ベトナムの洞窟河川が連なる絶景の地
絶景の渓谷が続くベトナムのチャンアン。ここは奇岩の山と森の中に多くの河川が流れている地域である。
『世界遺産』1/31(日) チャンアンの景観 〜 洞窟河川が生んだ! 絶景の渓谷【TBS】
これらの河川の中には上空から見ると途切れて見えるものがある。実はそういう河川は洞窟河川でつながっている。ここはかつて海の底で珊瑚の死骸などが蓄積して出来た石灰岩地形で、それが隆起して浸食されることによって誕生した。だから多数の鍾乳洞があり、その洞窟の中に水が流れ込んで洞窟河川となったのである。洞窟河川には長さ数メートル程度のものから、1キロに至るものまで様々であるが、50もの洞窟河川の総延長は20キロを越えるという。
チャンアンの河川の中には真円形をした島が20以上も存在する。まるで意図的に作り出したように見えるこれらの島は、まず複数の河口から流れ込んだ水が円を描いて流れながら運んできた土砂を堆積させる内に中央に小さな島が出来、やがてその回りを水が孤を描いて流れるようになって円形の島が生成したのだという。
かつては海の中だったチャンアン
かつてのチャンアンは今とは全く違う景観だった。その頃の景観をとどめるのがここから北東にある2000もの島が連なるハロン湾だという。およそ6000年前にはチャンアンの岩山もここのように海に浮かんでいた。ハロン湾の島々には多くの鍾乳洞があると共に、波打ち際がえぐられたようにくぼんでいるという特徴がある。チャンアンの岩山の下の方にえぐられたような波蝕痕という窪みが存在する。波打ち際の窪みは波による浸食だけでなく、実は原因の多くは岩に付着する貝類だという。フジツボのような貝が岩に張り付き、岩を溶かして石灰分を取り込んでいたのだという。かつてのチャンアンには気候変動などで何度か海が入り込んでいた。現在の姿になったのはおよそ4000年前だという。
ここに暮らす幻の猿と、石器時代の人の営み
このチャンアンの岩山には生息数200しかいない幻の猿・ベトナムラングールが暮らしている。かつて密猟によって数を減らしたこの猿は、ここの険しい岩山で葉っぱを餌にして暮らしている。絶滅寸前の彼らにとってここは最後の砦なのである。
チャンアンには3万年以上前から人の営みも存在した。かつてこの一体が海だった頃、人々は洞窟の中で暮らしていた。10年前にはモイ洞窟で石器時代の住居跡が見つかったという。貝類などを食べていた跡が見つかったという。
チャンアンは独特の自然景観と人が暮らしてきた足跡などから世界遺産に指定された。
忙しい方のための今回の要点
・ベトナムのチャンアンは石灰岩の奇岩の山が連なる絶景の地である。
・山の間を流れる河川は、鍾乳洞に水が入ることで生成した多くの洞窟河川でつながっている。
・この地は6000年ほど前は海であり、その時に生じた波蝕痕が今でも岩山に見られる。今の風景になったのは4000年ほど前である。
・またここの断崖には生息数200の幻の猿・ベトナムラングールが棲息している。
・さらに3万年前、この一体が海だった頃、洞窟で人が暮らしいた石器時代の遺跡も見つかっている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・石灰岩の土地って奇岩の宝庫ですよね。中国の桂林とか。とにかくこういう奇岩がそそり立つ土地はまず石灰岩だと思って間違いない。とにかく石灰岩は浸食されやすいので、おかしな岩山が林立することになる。
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