教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/13 BSプレミアム ヒューマニエンス「"衣服"服を着るという進化」

人類が衣服を纏いだしたのは?

 人類が他の獣と違うところは服を着るということ。では人類はいつから服を着るようになったのか。

 1991年、アルプスでの男性の人骨が見つかった。最初は遭難者のものではと言われていたのが、調査の結果5300万年前の男性であることが分かった。アイスマンと名付けられたその男性はヤギと羊の皮を縫い合わせたマントを着ていた。服は残らないことが多いことからいつから服を着るようになったかは定かではないが、直接発見された最古の例であるという。

 一方、ドイツのマックスプランク研究所が面白い手法で、人類が服を着るようになったのは7万年前と推測している。これはシラミに注目したもので、衣服に付着するコロモジラミがアタマジラミから7万年前に分岐したからだという。コロモジラミ衣服の中でないと生きられないので、少なくともこの時点で人類は衣服を着ていたのだという。また7万4千年前にインドネシアのトバ山の噴火をきっかけに地球では気温の低下が起こっており、人類が服を着るようになったのは、これに対応した新しい進化ではないかという。

 

衣服の進化

 また人類が世界中に広がったグレートジャーニーにおいて、人類の服のさらなる進化が発生しているという。ロシアで5万年前の骨で作った針が見つかった。この針は糸を通すための穴までついたものである。衣服は縫うことで保温性が高くなるので、針の発明が衣服の対応力を画期的に増すことになる。また5000年前のエジプトでは世界最古の機織りされた服が見つかっており、エジプトでは服が身分を示したという。また服は帰属を示す記号でもあり、多くの民族衣装が誕生している。

 またロシアのスンギール遺跡では35000年前にマンモスの牙から作られた大量のビーズで装飾された服を着ていた人骨が見つかっており、服の装飾の意味は非常に重要であるようである。

 また衣服と言えば歴史的に無視出来ないのが軍服。近世ヨーロッパの軍服は総じて派手なのが特徴だが、あれは命を懸ける際の晴れ着という精神的ニュアンスと火薬の煙の中でも目立つという実用面があると言う。また歴史的に強い軍隊は赤い色を使うという特徴があると言うが、赤い服を見ると脳の血流量が増えるという実験結果がある。2004年のオリンピックでは赤と青で赤の方が勝率が高いというデータもあるとか。赤を見ると瞬発力や持久力が低下するという実験もある。

 

衣服とジェンダーに環境問題

 また衣服は男女の差もあるが、ルネサンス期以降に男女の衣服に差が出来てきているという。それが近年ではジェンダーを越えるという意味で、クロスジェンダーとしてあえて差をなくすという流れも現れている。既成の概念を越えることで自分の新たな一面を見つけるという意味もあるとのこと。

 また最近無視出来ないのは、大量に廃棄される衣服の環境問題である。特に防寒着が問題が多く、毛皮や皮が以前より問題視されているが、近年はダウンも生きたまま羽をむしる場合があると問題視されているという。そんな中で非動物的原料としてインドネシアの植物カポックが注目されているという。カポックはタンポポの綿毛のようなもので、繊維が中空があるので保温性が高いという。その中空率は80%で、ポリエステルなどの倍以上あり、保温性はダウンと遜色ないとのこと。

 

 番組ゲストや織田裕二氏がカポックを使ったところで大量廃棄が続くのでは意味がないのではというようなことを言っていたが、これは全く同感。象徴としてカポックに行くのは良いが、根本的に大量生産大量廃棄のシステムを変更しないと意味はない。そもそも現在の衣料の大量廃棄は、人工的に流行を作って売り上げを伸ばすというアパレル業界のメカニズムに問題がある。しかし大量生産大量販売がそもそも資本主義の基本的原理であって、それらは必然的に大量廃棄をもたらす。アパレル業界単独の話ではなく広く資本主義の根本の問題だから、解決が困難なのである。

 織田裕二氏が「周囲から奇異の目で見られることがなく、機能的であれば別にスカートでも履きたい」と言っていたが、それは私も同感。衣服は基本的には機能が最優先であるべきである。ただ女性を綺麗に見せたり男性を逞しく見せるなどの心理的機能面や、慣習的なフォーマルとカジュアルの区別などがあるので難しい。慣習についてはくだらない話だと私は思うが、心理的効果は侮れない。実際にどう見ても女性が不細工に見える服装なんてのは存在し、デブに見えたりガリに見えたりする服装もある。

 

忙しい方のための今回の要点

・人類が初めて服を着たのはいつかは定かではないが、5300万年前のアイスマンが衣服を着ていたことから、少なくともそれ以前であることは判明している。
・ドイツのマックスプランク研究所は衣服の中で生きるコロモジラミが、アタマジラミから分岐したのが7万年前であることから、その頃が人類が服を着るようになった時と推測している。
・7万4千年前にインドネシアのトバ山の噴火をきっかけに地球の寒冷化が進んだことから、人類はそれに対応するために衣服を纏うように進化したと推測出来る。
・ロシアで5万年前の骨製の針が見つかっており、この頃には縫うことで衣服の機能が大幅に上がったと推測されている。また古代エジプトでは衣服は身分を示すものであった。
・男女の衣服の差が出だしたのはルネサンス以降である。近年はクロスジェンダーで再び差がなくなりつつある。
・環境問題からダウンが問題視されており、植物性のカポックが注目されている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・アパレル業界はとにかく大量生産大量廃棄の悪弊を何とかすることが迫られています。ただこれについて意図的な流行で踊らされる消費者の問題も大きいです。そろそろ業界の思惑で踊らされる立場から脱却すべきでしょう。消費者の行動が変わると業界は必然的に変わりますので。

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