教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/2 テレ東系 ガイアの夜明け「マイナスの世界へようこそ!~コロナ禍で光る冷凍技術~」

ワクチン輸送に必要な低温貯蔵技術について

 ようやく日本でもコロナワクチンのことが言われるようになってきたが、ファイザーのRNAワクチンは不安定なため、-75℃以下というドライアイス温度での輸送や貯蔵が必要である。しかしこれは通常ではなかなか利用されない極限温度。そこで現在、それに対応するための冷凍技術が注目され、新たなビジネスチャンスともなっている。

 しかし海外から成田空港にワクチンが届いても、空港には-75℃で保管できる倉庫はない。医薬品用の倉庫は20℃と5℃に対応したものしかないという。そこで空港に到着すると30分で直ちに運び出すことになる。

 ではワクチンを接種する病院などではどうやって保管するか。そこで現在大忙しになっている企業が超低温冷凍庫(ディープフリーザー)を扱う会社。日本政府は1万台を確保する予定だが、国内で扱っている会社は4社ほど、カノウ冷機もその一社だが、しかしデンマークからの輸入が滞っているので製造が苦労しているという。そもそも超低温冷凍庫の製造はヨーロッパに偏っているとのこと。

 

商機を見た各メーカーが開発に乗り出す

 さらに運搬方法が問題である。現在はドライアイスを使用しているが、これも大量に確保するとなったら供給が限られているだけに問題が発生する。そこに商機を見出して参入するメーカーもある。パナソニックが開発した保冷ボックスはドライアイスを使って18日間-70℃以下をキープできるという。

 またドライアイスに頼らない輸送方法を開発しているメーカーも。-120℃まで冷やせる超低温冷蔵庫を搭載した車輌を販売開始するのがモビリティープラス。沼津のメーカーが開発した冷凍庫を車に搭載したのだという。価格は500万円の予定。

 さらにブランテックインターナショナルは、以前から魚の輸送などに使うためのハイブリッドアイスを作っているメーカー。塩水を凍らせることで-20℃を実現するのだという。ドライアイスに比べると安全で低コストなのが売りである。この会社にもワクチン輸送用の-75℃が実現できないかという依頼が来た。現在、そのための新しいハイブリッドアイスを開発中である。目下のところエチレングリコールを使用した氷(不凍液そのものである)を作って-51℃を実現した。これを改良して春までに-75℃を目指すという。さらにハイブリッドアイスを使用する冷凍ボックスも開発している。

 

冷凍技術で全国を相手に通信販売

 コロナが飲食業界には逆風となっているが、そんな中でテイクアウトとネット通販で売り上げを伸ばす店もある。そこで使用されるのが冷凍技術。八王子のカフェロマンでは煮カツサンドを急速冷凍機で-35℃に一気に冷やして冷凍することで全国に通信販売を行っている。

楽天市場にてカツサンドを全国販売している模様

 

 その冷凍技術を指南したのがデイブレイク。各店からの問い合わせがコロナ以降は3倍に増えているという。この会社の売りはいろいろな冷凍機を持っている上に今までの経験で食品に合わせた冷凍技術を提案できること。番組では実際にライスバーガーを冷凍するところを紹介しているが、味が落ちないらしい。さらにはにぎりたての寿司と冷凍で1年保管した寿司を3人に食べ比べてもらうというテストまで実施したが、見事に1人が区別できなかった。

 このデイブレイクと手を組んで通信販売に乗り出したのが、九十九里浜で漁師をしながら飲食店ばんやを経営している小栗山尚宏社長。コロナのせいで店がガラガラだが、看板商品の新鮮なカタクチイワシはここでしか食べられないのにすぐに鮮度が落ちてしまうので、これを冷凍してネット販売に乗り出すことにしたのだという。刺身、押し寿司、天ぷらなどを考えているが、天ぷらの冷凍が一番難しいという。実際に試してみたところ、板長の評価は80点だが、やや水っぽくなっているという。そこでデイブレイクでは天ぷらの作り方も含めて様々な実験。その結果、魚を丹念に拭いてから衣を薄めに付けて高温の油で揚げることでサクッとした天ぷらを実現。これで本番に臨むこととなった。

ばんやさんも楽天市場で様々な商品を販売しているようです。

番組登場のカタクチイワシの天ぷらもありました。

 

 

 コロナワクチンの件に絡めて、後半は冷凍食品は話につながりました。昔は冷凍にすると覿面に味が落ちたのですが、最近は瞬間冷凍などの技術で非常に品質が上がってきているので、このようなコロナの状況では新展開としてあるでしょう。それにテイクアウトだったら商圏が限られますが、冷凍となると全国をターゲットに出来るので新たなビジネスチャンスではあります。ウーバーイーツよりも商圏が広いことになります。

 冷凍食品と言えば今までは長期保管が可能ということと、電子レンジで温めるだけで食べられるというのが最大の売りだったのですが、最近は遠くのあそこの店の味が食べられるというのが新たな売りになってきてます。

 もっともどうしても冷凍輸送となりますと配送料がかかりますので、割高になるのは仕方のないところ、番組に登場したカフェロマンもばんやもともに楽天市場で購入可能ですが、輸送量はかかりますのでそれを考慮しておく必要はあります。

 

忙しい方のための今回の要点

・日本でもワクチン接種が計画され始めたが、ファイザーのワクチンは-75℃での保管が必要なので、その保管用の超低温冷蔵庫の確保が課題となっている。
・多くのメーカーがそこに商機を見つけて乗り込んでいる。Panasonicではドライアイスで18日間-70℃以下を保てる保冷庫を開発した。
・また-120℃まで冷却できる冷蔵庫を車に搭載して売り出したメーカーも。
・さらに魚の輸送などのハイブリッドアイスを開発したブランテックインターナショナルにも依頼が。同社では-75℃を実現できる新しいハイブリッドアイスを開発中である。
・冷凍技術はコロナ禍で逆境の食品業界にも救いとなっている。冷凍した料理を全国に通販することで売り上げの伸びている飲食店がある。
・冷凍技術を手がけたのはデイブレイク。様々な冷凍装置を所有し、多くの食品に対するノウハウがあるので、最適な冷凍法を紹介できるのが強みである。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・とりあえずファイザーのワクチンは生ものなので扱いが大変なようです。この後に後発で出てくる予定のワクチンはもっと扱いやすいようですが。ただそれらが十分に行き渡るかどうかが今一番の課題。ワクチン接種のスケジュールも日本政府が無能なせいで、ドンドンと遅れているようだし。

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