教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/19 テレ東系 ガイアの夜明け「問題は"住まい"で解決!商店街に住む&3世代殺到の家」

シャッター街再生の試み

 全国で現在問題となっているのが、駅前商店街のシャッター街化だ。そんなシャッター街の一つ、北九州の寿通りで新しい試みが始まった。

 13あった店舗スペースも今では総菜屋の一軒が営業しているだけ。店長の福岡佐知子氏は3年前にここに店を開いた。それは寿通をどうにか過ごしやすくしたいと想いからだという。

 その彼女が一級建築士の田村晟一朗氏と閉鎖店舗のシャッターを開けて何やら始めだした。閉鎖した店舗はその時のまま時間が凍り付いている。そして二階は店の人が暮らしていた部屋。しかし野良猫などが入り込んでかなり傷んでいる模様。何をやっているのかと言えば、実はこの空き店舗の二階をリフォームしてシェアハウスとして住民を居住させようと考えているのである。かつては商店街には人が住んでいた。人が2階に住むことで明かりが付き、住民がいるとなれば店舗も進出してくる可能性がある。また住民にとっては駅前商店街は非常に便利な場所である。こうやって商店街を再生しようというのである。

 

コロナの影響などもあったが、プロジェクトは動き始める

 福岡氏はこの地域の再生にかける想いが強い。地元住民とシャッターをカラフルに塗るイベントを行ったりなどの振興策を行っていた。そしてついに大々的に計画に動き出したのである。寿通のオーナーとも交渉したが、やはり大家としても商店街の再生は願い。出来る協力はするとの約束を取り付ける。とりあえずの計画は総菜店の斜め向かいにある閉店した3軒をリニューアルする予定。

 しかしここにコロナが襲来する。さらに駅前の大型デパートの撤退も決まった。計画も予定より遅れることになって暗雲が漂い始める。しかし一ヶ月後、なんと寿通に新しい美容店がオープンしていた。コロナがむしろ追い風となってここに出店したのだという。さらに撤退した駅前デパートに入っていたブティックもここに移ってきた。そしてさらに夜市を仕掛けて集客をする。

 11月27日、コロナで遅れていた工事がようやく開始される。2階は4室のシェアハウスとなり、6畳で家賃は光熱費込みの5万円とのこと。近くの大学の学生が早速入居希望に現れる。駅まで傘をささずにいけるのが魅力という。そして一階には3坪ほどに区切った小店舗が10店ほど入る予定という。

 

ご近所さんがあつまる高齢者入居施設

 一方、神戸市長田区の六間道にユニークな施設がある。4年前に出来たはっぴーの家ろっけん。ここには年齢様々なご近所さんがひしめいている(この時はまだコロナの前)。高齢者と子供が遊んでいる姿が多いが、皆他人だという。また歌を歌っているインド人が。実はこの施設は高齢者の入居施設で32人の高齢者が暮らしているのだという。

 ここに子供を連れてくると高齢者などに遊んでもらえるので、近所の人にはちょっとした保育園代わりになっている。またテレビゲームで遊ぶ子供達がいるが、ゲームをする前に高齢者が喜ぶことをするルールになっているとか。こうして高齢者と子供達が自然に交流するようになっている。

 この施設を作ったHappyの代表は首藤義敬氏。35才の髪の毛を染めた兄ちゃんである。「遠くの親戚より近くの他人」というのがコンセプトだという。このコミュニティーには近所の外国人も訪れる。友達が出来て日本語が学べるからだという。多くの人にとって居心地の良い空間となっている。首藤氏は長田の下町育ちで、その下町が阪神大震災で破壊されたことから、それを再生したいという想いがあったのだという。高齢化率33%という長田の問題を解決する方法として人のつながりを使おうと言うことだという。ここに惹かれて職員としてやってくる者も多い。これがあることで20世帯が近くに引っ越してきたという。また入居者の葬儀も仲間で行う。これまで10人の入居者を見送ったという。しかしここも現在コロナの直撃を受けてみんなが集まれなくなっていた。

 

首藤氏が仕掛ける新たな施設

 しかし首藤氏はここでさらに新しいプロジェクトを考える。近くの空き家を改造して、1階に高齢者に住んでもらって、2階には若者に低家賃で住んでもらい、トイレや台所を共用にすることで家族のような交流が出来る。さらに軒先を駄菓子屋にしてご近所の子供とも交流が出来るというはっぴーの家のはなれを考えたのだという。このような住宅を増やすことで、高齢者の見守り、空き家問題の解決、コミュニティー作りを一挙に解決しようというアイディアである。

 

関東での取り組み

 さらに関東でも取り組みが始まっている。座間では駅前の団地をリニューアルして共用スペースに貸し農園やカフェを作ることでいろいろな人が集まるようになってきた。都心からの移住者も多いという。

 下北沢は最近になって再開発が進んでいる町である。それと共に昔の風情がなくなって住みにくくなってきたという声もあるという。ここに小田急電鉄が建てたのがシモキタカレッジ。ここは若者の寮で、大学生や若い社会人を集めて35人が居住、ここに住むだけでなく下北沢の課題に取り組んでもらおうというのである。若い人に町づくりに取り組んでもらおうという考えだとか。

 

 町やコミュニティーの再生に取り組む人々を紹介。何だかんだで日本全国の地方都市を回った経験のある私は、各地で駅前商店街がシャッター街化した惨状は目にしてきており、これを何とかしないことには地方の再生はないと考えていた。そういう意味では北九州の取り組みは非常に興味深い。確かに昔の商店街は商店主がそこに住んでいたので、それが人の目や人の気配を生んで、そのことが治安の良さにもつながっていた。そして自然と活気を生むことになったのである。そう言う意味では夜間にそこに暮らしている人がいると言うことは大きい。最近はこういう商店街にビジネスホテルが進出してきた例もあるが(ドーミーインなどが結構そういう例が多い)、こういうのも一つの方法かもしれない。

 また高齢者の孤立の問題も深刻であり、そういう意味ではご近所による共助というのは有効である。いかにも下町長田らしい発想である。もっともこういう「密な」コミュニケーションは嫌う者も少なくないので、その辺りは万人向きとは言いにくいが(私などはむしろ他人がズカズカと生活圏に入ってきたら鬱陶しい)。ただ今後は単身高齢者も増えるので(私も将来そうなることはほぼ確定している)、やはり何らかの地域での見守りは必要だろう(私もさすがに、家で一人で倒れてそのまま腐敗するまで発見されないなんてのは御免である)。

 

忙しい方のための今回の要点

・全国で駅前商店街のシャッター街化が問題となっているが、北九州の寿通では、店舗の2階をシェアハウスにリフォームすることで若者に住んでもらい、そのことをきっかけに町の活気を取り戻そうというプロジェクトが開始された。
・また高齢化比率の多い長田では、年代様々なご近所さんが集まって交流する高齢者入居施設はっぴーの家ろっけんがオープンした。近くの子供などが出入りすることで、自然と高齢者との交流が出来、また高齢者に対する見守り効果ともなる。
・関東でも座間や下北沢などで町づくりの新しい取り組みが始まっている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・下北沢の取り組みはまだ開始の部分だけでしたから、これはしばらく後に続報があるのでしょう。今回は明らかに「今後の報告に期待」という雰囲気でした。

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