ヒトはなぜ踊るのか?
毎回身体の各器官について紹介してきたこの番組だが、今回は唐突に「ダンス」。思わず「?」なのだが、このダンスが人間の本質に関係があるという話。
まずは踊りについていきなり「苦手」と言ってしまった織田裕二氏であるが、それでもコンサートなんかをしていると自然に振りがついて皆で合わせるというようなことはあるという。「一体感」を感じられるというのであるが、これがキーワードの一つである。
人間は生後半年になるとリズミカルに身体を動かすなどの行為が見られ、母親が歌うとそれに合わせるかのように身体を動かすといったことも起こるというつまりはかなり早くから人間は踊る習性があるのではないかという。
アフリカのピグミーの集落に研究で行った京都精華大の澤田昌人氏によると、原始の暮らしを続けるピグミーの集落では何かの時に自然発生的に集落内で踊りが始まるというようなことがあったという。集落の人々は輪になって踊り、長いときには夕方から翌日の昼まで踊りが続いたとか。この風景は日本の盆踊りにも通じるという。
ヒトが踊る理由として「異性へのアピール」という考えがある。確かにストリートなんかで踊っている連中の目的を考えるとリーズナブルな考えではある。キレの良いダンスを披露できるということは、自らの身体能力のアピールになるのだという。
踊りとコミュニケーションの関係
踊りと言えば有名なものの一つに、ラクビーのニュージーランドのオールブラックスのハカがある。これは戦いに臨む前の儀式である。身体の同調や共鳴を通じて心を一つにすることで敵に立ち向かうのだという。ゴリラもヒトと同様に社会的な動物だが、4足歩行のゴリラではせいぜいドラミング(胸を叩く行為)ぐらいしか出来ない。これに対して2足歩行のヒトはもっと多彩な踊りを出来る。人間は踊りで同調することで、仲間と共に森林を越えて世界に広がったのではという。ハカもニュージーランドに広がっていった先住民のものである。
自然界の動物に人間のように踊れる動物がいないかを調べた研究がある。YouTubeなどの映像を解析した結果、オウム、象、アシカが浮上したという。全く脈絡のない動物に見えるが、共通項としては「声真似ができる動物」であると言うのである。身体を動かすのを真似するのがダンスとなり、声を真似するのが言葉となり、ダンスと言葉が同時に進化していったのではないかというのである。脳にミラーニューロンという物真似システムがあり、これが声真似やダンスと関係するのだという。ちなみに人間には踊りと言葉がない人種はいないという。
ダンスの上手い下手を決めるリズム感
しかし同じダンスをしても上手い下手がある。そこにはどんな差があるのかを研究している研究者がいる。その結果を分けたのはリズム感であり、リズム感は予測能力と結びついているという。実際にリズム感の良い人は予測能力が良いかを実験したという。それはメトロノームで一定のリズムを刻んでタッピングをしてもらう。するとリズム感の良い人はズレが少なかったという。次に周期的に速さが変化した場合、リズム感の良い人はこれにも追随できたという。とのことなんだが、私は頭の中ではリズムは取れるが、単純に運動神経が低すぎるせいでとてもダンスにならないのだが・・・。なおリズム感は先天的なものだが、後天的に言語の影響を受けるのではとしている。そう言えば、いわゆる演説なんかもリズム感が重要なんだよな。
ダンスにも個の踊りと集団の踊りがあるが、それにはどういう関係があるのかをホームレスのダンスチームを紹介することで示している。彼らは皆、踊りによって人生が変わったという。集団で踊りをする中で、彼らの個がむしろ現れてくるのだという・・・んだが、正直なところこの下り、表現が妙に芸術的かつ哲学的で今ひとつ私にはピンとこない。
ダンスによって一体感を持つという辺りまではまあ分かったのだが、言語との関連云々の辺りから今ひとつしっくりとこなくなり、最後の個と集団の話になると最早「?」だった。なんかどうにもピンとこないんだよな。今回は妙に人文科学的方面の要素が強かったからだろうか。私は根っからの理系で理論ガチガチタイプなので、話が感覚的なものになるとどうもついていけません。まあそもそも人体の話から離れた時点で「?」だったんですが。今までもスリルとか思春期とか微妙なネタがありましたが、いずれも脳科学と結びついてました。しかし今回はその点も非常に曖昧でした。
人体のあまり知られていない新しい考えを紹介することが中心でなかなか好評なこの番組ですが、何かそろそろネタが怪しくなってきたんでしょうか? 一体どこに向かっていくのやら、正直なところ不安になる内容でした。
忙しい方のための今回の要点
・ダンスは動きを同調させることで仲間の一体感を高める効果がある。ヒトはこの力で世界に広がっていったのではとしている。
・人間と同様にダンスをすると考えられる動物としてオーム、アシカ、象などが浮上したが、これらはいずれも声真似をする動物で、ミラーニューロンが発達していると考えられるという。このことから言葉とダンスは共に発達していったのではとしている。
・ダンスの上手い下手のポイントはリズム感。そしてリズム感とは予測能力と相関するという。実際にリズム感のある人はテンポが変動しても予測して追随できたという。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・正直なところ、分かったような分からなかったような、納得できたようなできなかったようなという内容です。ハッキリ言ってイマイチ胡散臭い。
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