教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/27 NHK ガッテン「忍者は知っている!?冷凍野菜・真の実力を引き出す裏ワザSP」

冷凍野菜を使って美味しい煮付けを作る

 日本人たるもの、野菜の煮付けなどを食べたくなったりするものだが、実際に作るとなると大変。しかしここで役に立つのが冷凍野菜。カットしてあって手間が省ける上に保管が効くので、特にコロナ禍のご時世では売り上げが増えているという。しかし実際に料理してみると、サトイモがガチガチとか、ほうれん草がヘナヘナとかなかなか上手く行かないという。実はそれは使い方を間違っているのだという。

 最近の冷凍野菜は昔と比べて品質がかなり変わっているという。たとえば冷凍カボチャはすぐに加工することから完熟で収穫されるので糖度は生のものよりも高いという。またほうれん草なども大きいサイズに栽培して取れたてのものを加工するので栄養も触感も保てるようになっていると言う。またサトイモは品質を揃えるために皮をむいたあとに食感の悪い変色部分を取り除いてあるのだという。

 しかしながら実際に料理してみると、カボチャは煮崩れてグチャグチャでサトイモはガリガリなんてことになりやすい。これは冷凍野菜の使い方に間違いや落とし穴があるのだという。

 

冷凍野菜とは実は「冷凍ゆで野菜」である

 番組が言ってるのは「冷凍野菜」というのは、実は「冷凍ゆで野菜」なのだという。大抵の冷凍野菜は凍らせる前に下茹でなどのブランチングという加熱過程を経ているという。これは高温にして酵素の働きを止めることで品質の低下を防ぐための処理だという。

 だから加熱の仕方を考える必要があるのだとか。ただそれでもカボチャが煮崩れるのは分かるが、なぜサトイモはガリガリになってしまうのか。そこでこの番組お得意の実験であるが、ここでなぜか忍者が唐突に登場する。忍者が吹き矢でサトイモを狙うのだが、ここでサトイモに突き刺す竹串が落とし穴なのだとか(それだけのためにわざわざ忍者を登場させているのか)。

 番組ではここで生のサトイモを十分に煮て、その時の竹串の通り具合を先ほどの忍者の方々に体験してもらう。そして次は冷凍サトイモを煮て煮え具合を竹串で判断してもらうという実験をしている。その結果、全員が上手く煮えずにガリガリのサトイモになってしまったという結果。と言うわけでタイトルは「忍者は知っている!?」なんてなってますが、実は忍者は誰も知らなかったというオチです(笑)。

 冷凍サトイモの断面を見ると外側はしっかり加熱されてるのに、中は火が通っていないということになっているという。しかし竹串はこの状態で通ってしまう。これは冷凍時にサトイモの細胞が壊れているからだという。つまりは冷凍サトイモは煮えてなくても竹串が通るのだとのこと。ついつい生の煮物の感覚で竹串の通りで判断しようするから失敗するのだという。

 

冷凍野菜は煮るな

 ではどうすれば良いかだが、番組の解答は「そもそも煮る必要がない」というもの。冷凍野菜メーカーの方が伝授する方法は、冷凍サトイモを凍ったままめんつゆに投入して冷蔵庫の中で一晩放置して解凍、翌朝に電子レンジで10分加熱するだけでOKなのだとか。これで味の浸みたサトイモの煮物が完成するという。電子レンジは中央から加熱されるので、冷凍野菜には非常に適しているのだという。さらに加熱が短時間で済むので煮崩れないのだとか。なお冷凍サトイモを他の具などと煮たい時は、凍ったままのものを電子レンジで2~3分加熱してから10分鍋で火を通せば良いとのこと。

 同様に冷凍カボチャも耐熱容器に皮を上にして入れ、電子レンジで3分半加熱。この間に鍋で煮汁を作り、電子レンジで加熱したカボチャにこの煮汁をかけるだけでOKなのだという。細胞が適度に隙間のある状態になっているので、煮崩れせずにいて煮汁は浸みるのだという。つまりは冷凍野菜は煮てはいけないのである。

