教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/10 サイエンスZERO「2021年 科学&技術を大予想SP」

 毎年年始めによくあるパターンの「今年話題になりそうな分野の紹介」という内容です。

 

宇宙分野での話題トップ5

 まずは宇宙の分野から。昨年ははやぶさ2のカプセルの話題で持ちきりだったが、今年も宇宙関係のネタは多いとのことで国立天文台の縣秀彦氏にトップ5を聞いている。

 第5位は5/26にある皆既月食。月が地球の影を通るという現象だが、これが月が完全に消えるかと思いきや、赤い光が回り込むので不気味な赤月が見えるということになります。

 第4位は「人類、再び月へ」NASAのアルテミス計画のこととのこと。月の極域に大量の水資源があることが分かったことから、基地を建設してこの水からロケットの燃料を作り出そうという話である。

 第3位はアメリカの宇宙10年計画発表だそうな。今後の宇宙開発の方針が明らかになるので注目とのこと。

 第2位は火星探査。アメリカ、中国、アラブ首長国連邦が火星に探査機を送り込んでおり、それが注目とのこと。特にアメリカは火星の岩のサンプルをくりぬいて将来地球に送るとか。火星表面をヘリコプターで探査なんてことを考えているとか。

 そして第1位はジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。これはハッブル宇宙望遠鏡の後継機で直系6.5メートルというハッブルの10倍の光を集めることが出来るという。また赤外線を観察することを目指しており、赤外線は宇宙の塵を通過するので遠くまで観測が可能なのだとか。これで地球型惑星とされている星に水が存在するかなどを調べるとのこと。ちなみに赤外線のノイズを防ぐために機体を-240度まで冷やすのに半年かかるので、実際の観測の成果が出てくるのは来年らしい。

 

自動運転に空飛ぶ車

 次は自動運転の話題。日本ではレベル3(一定条件下でシステムが運転)が市場に出てくるという。高速道路での50キロ以下での走行などの条件付きとのこと(つまりは速度が遅くて、飛び出しなどがない条件。実際は渋滞時の高速ぐらいしか該当条件はない。)。さらに上の段階のレベル4は場所を限定での完全自動運転だが、これは国内ではトヨタがバスを開発しているという。さらにレベル5の完全自動運転は海外での開発がかなり進んでいるが、まだ実用化にこぎ着けているところはない。

 なお群馬大学ではレベル4の自動運転バスの開発を進めているという。決まったコースを走ることに限定してるので、あえてAIを使わないので頭脳であるコンピュータはさほど高性能のものではないという。障害に対する回避パターンを事前にブログラムに入力しておいて対応するのだという。

 さらには空飛ぶ車ことeVTOL。電動で多くのプロペラを制御して空を飛ぶのだとのこと。愛知県のベンチャー企業・スカイドライブでは車2台分の駐車場に止められ、時速40キロで飛行できる機体を開発している。技術的に難しいのは離陸時などに地面に当たった風で機体が不安定になるグランドエフェクトへの対応だったという。プロペラを細かく制御することで機体を安定化させる技術を開発したとのこと。

 

医療分野でのハイテク活用

 医療分野では医療と工業の連携がポイントとのこと。AIの画像学習によって腸内の映像からガンを自動的に判別するシステムの開発が進んでいるという。またバイオ3Dプリントという細胞用の3Dプリンタで人工血管などの臓器を作ろうという技術が開発されている。現在人工末梢神経の開発も進んでいるという。

 さらには医療面でのビックデータ活用も進んでいる。全国の病院のデータを集め、それらを解析することで病気の治療法や影響を与える生活習慣などをあぶり出そうとの試みだという。ただしこの分野はプライバシーの問題を含んでいそうだ。


 以上、今年話題になりそうな科学のトピック。これらの内のいくつかは今年の放送のテーマにもなるだろう。私としては気になっているのは自動運転。これは現在地方において高齢者の足となるべき公共交通機関が壊滅しつつある状況を考えると、解決手段は自動運転によるバス運行しかないと考えているので。ちなみに以前から疑問に感じているのは、自動運転のバスよりも自動運転の鉄道はもっと簡単で、既に技術的には実用化されていると思うのだが、それがなぜ地方のローカル線で採用された例がないかである。

 

忙しい方のための今回の要点

・2021年に科学の各分野で話題になると予想できるテーマを予測。
・宇宙分野では火星探査やハッブル宇宙望遠鏡の後継であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などが挙がっている。
・身近な分野では自動運転の実用化と空飛ぶ車ことeVTOLの開発。
・医療分野は医療と工業の融合が鍵で、AIによるがん診断や3Dプリンタを使った臓器製造など、さらに医療面でのビックデータ活用などが挙がっている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・世の中の科学はドンドンと進展しているのですが、その一方で科学を全く信じないというか、科学に目を背けて都合の良いデマを信じるトランプ信者のような連中が増えているのも気がかりなところです。これからはこういう連中が科学発展の阻害要因になり得る可能性を感じている。一般人への科学リテラシーの教育をどうすべきかを考えている専門家とかはいないんでしょうかね。

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