療が必要なのである。

 さらに最後は「心臓が原因だと思わなかった」というもの。胸が痛いなら心臓を疑うが、痛みの発生する部分が腕だったり歯だったりという例があるというのである。実際に病院にも「胃が痛いのでカメラを撮ってくれ」と言ってきた心筋梗塞の患者がいたという。

 これが関連痛というもので、内臓は本来痛みを伝える神経がないので、内臓の痛みは交感神経が伝えることになるのだという。交感神経は脊髄で指令を出すのだが、それがあごやら腕やらの神経とほぼ同じ場所であるために、脳が誤認するのだという。だから腕などの痛みでも今まで経験したことのないような痛みだったら心筋梗塞を疑うべきであるという。

 

心筋梗塞で命を落とさないために

 心筋梗塞で後遺症を残さないための目安は2時間以内に血流を再開させることとのこと。だから救急車を呼んだりすることが必要であるが、つまらないことで救急車を呼ぶ輩が問題になっているご時世なので、通報を躊躇う者も少なくない。だが心筋梗塞の可能性がある場合はまず救急車を呼んで欲しいとのこと。目安は「今まで経験したことのないような痛み」かどうか。また周りの人に相談するということも大切だという。本人の自覚よりも回りから見たら明らかに様子がおかしいという場合があるとのことで、実際に同僚が尋常でないと判断して救急搬送されて助かった人もいるとか。

 心筋梗塞は一刻を争う病気なので、その危険がある時は躊躇わずに救急車を呼ぶべきなんですが、そこを躊躇う場合がある。そこで番組は、ではまず#7119に電話して相談することも勧めている。ただしこれがある自治体は限られているので事前に調べておく必要があり。

 

 以上、心筋梗塞について。しかし実際にすぐに救急車を呼ぶべき人に限ってそれを躊躇い、呼ぶ必要のない人に限って簡単に呼んでしまったりするというのが現実である。こういう場面でも1人のバカが1万人を不幸にするということが起こってしまっている。

 内容はかなり重要なことではあったのだが、ただし情報自身は今更という印象が強いし、番組内容的にも薄いように感じられた。まあ重要情報であるから再度警告しておくということは意義もなくはないが、どうも最近のこの番組のネタ切れ感を強めることにもなっているような気が。

 

忙しい方のための今回の要点

・心筋梗塞は心臓の血管が閉塞することで起こる病気であり、放置すると心筋細胞が死んで命を失ったり、後遺症が残ることになる。理想的には2時間以内に血流を回復するのが望ましい。
・しかし調査の結果、半数の人が直ちに病院に行っていないという結果が出た。
・理由としてはまず自分がそんな大病になるはずがないという正常性バイアス、さらに痛みがすぐに治まる場合があるということ、さらには関連痛で心臓以外の場所に痛みが発生した事例。
・しかしたとえ腕や歯の痛みでも、今までに経験したことのないような痛みの場合は心筋梗塞の可能性が高いので、それは直ちに救急車を呼ぶべきである。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・腕の痛みと言えば、私がどうも最近就寝時に左肩が痛くなることがあるんですよね。今まで経験したことのない痛みとか、命の危険を感じる痛みというレベルではないので放置しているんですが、心臓に何かトラブルが出かけているのかな? 少し気になる。

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