教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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1/26 テレ東系 ガイアの夜明け「勃発!"空"を制する戦い~ドローン新時代がやってくる~」

ドローンのための空の道

 個人の娯楽の一つとしても定着しつつあるドローンだが、本来は物流などの産業面での応用が期待されていた技術である。そのようなドローンの産業利用の最前線をレポートする。

 ドローンといっても自由に勝手に空を飛んで良いわけではない。そもそもは航空法の規制があり、人口密集地では飛行させることが出来ない。大都市圏はほとんどが該当する。また飛行高度については地上150メートルまでという規制がある。また私有地の上空は最大300メートルまでは空中権が存在するので、勝手に上空を飛行することが出来ない。持ち主の許可が必要となる。

 ここに目をつけて空中権の確保に乗り出したベンチャー企業がある。トルビズオン社長の増本衛氏は田舎の一軒一軒を飛行の許可を求めて回っている。こうして土地所有者の飛行の許可を得ると、その地域をドローン飛行可能区域として愛好家に紹介するわけである。愛好家は飛行代と仲介料をトルビズオンに支払い、土地の所有者には飛行代が入るという仕組みである。飛行代は目下のところ3秒通って1円ぐらいだとか。増本氏は現在、ドローンを使った物流に取り組もうとしていた。しかしそのためには空に道を作る必要がある。この道を作って通行する企業から費用を取ろうというビジネスを考えているのだという。

 

空の道を利用して僻地の物流を行う

 昨年の11月下旬、増本氏は佐賀・多久市を訪れた。市長が増本氏を迎える。多久市は山岳が多いので物流に不安を抱えており、空の道を使用して日用品などを運搬しようという考えなのだという。早速増本氏は山の奥の集落に病院から薬を運ぶための2.7キロの道とホームセンターから高齢者施設に日用品を運搬する1キロの道を設置するために地主と交渉する。ドローンは畑などの上空を飛行することになる。さて農家の人々が理解してくれるかと言えば、それが思いの外すんなりとOKが出る。実は農家の人々は農薬散布などで既にドローンを使用しており、ドローンには馴染みがあるのだという。むしろ道路のトラブルなども多いことから、ドローンによる輸送への期待が大きい。

 1ヶ月をかけての交渉の結果、何とか空の道を確保できた増本氏は早速1/14に飛行テストに臨む。ドローンはプログラムに従って自動で運行される。キチンと設定したコース通りに飛行して目的地に到着するかの勝負である。テストの結果、どちらの道でもドローンは飛行に成功、実用化が見えてきた。

 

ドローン先進国中国の現状

 ドローンの先進国は中国であり、現在飛行しているドローンも中国製が多い。中国では警察がドローンを使って取締をするなど実用化が既に進んでいる。またドローンを使用したデリバリーなんかも既に3年前からあるという。地方の診療所では採血した血液サンプルを大きな病院に送って検査してもらうなどということもなされている。

 こういうドローンを使ったサービスを提供しているのが2015年に創業したアントワークと言う会社である。中国で最初にライセンスを得た会社だという。中国では日本の空中権がなく、空中の権利は国家が管理している上、最低限の要件さえ満たしていれば許可は下りる(不都合が生じればその時に改善すれば良いという考え方)体制なので、日本よりもスピード感があるらしい。

 さらに人が乗るドローンまで登場している。イーハンが開発したもので1機3000万円。16個のモーターを駆使して最大220キロを35キロ先まで輸送が可能だという。既に100機以上売れたという。試乗してみると非常に飛行は安定しているとのこと。将来的にはタクシーなどの新しい交通機関を目指しているという。また消防用の機体なども開発している。技術力の秘密は国との共同開発にあるという。

 

日本でのドローン開発

 一方の日本も何とか巻き返しを狙っている。1/18にNTT東日本が2社と組んでドローンの合弁会社を設立した。国は安全保障の観点から省庁などが調達するドローンから中国製を事実上排除する方針を打ち出しているので、それに対応して国産ドローンの開発が進んでいるのだという。

 今回NTTが組んだ会社がオプティム。2000年創業のコンピュータソフトの会社だが、佐賀大学と組んでドローンの開発を行っている。開発中の新型ドローンはヘリコプター型ではなく固定翼を持った飛行機型。従来のドローンはバッテリーの消耗が激しいために飛行時間は15分ぐらいが限界だが、飛行に固定翼を使用することでバッテリーの消耗を抑えることが出来て1時間以上の飛行が可能になるのだという。これを使用して有明海の赤潮調査を実施、1時間半の飛行で広い範囲を観測することが出来た。

 一方埼玉県の住宅街にあるイームズロボティクスは様々な産業用ドローンを開発している会社である。ダムの点検用の水面に着陸して離陸できる最新型のドローンが開発されていた。また道路の橋梁点検用ドローンなども既に実用化されている。そして現在は物流用のドローンに力を入れている。

 佐川急便ではイームズロボティクスのドローンを使用して、遠隔からドローンを制御して運搬使用することで人手不足を解消しようとの構想を掲げている。そこで実際にドローンの遠隔コントロールの実験が開始された。何と東京から島根のドローンに指令を送ってコントロールして6キロ先まで荷物を運ぶ。ドローンは見事に予定した通りのコースを飛行して実験成功。全国のドローンを一カ所で集中コントロールできる可能性が出て来た。

 

忙しい方のための今回の要点

・ドローンを物流などに使う最前線を紹介。
・ドローンを物流に使うには飛行ルートの地権者の同意か必要。そこでベンチャー企業のトルビズオンは地権者と交渉して空の道を作るビジネスを手がけている。将来は物流メーカーから通行料を取るつもりであると言う。
・一方、ドローン先進国の中国ではドローンを使用した物資輸送は既に実用化されている。中国では日本の空中権に当たるものがなく、また政府の規制も緩いためにスピード感のある対応が可能なのだという。
・また人が乗ることも出来るドローンが国との共同開発で実用されている。将来は新しい交通機関を目指すという。
・日本では省庁の調達するドローンは安全保障の観点から中国製を排除する方針を掲げている。それを睨んでNTT東日本は2つの会社と組んでドローンの合弁会社を設立した。
・そのパートナーの1社であるオプティムでは、固定翼を使用することで1時間以上の飛行が可能な新型ドローンの開発を行っている。
・一方、産業用ドローン開発を行っているいーむずロボティクスでは狭川急便用の運搬用ドローンを開発中。これはドローンを遠隔コントロールすることで、1カ所から日本中のドローンをコントロールして人手不足を解消しようというものである。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・とにかく中国の進み具合には呆気にとられましたね。ただドローンも無秩序な状態になると危険性が高くなるので、何らかの法整備が不可欠になるでしょう。中国のように人が乗るドローンまで登場したら、空中での交通事故なんかも普通に起こる可能性が高い。やはり道路的なものを設置して、それからそれて勝手に飛行することを禁じるなどの措置はいずれはとられることになるでしょう。
・にしてもここでも日本の許認可制度の問題点が多々ある模様。本当に日本の御役所は・・・。

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