教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/31 NHK 歴史探偵「参勤交代」

大名行列を再現する

 長年続いたヒストリアがリニューアルして新たに始まった「歴史探偵」の第1回目であるが、テーマは参勤交代である。

 今回は参勤交代について、三河吉田藩の大島左源太という役人が残した行列の編成などの細かい資料に基づいて行列の再現に挑む。なお左源太が担当したのは江戸から国元に帰る行列なのだが、準備期間が2ヶ月と通常の1/3と余裕がない上に、藩主の息子の初めての国入りということでそれなりの格式のある行列にしたいとかなりの無茶ぶりをされた模様である。

 さて江戸から豊橋までは新幹線だと2時間だが、徒歩だと7泊8日の行程となる。ここで重要なのは宿の手配。しかし参勤交代が集中する次期があるので、宿の奪い合いになる。こんな時に左源太が頼ったのが三河屋久右衛門という人物。大名行列の宿の手配などをしている旅行代理店のようなものだという。三河屋は複数の大名行列を手がけているので、他の行列の情報も分かっており、その辺りで調整をするのだという。

 さらに三河屋が行うもう一つの重要な仕事が人材派遣。行列には345人必要なのだが、江戸の藩士だけでは賄えないので、三河屋が町民などを雇って派遣し、彼らに扮装させて行列に参加させるのである。集められた人員には行列のルールなどの説明がなされることになる。ちなみにこういった辺りは以前ににっぽん!歴史鑑定でも紹介されている。

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今までのイメージとは少々違っていた実態

 一段落の左源太だが、そこに藩主からの無茶ぶりが。息子の国入りは豪華に馬の鞍は虎の毛皮で飾りたいと言い出すのである。しかしそれはいかにも豪華。実は幕府からは質素にとの命が出ていたという。今までは参勤交代は大名の経済力を弱体化させるために幕府が仕組んだというのが通説だったが、近年では参勤交代は将軍に対する奉公が大事なのであって、むしろ華美になったのは大名側の見栄のためで、幕府は決して華美な行列を勧めていなかったという解釈になっているとか。で、左源太は結局はラッコの皮を敷くことで藩主を納得させる。

 そしていよいよ行列出発。先頭の槍持ちは目立つので、大柄なイケメンが配されたとのことで、日当も他の荷物運びの2倍とのこと。なお大名行列といえば「下にー、下に」で町民は土下座してというイメージがあるが、実際には土下座までしないといけないのは将軍家レベルで通常の行列の場合は道を空けるだけで良かったという。また他藩の領地を通過するため、三河吉田藩では気を使って声も上げずに静かに歩いたという。

 しかし順調に進む行列の前に立ちはだかる東海道一の難所が大井川。防衛上の問題で橋を架けられていなかったこの川では、人足が担ぐ蓮台に乗るか、人足に肩車してもらって渡るかということになるが、その料金は水位に応じて厳密に定められていたという。また増水が激しいと渡れなくなり、1ヶ月足止めを食らうことも。大名行列のシーズンになると、人足達はその需要で潤ったという。なお正規ルートから南に7キロほどの下流域では、農民らが安く川渡しをしていたりしたらしいが、こちらは専門家でないので旅行者が川に流されて死んでしまうなどの事故もあったりしたという。

 また大名が宿泊するのは本陣であるが、その宿泊料は実は取り決めがなく、大名側の腹次第らしい。渡しすぎると予算がキツいし、かといってケチりすぎると面目がという微妙な判断があるらしい。なお宿泊料代わりに色紙を置いていったという例もあるとか(ありがたいようなありがたくないような)。

 で、ようやく無事に国について左源太の仕事はこれで終了、なお左源太が大名行列を担当することはこの後なかったという(こんなしんどいこと、二度としたくないだろう)。

 

 以上、大名行列についての紹介。今回は番組の形態が変わっての第1回と言うことで、大名行列を一部再現したりなど、それなりに予算をかけた様子が見られたが、ハッキリ言って番組的には全くの無駄であった。

 またやはり懸念していた通り、かなり滑っている部分がある。佐藤二朗が不快というのが聞こえていたのか聞こえていないのかは分からないが、以前のパイロット番組の時ほど出張ってきていないのは正解だが、そうなると今度はリモート出演ということもあってそもそも何のために存在するのかが不明。ハッキリ言って不要である。滑舌もあまり良くない上に、コメントの類いもワイドショーの主婦コメンテーター以下のことしか言えないから、全く番組が深まるわけでもないし・・・。

 それに無駄なシーンが増えたことで、目立ったのは番組内容の薄さ。恐らく今回のネタは以前のヒストリア形式で製作したら30分以内で終わってしまう内容であったと思われる。結局はネタの不足を無駄なやりとりを加えることで薄めたという印象が強い。やはり私が懸念していた通りに劣化リニューアルになってしまったようだ。

 

忙しい方のための今回の要点

・三河吉田藩の大島左源太という役人が残した参勤交代に関する詳細な記録を元に行列を再現してみた。
・宿の手配などは専門の業者が存在するのでそれに委託したという。またその業者は行列のための人材派遣も手がけていた。
・また参勤交代は幕府が大名の経済力を弱めるために制定したと言われていたが、近年の研究では、実は行列が華美になったのは大名の見栄であり、幕府はむしろ質素にさせようとしていたらしいことが分かってきている。
・また通常の大名行列の場合は町民は道を空けるだけで良く、土下座するのは将軍家の時ぐらいとのこと。
・一番の難所である大井川は水位に応じて渡し賃が厳密に決められていた。なおもっと下流にはもぐりで渡す連中もいたらしい。
・大名が宿泊する本陣の宿泊料は決まっておらず、大名側が判断するものだったという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・正直なところ懸念していた通りです。ハッキリ言って内容がスカスカ。同じテーマを扱ったにっぽん!歴史鑑定の回の方がはるかに内容がありました。NHKもオリンピックにパワーを取られて製作から力を抜きだしたか?

次回の歴史探偵

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