 

とにかく加熱は短時間で

 さらに葉物野菜の場合であるが、これは野菜の達人の河原潤治氏が取り組んでいる。その結果編み出した方法は、冷凍ほうれん草を水に浸して解凍(室温で5~10分が目安)。これを沸騰した湯に入れて茹でるのは5秒で終了、すぐに冷水で粗熱を取ると絞って出し汁につけて完成とのこと。これでシャキシャキのおひたしが出来るという。なるべく加熱時間は短くするのがポイントだという。事前に解凍したのは凍ったままだと湯の温度が下がって煮る時間が長くなるからだという。冷凍野菜の食感を保つには加熱時間は短くというのがポイントだという。なおたとえばゴボウの炒め物なんかの時は、フライパンを余熱で十分に加熱してから凍った野菜を入れ、そこでフライパンに蓋をすることで加熱時間を短縮するという方法を取るのだとか。とにかく短時間加熱である。

 ちなみに冷凍野菜のパックに記載されている料理の仕方というのは、実はそれがベストとは言えないとのことでまだまだ検討中らしい(冷凍食品協会の方の談)。と言うわけでガッテン流が普及して一般的になると、この方法がパッケージに記載されることになりそう。

 

 以上冷凍野菜の使い方。まあ野菜に限らず冷凍の技術の進歩というのは著しく、品質は劇的に向上してます。だからそれを有効に利用するためには今回のポイントに注意しろということ。「冷凍ゆで野菜」という観点は確かにあまり一般にないでしょう。既に茹でてある野菜だと考えたら、そりゃそれをさらに鍋で煮たらクタクタになるのも当然という奴である。

 内容はなかなかに興味深いところ。番組自体はまあ例によって無意味な演出が加わるのはいかにもこの番組らしい(笑)。忍者の意味はないにしても、「竹串が役に立たない」というのをインパクトを持って印象づける効果は上げているから良しでしょう。

 ただ今回の番組の内容を見ていると、冷凍野菜は糖度も高くて時短料理も出来てと、これだと生野菜を使うよりも冷凍を使った方が良いというように聞こえるのだが、やっぱり生野菜でないと出来ないものもあると思うのだが・・・。

 

忙しい方のための今回の要点

・最近の冷凍野菜は品質向上が著しく、たとえばカボチャなどは完熟したものを冷凍することで生のカボチャよりも糖度が高い。
・ただ冷凍野菜を使用して煮物を作ると、サトイモがガリガリになったり、カボチャが煮崩れしたりなどの失敗が多いが、それは冷凍野菜が既に加熱されているというポイントを抑えることで防げるという。
・まずサトイモの煮え具合を判断する時に竹串は役に立たないという。これは冷凍の時に細胞が壊れているので煮えてなくても竹串が通ってしまうため。
・だから冷凍サトイモを使う時は、サトイモはめんつゆ中で一晩解凍し、翌朝に電子レンジで10分加熱。これで味の浸みたサトイモの煮付けになる。
・同様にカボチャも電子レンジで3分加熱してから、鍋で作った煮汁をかける。これで煮崩れせずに十分に味の浸みたカボチャの煮付けになる。
・ほうれん草のおひたしなどは、水で5~10分解凍してから、沸騰したお湯に投入して煮るのは5秒。あとは冷水で粗熱を取ってから出し汁に入れる。冷凍野菜の食感を保つためにはなるべく加熱は短時間にするのがポイント。
・炒め物の時は、フライパンを十分に予熱してから凍った野菜を入れ、フライパンに蓋をして短時間で加熱すると良いという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・例によって非常に実用的な内容でした。これでまたスーパーの冷凍野菜がよく売れることになりそうです。コロナで買い物に頻繁に行くのが困難になっていますから、巣籠もり用情報として実に有用でしょう。
そもそも冷凍物と電子レンジって相性が良いんです。冷凍食材を外から加熱してもなかなか中まで火が通りませんが、電子レンジは中央から加熱できるんで。だから電子レンジは使いようでいろいろと応用範囲が広い。

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